6人のIT侍、海を渡るImagine Cup 2006 日本代表追っかけルポ

今年で4回目となるMicrosoft主催の学生向け技術コンテスト「Imagine Cup」。インドで行われる世界大会に進出する2チームは、インドの気候より熱い思いで同大会に臨んでいる。

» 2006年08月06日 19時28分 公開
[西尾泰三,ITmedia]

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 1960年代、シアトルにあるレイクサイド・スクールに導入されたタイムシェアリング方式のコンピューターの前で、BASICプログラムにのめり込む少年たちの姿があった。後のビル・ゲイツ、ポール・アレンといった面々である。

 若い情熱をコンピュータに捧げた彼らが創業したMicrosoftは現在、全世界の学生を対象とした技術コンテスト「Imagine Cup」を主催、今年で4回目を迎えるに至る。バルセロナ、サンパウロ、昨年は横浜で世界大会が行われてきたが、年を重ねるごとに参加者は増加、今回は6万人以上の学生が同大会へ参加、インドのアグラで開催される世界大会への切符を掛けて戦った。

 アルゴリズム部門、インタフェースデザイン部門など6部門が用意された今回のImagine Cup。今年のテーマは、「テクノロジーの活用による、より健康な生活の実現に向けて」だ。

 日本では、毎年3月に開催されている「The Student Day」の中でソフトウェアデザイン部門の日本大会が行われるが、今年ここで優勝したのは、中山浩太郎さん、塩飽(しわく)祐一さん、前川卓也さん、そしてまだ17歳の大居司さんの4人からなる「Project Docterra」だ。

 その後、ビジュアルゲーミング部門で、鈴木海靖さん、竹井悠人さんがタッグを組んだ「.PG」が世界大会への切符を勝ち取ったことで、この2部門から日本代表が世界に挑むこととなった。ITmediaは今回、彼らに同行し、熱い戦いの一部始終をお届けする予定だが、その前に、インド出発の前日、新宿にあるマイクロソフト本社でリハーサルと壮行会を行う彼らに今回に掛ける意気込みを聞いた。

ソフトウェアデザイン部門、「Project Docterra」

 Project Docterraは、中山さんをはじめとする4人のチーム。うち、中山さんと前川さんは昨年のImagine Cupでもソフトウェアデザイン部門で日本代表として世界大会に進出しているが(関連記事参照)、ベスト8という結果に終わっており、今年はそれ以上の結果をと熱い思いを秘めて今大会に臨んでいる。

Project Docterraの皆さん。残念ながらこの日は前川さんが欠席。手には今回のシステムで使うIDカードなどが

 Project Docterraの内容を一言で表現するなら、拡張性の高いオープンソースの病院管理電子カルテシステム。中山さんによると、米国において、医療ミスに起因する死亡者数は、交通事故での死亡者数とほぼ同数の約4万人に上るという。むろん、その中には単純なミスによるものも少なくなく、医療事故をいかに防ぐかが今回のImagine Cupのテーマと合致するものと考えたと中山さんは話す。

 具体的なシステムとしては、AR(Augmented Reality:強化現実)技術を用いたものとなっており、各患者には固有のIDカードを発行、それをヘッドマウントディスプレイを通して見ることで、サーバサイドからリアルタイムに各種情報をオーバーレイして表示するというもの。患部の状態やバイタルグラフはもちろん、薬剤が入ったボトルを見れば、その薬剤が患者が現在服用しているものと競合するかどうかなどを可視化して表示する。

 42チームという6部門でもっとも多くのチームが存在する同部門だが、チームメンバーは自信も見せる。中山さん、塩飽さんの両名は、日本代表に選出された後、ビル・ゲイツ氏に今回の発表をプレゼンテーションし、同氏に「Great」と言わしめた。その実力をいかんなく発揮すれば、世界のトップも夢物語ではない。

異能の人、竹井さん

 ビジュアルゲーミング部門に出場するチーム「.PG」の鈴木さん、竹井さん。残念ながらこの日、鈴木さんは欠席となった。

 実は竹井さん、国内選考において、上述したProject Docterraの一員として世界大会への切符を勝ち取ったのだが、その後選考されたビジュアルゲーミング部門でも日本代表に選出、今回はビジュアルゲーミング部門での参加を決めた。プレゼンテーションなどさまざまな要素が求められるソフトウェアデザイン部門では時間を多く割かざるを得ないため、大学受験を控えていることを考慮したことが大きな理由の1つと話す。

竹井さん(左)、今回は4部門に応募し、うち2部門で日本代表になった。ちなみに昨年はOfficeデザイナ部門で世界大会に進出している

 竹井さんは、陽気な性格の一方で、プログラミングや哲学など多彩な分野でその才能の片鱗を見せる。AIなどにも非常に興味をもち、大居さんと議論することも。「結局完全なAIは作れないのではないかという結論になりましたね」。

 大学進学も控えていることもあり、学校、塾、家を往復する毎日で、普段は漫画もアニメもほとんど見ない。自ら「(ほかの人と比べて)少し変わっていると思いますよ」と笑う竹井さん。SDKベースの戦術/プログラミング競技となる同部門で、鈴木さんとどのような戦い方を見せるのか。

 ビジュアルゲーミング部門の世界大会は6チームで争われ、入賞の期待も大いに掛かる。昨年は高校生部門で日本が優勝(3位にも入賞)している同部門だけに、今年も期待したいところだ。

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