競争の激化で追いつめられるマイクロソフトのExchange(2/2 ページ)

» 2006年07月26日 18時52分 公開
[Peter Galli,eWEEK]
eWEEK
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変わりゆく力関係

 しかしながら、Lotus Notesをはじめとする競合相手がオープンソースを取り入れるようになったことで、Microsoftに有利な状況が続いていた市場競争は様相を変えつつある。

 IBMのLotusソフトウェア製品部門副社長であるケン・ビスコンティ氏は、昨今の市場が求めているのは、「Exchangeが長年かけて浸透させてきたシンプルかつプロプライエタリな電子メール製品ではなく、よりダイナミックな多機能プラットフォームだ」と話した。

 Lotus Notesが電子メール以外の幅広い機能やアプリケーションを製品に統合し、電子フォームやドキュメント管理、リアルタイムコミュニケーションや新時代のWeb 2.0技術などを提供するようになったのは、そうした理由があるからだと、ビスコンティ氏は説明している。

 「Microsoftには、今日求められている広範な業務機能を提供することはできない。こうした機能は、オープンスタンダードに基づいている必要がある」(ビスコンティ氏)

 さらにIBMは、Exchangeのβ2がリリースされたのと同じ7月24日に、Linux製品上で動作可能なLotus Notesの提供を始めている。

 IBMのLotus部門上級製品マネージャーであるアーサー・フォンテーン氏は、世界中でLotus Notesを利用している数百万人にのぼるユーザーは、プロプライエタリなオペレーティングシステムの代わりにオープンソースのデスクトップOSを利用できるようになったと、eWEEKに対して話した。

 「われわれの顧客にとって、この製品のリリースは非常に重要な意味がある。サーバ版は1998年に発表済みだが、Linuxデスクトップへの関心が高まるとともに、IBMの顧客もLinuxへの対応をわれわれに求めるようになっていた」(フォンテーン氏)

 同製品は、Lotus NotesをWindowsおよびMacintosh上で動作させるのと同様の方法を用いて、Linuxにおける稼働を可能にするものだ。

 フォンテーン氏によると、同製品の技術的な基礎はオープンソースフレームワーク「Eclipse」に基づいており、「Hannover」のコードネームで呼ばれるLotus Notesの次期版と同じ技術が用いられているという。

 普及率の向上を目指すIBMは、Linuxベースのアプリケーションを開発しているビジネスパートナーに、MicrosoftのExchangeからLinuxデスクトップ上で利用するLotus NotesおよびDominoへの移行コストに関して、最高2万ドルの資金援助を行っている。この取り組みは、「Migrate to the Penguin」という名称で知られているという。

 Data Returnのスティッドレー氏は、Linuxデスクトップに注力するIBMの姿勢について、「明日明後日に大きな脅威となるわけではないが、Microsoftにとっては危機感を覚えざるを得ない動きと言えるだろう」と述べた。

 とはいえ、Notesクライアントと機能的なオフィススイートのカップリングには多くの業界キーパーソンが注目し始めているものの、大半の企業からしてみると、Linuxが十分に成熟し、エンドユーザーや管理者が扱いやすい機能を獲得する前にWindowsから離れることにはほとんど何のメリットもないと、スティッドレー氏は話している。

 だが、カリフォルニア州サンマテオに拠点を置き、Linuxおよびオープンシステムアーキテクチャを利用した製品を提供しているメッセージングインフラストラクチャ企業ScalixのCEO、グレン・ウィノカー氏は、これに異議を唱えた。ウィノカー氏によれば、同社のソフトウェアのメールボックスは、すでに100万件の利用があるという。

 こうした躍進は、Scalixや同業界にとって画期的であったばかりでなく、Linuxでの電子メール利用が転機を迎えたことをも示唆していると、ウィノカー氏は述べた。同社の製品を購入もしくは導入している企業は世界中に350社を数えるようになっており、その業種もハイテクから小売り、サービスセクター、政府組織、大学までと幅広い。

 先日Scalixが実施した、同社ソフトウェアの無料版「Community Edition」のユーザーを対象にした調査では、1万台以上のScalix電子メールサーバで、100万件のメールボックスが利用されているという結果が出ている。

 「GroupWiseやNotesといった、昔からある電子メール/カレンダー/コラボレーションアプリケーションから脱却したいと考えるユーザーの傾向を把握した点では、Microsoftは間違っていない。だが、企業顧客がそのほかの1社のベンダーが提供するシステムを使って、自ら自由度を低くしたいと願っているかと言えば、むろんそのようなことはない」(ウィノカー氏)

 「エンタープライズユーザーは、エンタープライズLinuxにおける電子メール/カレンダー/インテグレーションプラットフォームを求めている。オープンソース開発コミュニティのサポートや、クライアントおよびディレクトリの選択の自由も魅力になっている」(ウィノカー氏)

 その証拠に、Scalixへの移行を決めたユーザーのおよそ50%が、Microsoft Exchange、Lotus Notes、Novell GroupWiseといった既存の電子メールシステムからの乗り換えたユーザーだったと、ウィノカー氏は話している。

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