NEC、2008年度携帯電話出荷を約2倍に引き上げ出荷台数の減少に歯止め

NECは、今年度の携帯電話出荷台数目標を約700万台に引き上げる。製品ラインアップの強化やNGN普及を見据えたサービス拡充を図るという。

» 2008年06月09日 17時38分 公開
[ITmedia]

 NECは6月9日、2008年度のモバイルターミナル事業について記者向けの説明会を開催した。携帯電話出荷台数を2007年度に比べて2倍近くに引き上げる。

大武氏

 同社の2007年度携帯電話出荷実績は約480万台で、国内シェアは約9%。2008年度以降を成長フェーズと位置付け、2010年度に1000万台の出荷を目指すとしている。事業計画を説明した大武章人専務は、「(低迷する出荷数が)底を打った。“Nのケータイ”を復活させるべく、V字回復を遂げる」と話した。

 2008年度は、機種ラインアップの拡充や操作性の改善を中心とした機能強化、開発および製造の効率化を重点分野に掲げる。今年度上期は、NTTドコモ向けに6機種、1年半ぶりのリリースとなるソフトバンクモバイル向けに2機種を投入。2007年度上期は2機種、同下期は4機種を展開していた。薄型サイズや高機能を特徴としてきた同社では、「デザインや使いやすさ、NGN時代に向けたインターネットとの親和性向上を強化していく」(大武氏)という。一般向けでは初の携帯電話/無線LANデュアル端末「N906iL onefone」を利用したFMC(Fixed Mobile Convergence)サービスの展開にも注力し、「(通信の)NECの総合力を発揮し、新サービスの先駆者として普及に取り組む」と大武氏は語った。

出荷増は国内市場でのシェア拡大で達成する計画

 開発および製造では、Linuxベースのソフトウェアプラットフォーム強化や、派生機種開発を容易にするためのハードウェア開発プロセスの改善を図る。特にソフトウェアプラットフォームは、アプリケーションやミドルウェア領域でモジュール化を進め、多品種展開における開発コストの増加を抑制させる。「これにより、機種数を2倍にしても、開発コストの増加を20〜30%程度にできる。さらに20%以下に引き下げたい」(大武氏)。OS領域では従来からGoogleのAndroidなど新たなオープンプラットフォームが登場しているが、「しばらくは様子を見たい。当面は現行ベースになる」(同氏)という。

 2010年度1000万台出荷実現に向けた施策は、新サービスによる需要開拓が中心になる。家電機器と連携するホームネットワークサービスや、SaaSを訴求し、これらのサービスのいわば「玄関口」として、携帯電話の国内シェア拡大を狙う。「インフラ、サービス、端末を一体で考えたい。ネットワークを経由して手元の携帯電話でスーパーコンピュータを操作するような新たな価値を提供したい」(大武氏)

ネットワークインフラおよびサービス、アプリケーションの各ビジネスと一体で携帯電話事業の復活を目指すという

 出荷増に向けて流通経路の拡大も想定されるが、KDDIやイー・モバイルなどほかの通信事業者への供給、海外市場への再参入について大武氏は「将来は分からないが、2008年度はまずあり得ない」と否定した。ユーザーが携帯電話とプライベートとビジネスで使い分ける“2台需要”に対しては、法人市場向けに低価格の機種を年度内もしくは来年度初頭に投入する考えを明らかにした。

 大武氏は、「PC事業やインターネット事業(NECビッグローブ)の経験を通じ、携帯電話とどう結び付けていくかが私の至上命題。NECの携帯電話事業の再成長を楽しみしていただきたい」と話した。収益見通しについては、「端末やサービス開発に伴うコスト、単価の下落など考慮すると、2007年度実績にいくらかプラスしたい」(同氏)としている。

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