広がるコンタクトセンター、業務の拡張に合わせたシステム構築を実現楽天グループのインターネット銀行

インターネット銀行の事業基盤を支えるコンタクトセンター。業務の拡大により人員や座席数が増加傾向にある一方で、それに伴うシステム開発や従業員のトレーニングなど膨大なコストや手間が発生する。それらをいかに効率化させるかが企業の課題だ。

» 2008年08月26日 08時00分 公開
[伏見学,ITmedia]

導入前の課題

口座数の増加や新サービスの登場などの業務拡大に合わせて、小規模から大規模まで柔軟に拡張できるシステムを必要としていた。


導入後の効果

オープン技術ベースのコンタクトセンターシステムを導入することで、短期間、低コストでシステム構築が可能になったほか、プログラミング経験のない社員でも容易にカスタマイズできるようになった。コンタクト業務の効率性も向上した。


 楽天のグループ企業として2006年7月に設立した楽天フィナンシャルソリューションは、楽天グループ会員向けのインターネット銀行である東京都民銀行楽天支店(楽天バンク@TTB)のシステム開発や運用、コンタクトセンターの企画・運営、Webサイト製作などの事業を展開している。約25名の社員が中心となり「24時間・365日」のインターネット金融サービスを提供するため、特にシステム開発、運用に関しては人員が少なく苦労も多いという。

 システム開発の指揮を執る業務推進部門 Webサービス部の堀内哲部長はこう語る。

 「当社は楽天会員向けのインターネットバンクにかかわる事業を手掛けているため、例えば『楽天競馬』など銀行を使って決済が発生するサービスが登場するたびに業務が拡張していきます。要件定義が決まらないうちに次々とアドオン開発していく状況も珍しくありません。加えて、コンタクトセンターでは基本的にインターネットでのやり取りとなるためスピードが重視されます。少ない人数でこうした状況に対応していかなくてはなりません」

他システムとの連携が課題に

業務推進部門 Webサービス部部長の堀内哲氏 業務推進部門 Webサービス部部長の堀内哲氏

 そうした状況の中、業務の基幹となるコンタクトセンターシステム導入の検討を始める。ただし導入に当たりいくつかの条件を満たす必要があった。業務の拡大に合わせて小規模から大規模まで柔軟に拡張できることや、銀行のフロントシステムとして稼働するセールスフォース・ドットコムの「Salesforce」とのCTI(電話やFAXをコンピュータシステムに統合する技術)連携や印i-flex solutionsの勘定系パッケージ「FLEXCUBE」との統合が容易にできること、VoIPを応用したインターネット電話などで用いられる通話制御プロトコルのSIPをベースとすること、XMLやSOAPなどオープンインタフェースをサポートすることなどが新システムに求められた。

 そこで選定に上ったのが米Interactive Intelligenceのコンタクトセンター向けシステム「Customer Interaction Center(CIC)」である。同システムはIP電話やFAX、メッセージング、プレゼンス管理などコンタクト業務に必要な機能を統合したパッケージ製品だ。

1人でもシステム運用が可能に

 CICは上述したシステムへのニーズに応えてくれるものだった。加えて採用の決め手となったのは、24時間365日の安定稼働を実現できる冗長構成や、ユーザーの登録や削除、スキルレベルの細かな設定などユーザー管理が容易に行えることである。

 システム開発はスムーズに進められ、わずか3カ月で準備が完了した。簡易的な設定のみで構築が可能なためバグがほとんど発生せず、必要な機能をすべてスケジュール通りに実装した。運用テストは2006年10月から2007年6月までの期間で実施し、2007年7月の楽天バンク@TTB開設に伴い本番運用を開始した。スイッチオーバーが発生するシステムダウンは0件だという。

コンタクトセンターのシステム構成図 コンタクトセンターのシステム構成図

 「変化に対して強いシステムが必要だったため、カスタマイズできることが前提でした。システムを構築するに当たり、業務プロセスやワークフロー全体を見ることを心掛けました。おかげで当初の予定通りのシステム構成ができたと思います。CICはオープンベースを採用し低コスト、短時間で開発が可能なほか、あらゆる機能が簡単に操作できるため、例え業務範囲が広がっても1人でメンテナンスを行えることが利点です。少人数でシステムを運用しているので助かります」(堀内氏)

低コストでコンタクトセンターを次々に構築

 操作の簡便性という点でいえば、使う側つまりコンタクトセンターのオペレーターにも評価が高い。楽天バンク@TTBのコンタクトセンター運営業務を担当する、もしもしホットラインのマーケティング第一本部第二CS事業部でチーフリーダーを務める夏井陽子氏は「操作画面は分かりやすいインタフェースで個別にカスタマイズ設定も可能なので、経験の浅いオペレーターでも簡単に作業できます。操作で苦労することはほとんどありません」と語る。

 広がるコンタクトセンター業務に合わせて規模を拡張できるのもCICの特徴となる。PCサーバをベースにしたソフトウェア製品であるため、サーバ容量を増やせば容易に拡大できる。楽天フィナンシャルソリューションはCICの余剰キャパシティを活用して、今後はグループ他社のコンタクトセンターも運用する予定だという。数千席レベルのコンタクトセンターを構築しようとするとそれなりのコストが発生するが、CICは低コストでそれを実現できるというわけだ。

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