「マルチコア×仮想化」はSOAに最適なハードウェアプラットフォームInterview

消費電力の上昇を回避しながら性能を引き上げるマルチコア化は、仮想化技術によってさらに生きてくるという。Paxville DPを発表したインテルの平野氏に話を聞いた。

» 2005年10月12日 01時14分 公開
[浅井英二,ITmedia]

 インテルは10月11日、デュアルプロセッサ(DP)サーバ向けの「デュアルコア インテルXeonプロセッサ 2.80GHz」(コードネーム:Paxville DP)を国内でも正式発表した。消費電力の上昇を回避しながら性能を引き上げるマルチコア化は、仮想化技術によってさらに生きてくるという。システムはSOA(サービス指向アーキテクチャー)によって変化への対応力を備えようとしているが、マルチコアと仮想化技術の組み合わせは、そのSOAに最適なハードウェアプラットフォームを生み出してくれるからだ。インテルのマーケティング本部でデジタル・エンタープライズ統括部長を務める平野浩介氏に話を聞いた。

長年、サーバ向け製品のマーケティングを担当してきた平野氏

ITmedia 企業のITシステムにとって、マルチコアのプロセッサとはどのような意義があり、どのような恩恵をもたらすのでしょうか?

平野 先ず、企業ユーザーがサーバに求めてきたのは性能、性能、性能でした。インテルもクロックスピードを高めることでそうした声にこたえてきましたが、それでは発熱や消費電力の問題を引き起こしてしまいます。そこでわれわれは、プロセッサ当たりのコアを増やすことによってこうした問題に対処しようと考えました。きょう発表したデュアルプロセッササーバ向けのデュアルコアXeonプロセッサ 2.80GHz(Paxville DP:コードネーム)は、そのトップバッターです。今後はさらに、Paxville MP、Dempsey(Paxville DPの後継)、Montecito(デュアルコアItanium)が控えています。

 もちろん、これまでにもデュアルプロセッサのサーバもありましたし、4ウェイ、8ウェイもありました。しかし、例えば、これまでのシングルコアのXeonプロセッサであるIrwindale(3.60GHz)を2基搭載すれば、消費電力は200ワットを超えてきます。これに対して2.80GHzとクロック数は落ちますが、デュアルコアでピークは130ワット程度です。デュアルコアのPaxville DPであれば、同じスペースで1ワット当たりの性能向上が図れ、発熱や消費電力も抑えられるのです。

ITmedia 技術的にはそうなのですが、システム部門にとってどのように使い勝手が良くなるのでしょうか。

平野 仮想化によるサーバコンソリデーションが恩恵として考えられ、それは大幅なTCO削減につながるでしょう。Paxville DPの記者発表会では、部門サーバのコンソリデーションをデモしましたが、基幹業務、例えばSAP R/3などでは、「開発」「テスト」「本番稼動」という3つの環境を用意することが求められ、モジュールを追加するごとにサーバの台数が増え、その管理が大きな負荷となっています。

 シングルコアのプロセッサでも時分割によって複数の仮想マシンをつくることが可能でしたが、やはり性能が必要なのです。マルチコア化によって性能が引き上げられてこそ実際の運用に耐え得るのです。

 実際のところ、Paxville DPではインテル・バーチャライゼーションテクノロジー(VT)は搭載されていないのですが、マルチプロセッササーバ向けのデュアルコアXeon 7000番台(Paxville MP)では2006年に入ると組み込まれてきます。VMwareなどと組み合わせても仮想化によるオーバーヘッドが少なくなり、性能が向上し、プラットフォームとしての使い勝手は格段に良くなるのです。

ITmedia サーバコンソリデーションは分かりました。マルチコア化によるサーバの新しい使い方というのはあるのでしょうか。

平野 業界ではSOA(サービス指向アーキテクチャー)によって、アプリケーションをサービス化し、外部環境の変化に応じて柔軟に対応できるシステムへと再構築が進んでいます。大手のコンピュータベンダーやソフトウェアベンダーは、ミドルウェアのレイヤで仮想化する手段を提供しています。Java VMもその1つです。

 しかし、実際には1つのOSのうえで複数のJava VMを走らせるとあまり効率が良くありません。1台のサーバ、1つのOS、そして1つのJava VMであればシンプルでサイジングなども容易になります。そこでサーバ同士を連携させながらシステムとして機能させていく手法になるのですが、そうなるとやはりサーバがどんどん増えていってしまいます。

 Paxville MPが出てくれば、物理的なプロセッサ数×2(デュアルコア)×2(ハイパー・スレッディング・テクノロジー)のスレッドが実行でき、さらにVTによってオーバーヘッドを最小に抑えながら仮想マシンを作り上げることができます。SOAの最適なハードウェアプラットフォームになり得るのです。

 繰り返しますが、これまでにもVMwareなどを使えば仮想化は可能だったのですが、やはりトータルの性能が必要なのです。現在のシリコンのプロセス技術では、シングルコアでの消費電力を抑えながら性能を向上させることが難しく、3GHzクラスで横に展開していくマルチコアの方がトータルの性能は出しやすいのです。そして、そうして叩き出されるトータルの性能を使いやすいものにするために仮想化技術が不可欠になるのです。

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