第3回:HPの戦略に見るインテル Itanium プロセッサ ファミリの真のメリットインテル Itanium プロセッサ ファミリを選ぶこと、それは未来を手に入れること

本特集ではこれまで、インテル® Itanium® プロセッサ ファミリの現在の市場動向や、機能面での優位性について解説してきた。本稿では、同プロセッサの選択肢の豊富さがもたらすメリットについて、日本HPの戦略を具体例として挙げながら解説する。

» 2006年11月13日 10時00分 公開
[ITmedia]
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 第1回では、インテル® Itanium® プロセッサ ファミリの現在の市場動向について、第2回では機能面での優位性について解説した。最終回となる第3回では、インテル Itanium プロセッサ ファミリの選択肢の豊富さがもたらすメリットについて述べる。またその具体例として、インテル Itanium プロセッサ ファミリを積極的にサーバラインアップに活用する日本ヒューレット・パッカード(日本HP)のインテル Itanium プロセッサ ファミリ ベースのサーバ戦略について解説する。

幅広い選択肢により、目的に応じた最高のプライスパフォーマンスを実現するインテル Itanium プロセッサ ファミリ ソリューション

 インテル Itanium プロセッサ ファミリ ベースのサーバ市場では、メインフレームやRISC/UNIXサーバなど、ハードウェアからOS、アプリケーションまでが特定のベンダー製品を前提として開発されるのではなく、基本となる共通仕様を土台として、多数のベンダーが競い合いながら、それぞれに特徴あるサーバシステムやOS、周辺機器、ミドルウェアを開発/提供している。このため、異なるベンダーのハードウェアやOS、ミドルウェアなどを、ユーザーの必要に応じて、比較的自由に組み合わせることが可能だ。PCサーバと同様、水平分業のビジネスモデルである。

 OSだけ見ても、インテル Itanium プロセッサ ファミリの選択肢は幅広い。SPARCではSolarisとLinux、POWERではAIXとLinuxの選択しかない。一方、インテル Itanium プロセッサ ファミリをサポートするOSは、Windows Server 2003、Linux、HP-UX、NonStop Kernel、OpenVMS、NEC ACOS-4、Bull GCOS 8などがある。実際にサポートされるOSは、サーバを提供するベンダーごとに異なるが、RISC/UNIXサーバと比較すれば、選択肢は圧倒的に広い。例えば、RISC/UNIXサーバからインテル Itanium プロセッサ ファミリ ベースのサーバへの移行では、HP-UXやLinuxなど、UNIXと親和性の高いOSが選択できるし、IA(インテル・アーキテクチャー)サーバからのアップグレードでは、Windows Server 2003やLinuxなど、既存資産を移行しやすいOSが選択できる。既存資産の移行コストは、システム移行の最大のハードルになりがちだが、これをできるだけ低く抑えることが可能である。

 サーバ本体も、ブレード型やメインフレームクラス、高信頼性サーバ(ミッションクリティカルサーバ)、HPC向けなど、さまざまな形状、機能を持った製品が提供されている。それも、複数のサーバベンダーが工夫を凝らしていることから、プライスパフォーマンスも高い。可用性を重視する、拡張性を重視するなど、用途や性能、予算などに応じて、柔軟な選択が可能となっている。

 アプリケーションにしても、Itanium Solutions Alliance(ISA)の2006年9月の発表によると、インテル Itanium プロセッサ ファミリ対応アプリケーションだけで、すでに1万種類を超えているという。ISAが発足した1年前は5000種類程度だったので、短期間で2倍に増えたことになる。このように対応アプリケーションが増えたことで、インテル Itanium プロセッサ ファミリ ベースのサーバの用途は広がりを見せている。メインフレームやRISC/UNIXサーバでは、企業がデータベースやミドルウェアの上で独自のアプリケーションを開発するのが主流であったが、インテル Itanium プロセッサ ファミリ ベースのサーバでは、さまざまなパッケージアプリケーションを組み合わせたソリューションの利用も可能になっている。これにより、システムの開発期間や開発コストを大幅に圧縮しながら、ビジネス環境の変化に素早く対応できるようになる。

 なおインテル Itanium プロセッサ ファミリ版のWindows Server 2003とLinuxでは、x86アプリケーションの実行が可能なIA-32EL(IA-32エミュレーションレイヤ)が実装されており、x86アプリケーションもインテル Itanium プロセッサ ファミリ ベースのサーバ上で動作させられる。例えば、Windows Server 2003のログ管理にExcel(x86版)を利用するといったことも可能だ。データベースやミドルウェアなどは、ネイティブのインテル Itanium プロセッサ ファミリ版を利用する方が性能的に有利だが、x86向けの豊富なツール類などが利用できるという点も、インテル Itanium プロセッサ ファミリの1つのメリットといえるだろう。

コラム:SPARCのバイナリをインテル Itanium プロセッサ ファミリ ベースのサーバで実行可能にする「QuickTransit」

 Transitiveは、SPARC版Solarisのアプリケーションをそのままインテル Itanium プロセッサ ファミリ版Linuxで稼働させるエミュレーションソフトウェア「QuickTransit」を発表した。同ソフトウェアを利用することで、SPARCからインテル Itanium プロセッサ ファミリへの移行が容易になるとしている。エミュレーションというと、アプリケーションの実行性能が気になるところだ。しかしTransitiveによれば、SPARCに比較してインテル Itanium プロセッサの方がプロセッサの性能が大幅に高いことから、たとえエミュレーションであっても、SPARCよりもアプリケーションを高速に実行できるとのことだ。


なぜHPはインテル Itanium プロセッサ ファミリを推すのか

 ここまで、メインフレームやRISC/UNIXサーバに対するインテル Itanium プロセッサ ファミリ ソリューションの優位性について解説してきたが、HPが同社のサーバラインアップをインテル Itanium プロセッサ ファミリ ベースで統合する決定を下したのにはもう1つ理由がある。そもそもインテル Itanium プロセッサは、インテルとHPが共同で開発してきたという経緯がある(詳細は「インテル® Itanium® 2 プロセッサ×HP Integrity特別対談」を参照のこと)。同社は現在、企業合併などによりPA-RISC、MIPS、Alphaの各プロセッサを搭載するサーバをラインアップに持っているが、これらの後継製品はインテル Itanium プロセッサ ファミリ ソリューションで統合していくという戦略をとっている。そうした戦略を推進するに当たって、共同開発をしてきたという実績はチップセットやソフトウェアの開発にも大きく寄与し、結果としてソリューションの質を高めることにつながるのである。

 すでに述べたとおり、システムの移行は容易ではないが、変化に対応し競争力を維持発展させるためには必然でもある。今回のHPの決定は、既存資産の価値をできるかぎり維持しながら、よりプライスパフォーマンスの高い最新ハードウェア/ソフトウェアを将来の情報システム投資に活用できるようにするものだ。

 HPは、PA-RISC、MIPS、Alphaの各環境に対して、移行ツールやサポートプログラムを提供することで、インテル Itanium プロセッサ ファミリ ベースのサーバへ移行を容易にし、ユーザーの移行を促進するとしている(PA-RISC+HP-UX環境では、インテル Itanium プロセッサ+HP-UXでの互換性を維持している)。HPにとっては、複数のRISCサーバのラインアップをインテル Itanium プロセッサ ファミリ ベースのサーバへ統合することで、サーバ開発やサポートコストを最適化し、価格競争力の高いインテル Itanium プロセッサ ファミリ ベースのサーバ提供に投資を集中できるというメリットがある。

 日本HPのインテル Itanium プロセッサ ファミリ ベースのサーバを見ると、下表のように豊富なラインアップを誇っており、PA-RISC、MIPS、Alphaの各サーバを利用してきたユーザーであっても移行に支障がないようになっている。

HP Integrityサーバのラインアップ(詳細

 HP Integrityサーバは、独自のチップセットを採用し、インテル Itanium プロセッサ ファミリ自体の信頼性に加え、システム全体での可用性を高めているのが特徴だ。独自のメモリエラー訂正技術「ダブルチップスペアリング」により、2個のメモリチップが破損した状態でも、正常動作時と同じ信頼性を維持できる。また障害時のハードウェア交換やシステム停止を極力防ぐ工夫が施されており、自律的に継続運用できるシステムを実現している。

 サーバの利用効率や管理性の向上を実現可能とする「仮想化技術」についても、ソリューションフレームワーク「HP Virtual Server Environment(VSE)」として体系化し、システムの規模やOS環境に依存しない効率的な仮想化環境をHP Integrityサーバ上で構築可能としている。HP VSEでは、仮想化技術の中核技術であるさまざまなパーティーショニング(下表参照)に加え、サービスレベルに応じたリソース配分を自動的に行うインテリジェントポリシーエンジンや、仮想化されたシステムを効率良く管理するツール類などが提供され、サーバリソースの自動最適化や高可用システムの構築が可能である。

HP VSEで提供されるパーティショニング技術(詳細

 前述のようにHP Integrityサーバシリーズはエントリークラスからハイエンドまで幅広いラインアップを誇り、HP-UX/Windows Server/LinuxのマルチOSをサポートしていることから、HP VSEとの組み合わせにおいて、さまざまな利用環境に応じた仮想環境が提供可能となっている。

 HPが独自にチップセットまで開発し、インテル Itanium プロセッサ ファミリ ベースのサーバに力を入れているのは、同社のRISCサーバをインテル Itanium プロセッサ ファミリ ベースのサーバへ統合することはもちろんのこと、その市場が有望と見ているからにほかならない。

 サーバ市場全体を見ると、2006年現在、メインフレームとRISC/UNIXサーバ(ハイエンドサーバ)の出荷台数は全体の10%程度であるのに対し、出荷金額は50%程度を占めている。つまり、システムの単価が非常に高いということだ。もちろん、価格に見合う価値を提供できることが前提になるが、単純な価格競争ではなく、付加価値を利益とできる余地の大きな市場だといえる。ハイエンドサーバ市場では、サーバ本体だけでなく、ストレージやソフトウェア、サービス、サポートまで含めたソリューションとして販売されることが多く、ベンダーから見れば、独自の技術や工夫により、ユーザーにさまざまなバリエーションを持った価値を提供できるという背景がある。

 第1回で解説したように、ハイエンドサーバ市場において、インテル Itanium プロセッサ ファミリ ベースのサーバは着実にシェアを伸ばしており、エコシステムが拡大している。こうした市場の活性化は、新技術の開発や、さらなるプライスパフォーマンス向上にも追い風となるだろう。

ワンストップによるサポートが生む信頼性

 これまで、選択肢が多様であることのメリットを強調してきた。しかし半面では、これが懸念材料となる側面もある。サーバ本体やOS、アプリケーション、周辺機器といったサーバシステム全体を自由に組み合わせられるのはよいが、そうして構築された情報システムの信頼性をだれが保証するのかという問題があるからだ。

 ときに報道される現実の情報システムトラブルを見れば分かるとおり、情報システムに発生した障害に的確に対処できなければ、場合によっては企業の存続さえも脅かされる危険がある。原因が何にあろうと、非常時に的確かつ素早く対応し、サービスを継続できなければならない。これには、情報システムを構成する各部品レベルの保障だけでなく、それらの部品を組み合わせた情報システム全体での可用性が保障されなければならない。

 そのため、ミッションクリティカルサーバの領域では、情報システム設計や展開、システム運用に至るまでをトータルにサポートする垂直統合型のビジネスモデルが採用されてきた。1社がすべてを把握していることから、万一の障害時にも、迅速に対処できるからだ。

 HPでは、サーバ本体のみならず、OS(HP-UX)やストレージシステムなどを提供しており、ユーザーに対してワンストップのサポートやサービスが提供可能な体制を実現している。Windows ServerについてはMicrosoftと、LinuxについてはRed Hatと、それぞれ密接な協力関係を築いており、いずれのプラットフォームに対しても、日本HPが一次窓口となってサポートできる体制を整えている。

 また日本HPは、データベースなどのミドルウェアについても、独自の検証環境により多角的な検証を実施しており、それらの経験を生かしたシステム構築のアドバイスや、サポートを実施している。このようなベンダーとの密接な協力関係の構築や、実際の情報システム運用を意識した検証が可能なのは、長年にわたりミッションクリティカルサーバを扱ってきた経験やノウハウの蓄積があればこそなのだろう。


 これまで述べてきたように、ミッションクリティカル領域におけるインテル Itanium プロセッサ ファミリのエコシステムは順調に拡大を続けている。この背景には、技術革新による機能や信頼性、プライスパフォーマンスの向上、対応製品の充実、従来のメインフレーム・RISC/UNIXサーバにも引けをとらないサポートサービスの提供などがある。ミッションクリティカルな領域では力不足といわれ続けてきたIAサーバだが、インテル Itanium プロセッサ ファミリの登場と成熟により、その差は大きく縮まったどころか、凌駕すらしようとしている。PCサーバがそうであったように、数年後には、インテル Itanium プロセッサ ファミリ ベースのサーバが業界標準といわれる時代もやって来るだろう。


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