機種やスペックがばらばらだとPC管理が難しくなる。しかし、PCスペックの標準化もIT部門の思惑通りにいかないものである(攻めのシステム運用管理)。
成長過程にある企業ではものすごい頻度でPCの出庫がなされる。このような場合、機種やスペックがばらばらだとPC管理が難しくなるため、通常はPCスペック標準化を行う。しかし、一見理想的に見えるこの作業も、そう思い通りには進まないのが世の常である。PCの標準化にも悲劇がひそむ。
著者の所属している会社は、成長過程にあるITベンチャー企業である。毎週のように新入社員が入ってくる。PCのインストールやセッティングだけでもかなり大変な状況であるのに、さらにサービスデスク対応、修理時対応、資産管理まで考えなければならない。このような状況においては、PCの管理コストを抑えるために、購入するPCのスペックを標準化をすることがとても有効である。
そこで早速社内にヒアリングし、職種ごとの業務内容の差異も考慮しながら、最終的には数パターンのPC標準スペックを決定した。プログラマーやデザイナーはメモリを多めに、マーケティングはメモリとディスクを多めに、一般事務は最低スペックといった感じだ。
すべての部署から十分にヒアリングを行い、PCの標準スペックを決定したつもりであったが、次第に「メモリが足りない」「グラフィックボードを追加したい」「ハードディスクが足りない」など、わがままにも思える要望が多く押し寄せるようになった。
もちろん無視するわけにもいかない。PCスペックの標準化の経緯を再度説明したり、予算の関係で要望に応えられないむねを伝えた。が、どうも納得してもらえない。しまいには「うちの事業部は会社の屋台骨を支えている稼ぎ柱なのに、なぜ冷遇される筋合いがあるのか」という屁理屈まで飛び出した。
このことが社長の耳にも届いた。結果、予算のことなら何とかするから、極力要望に応えてあげてほしいという方針が決定した。かくしてPC標準化の意味はなくなり、ありとあらゆるスペックのPCが社内に登場した。トラブル時のサポートできず、かつオプション追加要請が相次ぐようになり、管理コスト、追加費用が増え続け、もはや無法地帯と化してしまった。
ダメなものはダメと言わないといけない。言うべきときに言っておかないと後で自分の首を絞めることになる。「ITのことをよく分かっているのは自分達しかいない」ということを肝に銘ずるべきである。
若葉田町
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