佐渡 DCCA側は協調するとは言っており、その方向は見えつつありますが、残念ながら現時点でDebian Projectの内部でコンセンサスが取れたということは確認できていません。
現在、DCCAはDebian Projectとは別個の存在ですので、少なくともDebianのCommon(共通)なCore(核)を用意するというのであれば、本来はDebian Projectの下で行われるべきだと考えます。DCCAでやろうとしていることは、今のところはDebian Projectの中でできることと思いますので、なるべくこの両者の間を繋げていきたいとは考えています。
ITmedia それでもDebian Projectのファウンダーであるイアン・マードック(Ian Murdock)氏がDCCAを推進しているということで影響力はないのでしょうか?
佐渡 Debian Projectは極めて民主的なプロセスを重んじる組織です。Linux Kernelなどのように特定人物の支配下にあるわけではなく、1000人を越える開発者全員が平等に決定権を持っています。まあ、実際には職権、パッケージの重要度、開発貢献度、推進力などで発言力が微妙に差があったりするわけですが、ほぼ平等と言っていいでしょう。
イアン・マードック氏に敬意は持っていますが、彼が動いたからといってDebian Projectが動くわけでもないでしょう。ちょっと極端な例えですが、彼は7代前のDebian Projectのリーダーにすぎないわけです。で、日本の7代前の内閣総理大臣は宮澤さんであるわけです。
ITmedia 言わんとすることが分かりませんが?
佐渡 元総理という立場と似たようなものかなと思います。彼のほかにも歴代のリーダーであるIan Jackson氏、彼は現在も技術委員会のトップですね。あとは、Wichert Akkerman氏、Ben Collins氏、Bdale Garbee氏もいますね。Bdale氏は米HPのLinux CTOとして有名です。
このほかにもリーダー以上に権限を持っているDebianの有力開発者は数多く存在するわけですが、残念ながらDCCAにはあまり有力な開発者がいないように見えますし、彼ら有力な開発者の多くの支持をまだ得ていないように思えます。VA LinuxがDCCAに参加することでそれが多少は好転させることができるかもしれませんが、今のところは慎重に見守っています。DCCAからは今も誘いがありますけど、今後も、意見交換をしながら状況を見つつ、そして何よりも1000人の開発者の反応を見た上で、将来のDCCAへの参加を検討したいと思います。
ITmedia そうそう、UbuntuはDCCAに参加していませんね。Ubuntuがいないのはなぜですか?
佐渡 それはCanonicalにでも聞くべきことでしょう。ひょっとするとCanonicalは、われわれと同じように考えているのかもしれません。
ITmedia 言葉悪く言ってしまえば、それはつまり「弱者連合」には関わりたくはないということですか? Progenyは過去にMadrivaやTurbolinuxと組んだLCCにも所属してましたよね(関連記事参照)。
佐渡 VA Linux、Ubuntuに比較すれば、DCCAに加盟する組織はDebianへのコミットが比較的少ないのは事実ですし、企業規模もSun Wah Linuxを抜けば小さな企業が多いのは確かです。ただし、DCCAがまったくの弱者の集まりとは思ってませんし、個々の企業とわれわれが敵対関係にあるわけでもありません。特にSunWah Linuxは強力な企業で、今後もDebianを中心に戦略パートナーとしての関係を強固にしていきたいと考えています。
また、VA Linuxは今後もDebian Projectにコミットを続けていくつもりですし、DCCAの各社もそうでしょう。となれば、われわれがDCCAに参加しなくともDebian Projectを介して協調しているとも言えるわけで、DCCAに所属しないことについては技術的にはさほど問題にならないでしょう。お互いにDebianにコミットし、Debianが特定企業の制御下にはない真にフリーでユニーバサルなOSならびにプロジェクトであることがわれわれの願いであり、ビジネスを支える根冠となると信じています。DCCAについてもわれわれとしてメリットを見出せれば参加はやぶさかではありませんし、実際、現在も対話を続けています。
ITmedia VA Linuxはディストリビュータではありませんが、そもそも何故Debianを推進するのでしょう?
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