複数のRFIDコードを1つのシステムで、ORF 2006で実証実験

Auto-ID Lab.Japanは、ユビキタスIDセンターの協力を得て、複数のRFIDコード体系の相互利用に向けたプラットフォームの実証実験を開始。ORF 2006の入場券で活用した。

» 2006年11月24日 10時10分 公開
[ITmedia]

 Auto-ID Lab.Japanは、ユビキタスIDセンターの協力を得て、複数のRFIDコード体系の相互利用に向けたプラットフォームの実証実験を開始した。「EPC」や「ucode」、さらには利用する企業らが独自に作成するコード体系が入り交じるマルチコード環境で、シームレスにアプリケーションを利用できる環境作りを目指す。

 この実験は、経済産業省の2006年度電子タグ実証実験事業の1つとして採択されたもので、Auto-ID Lab.JapanとユビキタスIDセンター、日本ユニシスが協力して進めている。第一弾として、11月22日、23日にわたって開催された「SFC Open Research Forum 2006」の入場券に複数の方式のRFIDを導入し、実験を実施した。12月5日から開催される「TRONSHOW2007」でも同様の実証実験を行う予定だ。

 ORFの会場では、入場券としてUHF帯のRFIDタグ、約6000枚を配布。このうちEPCコードは5500枚、UIDコードは400枚、独自コードは100枚という内訳だ。会場に置かれた2種類のRFIDリーダでタグを読み取ると、画面にエリア状況情報が表示されたり、登録してある携帯電話にリアルタイムに展示時情報を配信するといったアプリケーションに活用した。

会場で配布された入場券。人によって異なる種類のRFIDタグが配布された

 Auto-ID Lab.Japanでは「これを単なる実証事件で終わらせるのではなく、次の新しい情報インフラを発信していきたい」とし、1つのタグに記された情報を、さまざまなモデル、さまざまなアプリケーションが相互に融通し合って利用できるような情報基盤を目指したいとした。それが、今後のユビキタス社会の実現につながるという。

 今回の実験では、128ビット長のucodeと96ビットのEPCという異なる構造のコードを読み取るために、ISO標準で規定されたヘッダー情報を読み取り、それを元に動的に読み取り範囲を変えるリーダを開発した。慶應義塾大学環境情報学部の中村修教授はこれを「ある意味、本当にISOに準拠したリーダを作成できた」と表現している。

 「複数のコード体系を1つのシステム、1つのインフラの中で扱えるようにした」(中村教授)。実験の結果、「最初のつかみとして、これはいけるという感触を得た」という。引き続き、より細かな部分でシステム的な検証を続けるとともに、アプリケーションと連動するための共通化、インタフェースの部分を詰めていく計画だ。

村井氏、「日本が先端的な役割を」

 EPCとucodeはいずれも、RFIDタグを識別するためのコード体系だが、そもそもの成り立ちや目的、構造が異なる。

 EPCは、オートIDセンターが研究開発を進めていた「AutoID」をベースにしたもので、「商品」に付与することで流通の効率化を目指す意味合いが強い。一方ucodeは、あらゆる「モノ」や「場所」を識別することに特化している。推進母体も異なり、EPCではEPC Globalが普及・啓蒙活動を、慶應義塾大学も含め世界の7つの大学に置かれたAuto ID Labsが技術開発を担当。ucodeでは、東京大学大学院の坂村健教授が主催するT-Engineフォーラムに設置されたユビキタスIDセンターが標準化を進めてきた。

 とかく「対立」の構図でとらえられがちな両仕様だが、慶應義塾大学環境情報学部の村井純教授は、「『VHSかβか』というふうに言われるけれども、問題の本質はそこではない。新しい技術を持って人間社会をどのように変えていくかということ」と述べた。さらに、日本こそこの分野における先端的な役割を担うべきであり、世界に対してアピールしていく役割を果たすべきだとした。

 ユビキタスIDセンター側からは、東京大学、ユビキタスIDセンター副所長の越塚登氏が参加し、やはり「RFIDを日本という国の産業力強化に結びつけ、ひいては社会インフラ、国家インフラとしていきたい」と述べ、インターネット系の技術と組み込み系の技術がともに手を組み、今後も取り組んでいくとした。

 一連のプロジェクト終了後には、複数のコード体系を扱えるプラットフォーム本体を、オープンソースソフトウェアとして公開する予定という。

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