Android対応も考える――富士通が組み込みソフト「Inspirium」を強化

富士通は、組み込み向けミドルウェア「Inspirium」で、ブラウザ表示や音声合成、著作権保護機能を向上させた製品を発売。GoogleのAndroidについても言及した。

» 2007年11月08日 19時19分 公開
[國谷武史,ITmedia]

 富士通は11月8日、組み込み向けミドルウェア「Inspirium」シリーズで、PCサイトの表示精度の向上や音声合成のスムーズな処理などを実現した3製品を11月14日から発売すると発表した。

 新たに発売されるのは、ブラウザの「HTMLブラウザ V3.7」と音声合成の「音声合成ライブラリ V3.0」、ホームネットワーク機器向けの「HomeNetworkライブラリ V2.0」の3製品。

 HTMLブラウザは、組み込み用のフルブラウザソフトウェアとして携帯電話やカーナビゲーション、ATMなどで採用され、AjaxやRSS、SSL認証、音声読み上げなどをサポートする。最新版では、PCサイトの表示精度を向上させ、前バージョンに比べて精度を60%から90%に高めたという(主要企業やランダムに抽出したサイトにて同社が独自に検証)。

alt W3Cに準拠していないサイトも含め、PC用ブラウザの柔軟性な表示性能を目指した。今回バージョンアップはないが、デジタル放送端末向けにはBMLブラウザが出荷されている(右)

 ソフトウェア事業本部組込みソフトウェアテクノロジ部の長田格部長は、「特に携帯電話では3Gの高速通信サービスが本格化し、ディスプレーの大画面化(WVGAモデルの拡大)で、PCサイトの利用が広まる。従来はW3Cの定めるHTMLのルールに厳格に合わせる仕様だったが、W3Cのルールに準拠していないサイトにも柔軟に対応し、レイアウトが崩れないなど、PCサイトを適切に表示できるよう改善した」と説明した。

 音声合成ライブラリでは、富士通研究所が開発した「最適化素片複合方式」と呼ばれる、音のつながりをスムーズに調整する技術を採用。合成音が自然な形で聞き取れるように品質の向上を図った。従来の処理では1文字ごとに音の合成処理を行っていたため、言葉が途切れるような不自然な聞こえ方になっていた。最新版では、日常的に利用される単語やフレーズを1つのパターンとして処理し、自然な音のつながりを実現したという。

alt スムーズに聞こえる合成音の仕組み(左)と、HomeNetworkライブラリを実装したW-ZERO3でのDTCP-IPコンテンツの再生デモ

 HomeNetworkライブラリは、前バージョンまでDLNA(Digital Living Network Alliance)対応機器向けの制御用ミドルウェアライブラリ「Inspirium PnPライブラリ」の製品名で提供。今回から著作権保護技術のDTCP-IPをサポートし、製品名が変更された。これにより、家庭内でのデジタルコンテンツ利用や、地上デジタル放送のIP再送信などにも対応できるという。

長田格ソフトウェアテクノロジ部長

 米Googleが発表した携帯電話向けプラットフォーム「Android」について、長田氏は「OS領域については当然ながらサポートが求められると思うので、どのような仕組みになるかを注視したい。ただし、ブラウザ機能に限定すればライバル関係になるのでしっかりと戦う」と話した。

 新製品は、富士通ソフトウェアテクノロジーズが販売とサービス提供を担当。価格は個別見積もりとなる。また、11月14日から横浜市のパシフィコ横浜で開催される「Embedded Technology 2007」にも出展される。富士通ではInspirium製品全体で今後3年間に100億円の売り上げを見込んでいる。

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