インテルが「vPro」で狙うのはセキュリティ?Interview

Intelでエンタープライズ・ソリューション・セールス&サービス部門を率いるエチュバリア副社長に、企業向けプラットフォームのブランド「vPro」について話を聞いた。

» 2007年05月01日 08時00分 公開
[浅井英二,ITmedia]

 OSベンダーやISVらとの水平分業によって、市場で圧倒的なリーダーシップを獲得してきたIntelは、その開発した技術やノウハウをエコシステムで共有し、ベストなソリューションを提供すべく、7年前にエンタープライズ・ソリューション・セールス&サービスと呼ばれる組織を発足させている。当初は「性能」をフルに引き出すための最適化が主な取り組みだったが、現在では「バッテリー寿命」「管理性」「セキュリティ」といった、さまざまな企業のニーズに対処している。4月初めには、ノートブックPC向けのvPro、「Centrino Pro」を発表したばかりだ。同部門を率いるGM、リカルド・エチュバリア副社長に新しい企業向けプラットフォームのブランド「vPro」について話を聞いた。

「もはやvProなしの世界は想像しがたい」と話すエチュバリア氏

ITmedia エンタープライズ・ソリューション・セールス&サービスとはどのような組織ですか。Intelがソリューションを提供するのでしょうか。

エチュバリア 10年前になりますが、Intelはマルチメディア機能を拡張したMMX Pentiumをリリースしました。その差別化を図るためには、その機能を十分に活用してくれるISVの存在が不可欠で、彼らと話し合う必要がありました。それがエコシステムの始まりでした。

 われわれは数年後、サーバ向けのプロセッサを投入し、エンタープライズ市場に本格参入したとき、もっと複雑な企業のニーズに対処しなければならないと考え、ソリューション提案能力を高めるべく、「エンタープライズ・ソリューション・セールス&サービス」という組織を立ち上げました。その狙いは、Intelが開発した技術やノウハウをエコシステムで共有し、ベストなソリューションを提供できるようにすることにあります。

ITmedia 例えば、どんなニーズでしょうか。

エチュバリア 組織が出来た当時のフォーカスは、性能でした。OSベンダーやISVらが彼らのソフトウェアをインテルのプロセッサに最適化してもらえるよう努めました。C、Fotran、Javaといった各種コンパイラを提供すると同時にボトルネックを発見するプロファイラーのようなツールも提供しています。

 しかし、このところエンタープライズ市場では、仮想化やセキュリティ、管理の容易性などのニーズが高まっており、2007年はそうしたソリューションに力を注いでいきます。

 2006年は、デスクトップ、ノートブック、サーバというそれぞれの分野向けに40ものプロセッサを市場に投入しました。これらのすべての技術が、顧客らに新しい価値を提供しています。

 サーバプラットフォームでは、マルチコア化や仮想化を積極的に進めてリーダーシップを取り、その結果、多くの顧客がIntelに帰ってきてくれました。また、Itaniumは、特にこの日本市場で成功を収めています。

 デスクトップでは昨年後半、「vPro」をリリースしました。企業が仮想化の技術を活用し、管理の容易性やセキュリティを高められるようにしていきます。企業は特にこのvProに期待しています。

vProで提供したいのはすべてのベネフィット

ITmedia そのvProですが、企業は本格的な導入段階にあるのでしょうか。

エチュバリア vProは世界各地で受け入れられています。自動車のBMW、保険のING、米国の大手病院チェーンなど、多くの顧客企業が評価を終え、導入段階に入っています。彼らは、単に性能だけでなく、管理の容易性やセキュリティを求めています。企業のIT部門が煩雑なデスクトップの管理や保守から解放され、多くの時間をイノベーションのために割けるようになるからです。

ITmedia vProというと、先ず「セキュリティ」という印象があるのですが。

エチュバリア どの企業でもセキュリティは重要視しています。しかし、われわれは通常、「管理に要するコスト」から話を始めています。ある大手のシステムインテグレーターが調査したところ、デスクトップPCを置き換えるのに以前では1週間かかっていた企業が、vProによって2日間に短縮できたといいます。プロセスを自動化できるだけでなく、システムの電源を切った状態のままでもアップデートできるからです。

 そのため、システムインテグレーターらも、高い関心を示しています。彼らはデスクトップPCの管理を肩代わりしていることが多く、vProによって付加価値が飛躍的に高まるからです。日本市場においても、ダイヤモンドコンピュータサービスをはじめ、大手のシステムインテグレーターはvProを評価・検証してくれています。

ITmedia モバイル分野のプラットフォームであるCentrinoは、とても成功したと思います。vProはどのように訴求していきますか。

エチュバリア vProで提供したいのは、生産性、セキュリティ、そして管理性という、すべてのベネフィットです。例えば、セキュリティを高めるために何かを妥協しなければならないというのは、おかしな話です。本来備えているPCの機能を損ねていい、と考える企業はいないと思います。

 これまでIntelでは、PCを使う人に向けたメッセージを主に伝えてきましたが、vProはITプロフェッショナルや経営層にベネフィットがある機能を追加しています。価格だけを見てCeleronプロセッサを導入する企業が多いのですが、それでは社員一人ひとりの生産性をあまりにも軽視しすぎています。Core 2 Duoで生産性が高まり、同時に管理性、セキュリティが高まるのであれば歓迎されるはずです。PCのTCOを把握している顧客企業は意外と少なく、市場に対して問題提起も行っていきたいと考えています。

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