雷、サージ……電源を巡るトラブルからシステムを守るディザスタリカバリで強い企業を作る(1/4 ページ)

主に企業にとって重要な役割を担う部門〜基幹システムで使用されるIT機器を対象に、電源周りとファシリティにおけるディザスタ対策について説明する。

» 2006年08月25日 16時15分 公開
[佐志田伸夫,ITmedia]

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 サーバルームはもちろんオフィスでも、サーバやルータ、スイッチングハブから個々の従業員が利用するPCまで、さまざまなIT機器が利用されている。この記事では、主に企業にとって重要な役割を担う部門〜基幹システムで使用されるIT機器を対象に、電源周りとファシリティ(ラックや空調)の視点から見たディザスタ(災害)とその対策について説明しよう。

 まず前提として、最近のIT機器の主な動向として、次の要素を考慮しておく必要がある。

  • ラック搭載(ラックマウント)型のIT機器が増えている
  • 高速/高性能化に伴い消費電力=発生熱量が増えている
  • ブレードサーバに象徴されるように高密度化されてきている
  • 信頼性を高めるために電源を二重化(冗長化)した、二電源入力機器が増えている

 これらの要素は、ディザスタリカバリを検討する際にも重要な前提条件となる。たとえば、サーバルーム全体は空調されていても、ラック内部で温度の高い場所(ホットスポット)が発生することもあり、より細かな温度管理が求められる。

安定した電源供給を襲う「ディザスタ」

 電源関連のディザスタとは、言い換えれば「IT機器の動作に影響を及ぼす電源障害」のことだ。大きく、次の7つの現象に分類することができる。

1)サージ/過渡変動:百万分の一秒(マイクロ秒)以内の高電圧で過渡的な電圧変動で、電源障害のうち最も破壊的である。最も代表的な原因は落雷だが、静電気放電や高電圧遮断器の開閉などによっても発生する。この結果、IT機器が誤動作したり、場合によっては破壊されることもある。

2)停電:先日東京都および千葉県で発生した停電事件が記憶に新しいが、定義としては、0.5サイクルから長時間継続する電源電圧の喪失現象を指す。落雷などによる電力系統の障害から、機器をつなぎすぎたために起こるオフィス内でのブレーカのトリップ、身近なところではコンセント抜けまで、さまざまな原因で起こる。IT機器が停止したり故障したりする。

3)サグ/不足電圧:0.5サイクルから長時間継続する電源電圧の低下現象で、大規模な負荷(モータや空調設備など)の起動、変動により発生する。IT機器が誤動作する。

4)過電圧:0.5サイクルから長時間継続する電源電圧の増加現象で、電力系統の事故、電源変圧器タップの設定不良などが原因である。IT機器に加熱などのストレスを与える。

5)波形ひずみ:同一の電源系統に接続されたインバータ、アーク溶接機などが発生する高調波電流が原因である。IT機器から発生する波形ひずみが他の機器に影響を与えることもある。

6)電圧変動:電源周波数以下の低周波(25Hz以下)で周期的に電圧が変動する現象であり、アーク炉などの変動負荷が原因である。発生する範囲は狭い。

7)周波数変動:負荷アンバランスにより電源周波数が変動する現象である。IT機器には周波数変動に対する耐性があるため、影響は少ない。

 特に注意が必要なのはサージや停電だ。工場内にあるオフィスでは、サグ、電圧変動も発生する可能性がある。

データラインのディザスタ

 IT機器の多くには、電源以外にも電話回線やLANケーブルなどのデータラインが接続されている。この経路から侵入し、機器に影響を及ぼすディザスタ要素として、次のような現象が挙げられる(関連記事)

1)電源ケーブルからデータラインに誘導されるサージ:データラインに隣接して電源ケーブルなどが複数敷設されている場合、電源ケーブルに落雷などによるサージ電流が流れると、周囲のデータケーブルにもサージ電圧が誘導される。このような影響を及ぼす誘導的な組み合わせに注意する必要がある。

  • 電源ケーブルに隣接するデータケーブル
  • 避雷導体近くを通るデータケーブル
  • 建物の鉄部分の近くを通るデータケーブル
  • 蛍光灯(ノイズを発生させる)のごく近くを通るデータケーブル

2)アース回路に流れるサージ:電気を逃がす通路となるアース(接地)は、どのような電源配線もしくはデータネットワークでも必須の要素である。1つのシステム内のアースは、入力分電盤にある1つのアースポイントにのみ接続する。したがって、複数のアースポイントがあると、意図しないアース電流が低電圧のデータラインに流れる結果になり、データ伝送の品質を落とすノイズや大規模なサージになることがある。

図1 図1●アース電位の差により流れるアース電流
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