実はこの高機能の商品企画は、現場のR&D部門のシーズや、営業やマーケティング部門が読み取った消費者のニーズから発想したものではなかった。低価格路線を続けても利益は出ないため、付加価値のある高機能商品で利益率を高めたいという経営上の戦略がはじめにあり、その目的のもとに商品企画を立案してもらったのだ。
長谷川氏は続ける。「シーズやニーズは、企画のもとになる重要な要素です。そのためR&D部門はシーズにこだわって発想しようとするし、営業はニーズから発想を組み立てる。それ自体は間違っていないが、目的の設定がないままシーズやニーズから企画を立てていくと、的外れな企画になりやすい。いくら画期的だったり、消費者心理を満たす企画であっても、目的を達成できなければ意味がないのです。部下に企画の提案を求めるときは、まず目的を明確にして、企画の到達点をしっかり示すことが先決です」
シーズ、ニーズをもとにギリギリ知恵を絞っているマネジャー層は多いだろう。しかしそもそもその発想が企画力を弱めているかもしれないのだ。
企画力はまず数を集めるということは大前提。しかし目的を明確にしないで数を出せといっても、部下たちはすぐに息切れしてしまうだろう。マネジャーは一呼吸置いて、経営課題をもう一度おさらいして、何が求められるかを明確にしよう。あなたが統括するチームのメンバーは、あなたの指差す方向を探している。マネジャーはオーケストラの指揮者のようなもの。演奏者としての経歴は必要ない。ハッとする企画をひねり出す、部下を育てればよい。方向を示してこそ、バラバラの個人プレイではない、チーム力を基礎にした企画創出が実現できる。そこから企画マネジメントのマエストロ(巨匠)への道が見えてくるはずだ。
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