mixi全盛時代に地域SNSの役割はどこにある?驚愕の自治体事情(1/2 ページ)

2006年度、総務省が推進する「住民参画モデルシステム」の実証実験として、11の地方自治体で公的個人認証サービス対応アンケートおよび地域SNS導入への動きが進んでいる。その中の1つである大阪府豊中市に、地域SNSへの取り組みを中心とした現状と今後の展望を聞いた。

» 2006年10月30日 08時00分 公開
[田中雅晴,ITmedia]

このコンテンツは、オンライン・ムック「驚愕の自治体事情」のコンテンツです。関連する記事はこちらで一覧できます。


 大阪府北部の市、豊中市では、この9月から、豊中市地域SNS(仮称)のテスト運用を開始した。これは、総務省の指導の下に「財団法人地方自治情報センター」(LASDEC)が推進する、公的個人認証サービス対応アンケートおよび地域SNSの総称である「住民参画モデルシステム」の開発実証実験の対象として、豊中市が公募に対して提案書を提出して採用されたもので、2006年度は、豊中市を含めた11団体が参画している。mixiという、今やガリバーとなったSNSが存在する現状で、地域SNSが為すべき役割とは何なのか? さまざまな自治体がそれぞれの取り組みを見せる中、豊中市の独自の地域SNS戦略に関して、豊中市情報政策室・地域情報システム係主事の北出宏光氏に話を聞いた。

豊中市情報政策室地域情報システム係の北出宏光主事

 現在、公開されている形ながら、さまざまな実験やシステム構築を行っている真っ最中の豊中市地域SNS(仮称)。ドメインも、2004年度に行った「地域安心安全情報共有システム」(関連リンク参照)の実証実験で使用された空きドメインを仮に使用しており、正式運用の際には変更される。現状、会員登録は可能だがセキュアサーバは実用実験の最中なので、登録の際はそれを了承の上自己責任で行ってほしいとしている。正式運用はこの12月を予定している。

豊中市地域SNS(仮称) 豊中市地域SNS(仮称)

地域情報化への熱心な取り組みに高い評価

 豊中市は、国策に沿った形での地域情報化に全国でも早い時期から取り組んでおり、その成果は高く評価されている。例えば、本特集で取り上げた、摂南大学の島田教授による2006年度の電子自治体進展度調査においても、「市・特別区」部門の総合ランキングで全国3位となっている(関連記事参照)。また、2004年度には、今回の実証実験と同じくLASDECが行った「地域安心安全情報共有システム」の実証実験にも参加しており、「住民参画モデルシステム」の開発実証実験への参加採択も、それらの実績が評価された形だ。加えて、今回豊中市がその取り組みとして行う地域SNSの運用方法と目的が実に独創的であることも大きなポイントである。

地元商店街との連携によるスタートという独自性

 10月28日現在、豊中市地域SNSのテスト運用のトップページに並んでいる項目は、基本的にすべて書き込みテストやRSS反映とリンクのテストのためのもので、実際の運用のものではない。しかし、そのテスト書き込みの1つに「岡町商店街からのお知らせテスト」とあるが、この「岡町商店街」こそが、今回の豊中市地域SNSのキーとなる存在なのである。

 岡町商店街は、豊中市役所の最寄り駅である阪急宝塚線岡町駅と豊中市役所の間にある商店街である。途中からは桜塚商店街に変わる。この商店街の青年部が1989年にスタートした勉強会が母体となり、1994年に設立された「おかまち・まちづくり協議会」という団体がある。市の条例に基づく協議会認定第2号だ。この団体は地元の文化事業や安全・安心事業、商業・商店街の活性化プロジェクトなどを行っているのだが、豊中市地域SNSは同協議会と市との連携によってスタートしているのだ。市が主導の地域SNSと、地元商店街の連携、その狙いはどのようなところにあるのだろうか?

mixiとの役割分担を考えることが、地域SNS活性化の鍵

 「いい悪いの話じゃなく、現実として今の日本のSNSの世界には、mixiというガリバーが存在しています。地域SNSでそれと同じことをしても、存在意義はないし、そもそも活性化しないですよね」と北出氏は言う。確かに、現時点で700万人を超える会員数を持ち、地域の情報に関してもかなり細分化されたコミュニティーが林立するmixi内では、例えばそれが行政サービスの類であったとしても、わざわざ他サイトに移行することなくたいていの情報が得られる。

 「それに対し、mixiではできない独自の情報ツールとしての使用法を考えていった結果、『地元地域の商店振興』という方向性に行き着いた」と北出氏。確かに、商業活動を主目的にした参加は(建前的にではあっても)禁止されているmixiでは、できない活用方法ではある。商店街や個別の商店の情報、それも地元のものに特化したSNSとなれば、需要も見込める。しかし、それだけでは地域SNSの存在価値としては弱いのではないだろうか? この点について深く話を聞くと、現状の地域情報化が抱える問題点と、それに対する1つの答えとしての豊中市地域SNSという存在が浮き彫りになった。

       1|2 次のページへ

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

注目のテーマ