次世代のユーザーエクスペリエンスを実現するVistaとWPF国内初イベント、REMIX開催(3/3 ページ)

» 2006年10月30日 09時00分 公開
[下村恭(ハンズシステム),ITmedia]
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WPFが変えるアプリケーションとビジネス

 コンテンツへのアクセス方法をブラウザに限定しないという「缶切り」の例でも分かるとおり、WPFを使うことで、性能や技術面、あるいはコストの面などで妥協をすることなく、コンテンツに最適な表現方法を実現できるということだ。

 従来の業務アプリケーションのユーザーインタフェースは、どれも同じようなものであった。これは、従来のプログラミングツールが提供する表現力に限界があったからだ。デザインに工夫をしても、工数に見合った効果が得られなかったり、思ったとおりのデザインを実現できなかった。この状況がWPFの登場で変わっていく。WPFによるリッチなユーザーエクスペリエンスが当たり前となれば、パッケージソフトであっても、機能面での差別化だけでなく、デザイン面やユーザビリティにおいて差別化しなければ生き残れなくなるだろう。

 これは、デザイナーにとっては新たなビジネスチャンスだ。Webデザイナーがアプリケーションのデザインを手がけるようになり、さらにはユーザーインタフェースを担当するようになっていくはずだ。今までデザイナーを必要としなかったビジネスアプリケーションの世界まで進出するチャンスとなる。

 だがWPFへの対応がWebデザイナーにとって新たなビジネスチャンスになるとはいえ、プログラミングの知識が必要になるのでは、なかなか敷居が高くなってしまう。

 実はWPFを使ったアプリケーションの開発ではデザイナーとプログラマーの分業が簡単にできるようになっている。その立役者がXAMLと呼ばれるXMLをベースとしたタグ言語だ。

 WPF対応アプリケーションの作成において、デザイナーはこのXAMLの定義をベースとする作業を行う。だが、XAMLのタグを書いていく必要はない。デザインツールであるMicrosoft Expressionが用意されており、デザイナーの作業はこのExpressionで行うことになる。プログラマーは従来どおりVisual Studio 2005を使用する。このデザイナーとプログラマーとの間、ExpressionとVisual Studioの間をつなぐのがXAMLということになる。

 実際の開発スタイルとしては、デザイナーがExpressionで作成したプロジェクトを、プログラマーがVisual Studioで開いてコーディングするといった形になる。双方向でやり取りも可能であるため、コラボレーションも楽に行える。

 興味深いのは、デザイン上の動き、例えばビデオを切り替えるという表現をデザインしたときに、ビデオ表示部分が立体的に折りたたまれて次のビデオを表示するような場合、「立体的に折りたたまれる」という動きを実現するのは、プログラマーのコーディングではなく、デザイナーがExpressionで指定するということだ。具体的にはFlashのタイムラインと同じように指定する。

 アプリケーションのユーザーインタフェースにおける動きは、ほぼExpressionによって表現でき、しかも、プロパティの設定だけでコーディングの必要がない。つまり、機能の実装されていない「張りぼて」を作るところまでは、デザイナーだけでできてしまう。

デザイナーは、見た目のデザインやユーザビリティ、インタラクションなどのユーザーインタフェース部分を担当することになる。プログラマーは、データ連携やセキュリティなどの機能面を担当する

 このようなコラボレーションによって、デザイナーとプログラマーの役割分担がはっきりし、お互いに自分の仕事に集中できるようになるのも、WPFによるメリットの1つだろう。

 Vista世代になれば、サイドバーガジェットだけでなく、WebやWindowsFormアプリケーションを含むすべてのアプリケーションにデザインが必要となる。デザイナーにとっては、新たなビジネスチャンスの到来だ。Microsoft ExpressionはCTP1が無償でダウンロードできるようになっている。また、これも無償のVisual Studio Express Editionと組み合わせて、Vista発売前の今から、費用をかけずに実際に開発に取り掛かれる体制も整っている。今から積極的にWPFに対応しておくことで、チャンスをものにできるかどうかが変わってくるだろう。

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