「サーバ連携がWindows Mobileの価値を生む」――MS樋口COO

マイクロソフトの樋口泰行COOは、MCPCのイベントで同社のモバイル事業の戦略について説明を行った。

» 2007年09月07日 21時13分 公開
[國谷武史,ITmedia]

 マイクロソフトの樋口泰行代表執行役兼COOは9月7日、東京都内で開催されたモバイルコンピューティング推進コンソーシアムのイベントで基調講演を行い、同社のモバイル事業戦略について説明を行った。

 冒頭、樋口氏は「モバイル事業は当社の中でも年率200%の成長を見せる重要なビジネス。私自身、スマートフォンは使えば使うほど手放せないものになってきた」と挨拶した。

樋口泰行代表執行役兼COO

 同社は長年、「デジタルワークスタイル」というコンセプトでITを活用した業務の生産性向上を訴求してきた。同社のモバイル戦略では、デスクトップの業務環境につきまとう時間と空間の制約からビジネスユーザーをいかに解放するかがミッションだという。

 「日本は、個人のIT化がいち早く進んだが、ビジネス分野は遅れてきた。街中で携帯電話のメールをやり取りする光景は見慣れたものだが、やり取りされるメールの中でビジネスに関係する内容は10%にも満たないだろう。この比率が20〜30%になるだけでも生産性が飛躍的に高まる。メールはあくまで一例だが、モバイル化の目的は生産性の向上にある」(樋口氏)

 また企業のIT化について、「日本は基幹業務が中心。CRMやBIを活用して収益向上につなげるような取り組みが欧米より遅れている。そして多くのシステムがその場の課題解決のために構築された“一品料理”になってしまい、欧米のような大きな課題を抜本的に改善するパッケージという観点が足りていない」と話した。

日本は2009年までにモバイルワーカーの著しい拡大が見込まれるという

 同社のモバイルデバイス向けOSは、携帯電話の通信をサポートするWindows Mobileとなってから、スマートフォンでの採用が拡大。現在では47社のメーカーから140機種以上のスマートフォンやPDAが発売され、年間出荷台数も1000万台を超えるという。国内では2005年にウィルコムが「W-ZERO3」を発売し、2007年末までに累計で100万台が出荷される見込みとなる。発売予定機種も含め、Windows Mobile搭載端末は10機種を数える。

 樋口氏は、ビジネス用途のスマートフォンについて「企業の情報システム部門が個人の持ち込みPCに対応しなければならなくなった10年前の状況に似てきた」と述べた。すでにスマートフォンは、パーソナルユースとしてだけではなく、企業の情報システムの1つとして考えなくてはならない存在になったという。

 「スマートフォンはサーバとつながることによって大きな価値を創造する。当社のサーバ製品群(Exchange、SQL、SharePoint、Office Communicator)はモバイルに対応している。サーバとスマートフォンの間で安全に情報が交わされ、DRMを活用して機密性の高い情報もモバイルで扱うことができる」(樋口氏)

 導入事例として、幹部社員間のコミュニケーション促進を目的としたユニバーサル・スタジオ・ジャパン(USJ)と保守・管理業務の効率化を目的としたINAXメンテナンスのケースが紹介された。

 USJでは、幹部社員を対象として3月にNTTドコモの「hTc Z」130台を導入。ドコモの専用線サービスを介してExchangeサーバとスマートフォン間で、スケジュールやメッセージデータの共有化とメールを利用する。同社では1日の業務時間の25%がメール処理に当てられていることが事前のアンケートから判明し、コミュニケーションの効率化が課題になっていた。

alt USJ(左)とINAXメンテナンスの導入事例

 INAXメンテナンスでは、600人のカスタマーエンジニアを対象にhTc ZとBluetooth対応のモバイルプリンタを導入、作業現場で顧客情報の利用や作業費用の請求書発行までを行う。サーバとの通信の暗号化や紛失に遠隔操作によるデータ消去といったセキュリティ対策を取る。これらによって代金回収までのリードタイムが1週間から3日に短縮されたという。

 モバイル&エンベデットデバイス本部の梅田成二本部長は、Windows Mobileの特徴について「Windows CEをベースに携帯電話に対応する機能を実装したものとご理解いただきたい。使い慣れたWindowsのインタフェース、PIMデータやOfficeの連携、DRM対応など、PC環境と親和性が高い」と説明した。

梅田氏のデモ。スマートフォンでは、例えばコピー機のメンテナンスリポートの作成、サーバへのアップロード行うアプリケーションを利用できるだけでなく、開発も既存のWindows環境を利用できる

 またWindows Mobile向けのアプリケーションは、Visual Studio 2005などで開発でき、Windows Mobile向けに「.NET Compact Framework」(現在はバージョン2.0)も提供されている。.NET環境で開発されたアプリケーションを、PC向けにもモバイル向けに展開しやすくなり、全世界で約1万8000種類のWindows Mobile向けアプリケーションが開発された。

 最後に樋口氏は、「モバイル市場の拡大は当社単独では難しく、協業体制を推進して日本経済の生産性を向上させていきたい」と締めくくった。

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