法人市場が花開くためのオープンモデル導入をモバイルビジネス研究会報告(2/2 ページ)

» 2007年06月27日 09時05分 公開
[ITmedia]
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法人市場ほどオープン化が重要

 モバイルビジネス研究会は、オープンな携帯電話ビジネスモデルの実現に向けて、主に「販売奨励金制度の見直しと料金体系の透明化」「MVNOの参入促進」「SIMロックの可否の検討」「汎用的なプラットフォームの実現」を掲げる。このうち法人市場の成長については、MVNO参入やSIMロックの可否、汎用プラットフォームの実現が大きく関連するとしている。

 報告書では法人市場に求められる要素について、「ニーズに応じて多様なアプリケーションが機能する(あるいは機能を限定した)端末が求められるため、通信サービスと一体となったバンドル型の端末機能が必須であるとは考えられない。このため、基本機能に限ったアプリケーション重視型(アプリケーションによるサービスや機能の追加が可能)の端末が普及することにより、システムソリューション事業など法人市場の成長が期待される」としており、既存の垂直統合モデルが必ずしも法人市場全体の成長にマッチするとは限らないとの見方を示した。

 携帯電話の普及に当たっては、通信事業者が長らく販売奨励金を原資とした端末の低価格供給と高い利用料金での販売奨励金の回収というサイクルを取り入れてきたとされる。この回収には長期間を要するため、第3世代サービスから導入されたSIMロックでは、通信事業者が契約者を長期間にわたって縛る(SIMカードの利用をキャリア供給の端末に限定する)ものだとの意見が研究会では出されていた。

MVNOは通信事業者から設備を借りてサービスを提供する。国内では日本通信やSo-netなどがウィルコムのPHS網と無線LANを利用できるサービスを提供している例がある

 MVNOの参入促進は、携帯電話サービスの多様化をさらに進めるものとして期待され、法人市場においても報告書では「、ベンチャー系企業がモバイルサービスを組み込んだ新規性の高いサービスを提供したり、SIer(システムインテグレータ)が法人向けサービスの高度化のためにトータルソリューションとして、固定・移動サービスを組み合わせたシステムを提供する等の事例が出てきているが、MVNOの新規参入を促進することにより、法人市場開拓が進展するなど、新事業創出の可能性が高まることが期待される」と述べている。

 すでに既存の通信事業者は、アプリケーションやハードウェアなどさまざまな分野のベンダーと共同で法人向けサービスの展開を行っており、業種別やソリューション別の多彩なサービスが整いつつある。だが、MVNOが独自のサービスや課金体系、システムを展開する場合に、SIMロックなどによって柔軟に行えない可能性が報告書では指摘させた。

 例えば、ユーザーが待ち受け状態でメールを自動受信する「プッシュ型配信」は、通信事業者がドメインとなっているメールアドレス、またはマイクロソフトのWindows Mobile OSやSymbianの Symbian OSを搭載する一部機種の機能でのみ利用でき、MVNOが独自のサービスを展開しづらい状況にある。

 報告書では、この点について「プッシュ型配信機能を活用することにより、例えば法人向けサービスとして、端末のスケジューラやアドレス帳、メーラー等のアプリケーションと社内LANサーバを連動し、業務用端末として活用するといったソリューションビジネスをMVNOが提供することが可能になると考えられる。また、固定端末にメールを受信した旨の情報を携帯端末で認識して直ちに当該メールを確認することも可能になると考えられる」としている。

 実際には一部のベンダーからこのようなサービスの提供が始められているが、さらに多様なサービスの登場を実現するには、SIMロックの緩和やMVNOがアプリケーション連携を行いやすいオープンな端末プラットフォームの普及が求められると報告書では提言する。

 このほかにも報告書ではWiMAXに代表される次世代の高速無線サービスと携帯電話の、技術・ビジネスモデルを含めた広い範囲での連携実現が法人市場の成長において重要な要素の1つになるとしている。

 モバイルビジネス研究会は、新たな携帯電話ビジネスモデルの実現に向けて、2008年度までに現行制度の課題全体を見直す第1フェーズ、第1フェーズを基に法制度や有識者機関も活用した新たなビジネスモデルの創造を2011年度までに実現する第2フェーズを設定し、市場動向のモニタリングや携帯電話ビジネスに関わる事業者の意見聴取を慎重に行いながら、アクションを起こしていくよう、報告書で求めている。

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