PCレスで暗号化した紙文書を復号化する新技術、富士通研が開発機密文書の安全な閲覧に利用

富士通研究所は、暗号化された紙文書を携帯電話のカメラで復号化する新技術を開発。2010年度の製品化を目指す。

» 2009年05月12日 11時37分 公開
[國谷武史,ITmedia]

 富士通研究所は5月12日、暗号化した紙文書を携帯電話のカメラを使って復号化する技術を発表した。外出先で重要な書類を安全に閲覧するといった利用ができるという。

 同研究所は、2008年6月に紙文書を暗号化してスキャナとPCを用いて復号化する技術を開発。今回はスキャナやPCを使用しなくても復号化できることを目的に、携帯電話へ独自開発した画像処理ソフトウェアを搭載して実現した。

携帯電話で復号化した様子。上下のモザイク部分は暗号化した場所で、カメラのマーカーを合わせると復号化する

 携帯電話などのカメラで復号する場合、従来は撮影時の手振れや歪みによって画像を正しく認識できず、何度も撮影と処理を繰り返す必要があった。今回の技術は、暗号化する際に事前にカメラでの撮影に耐える処理を行う。さらに端末側で複数の画像を撮影し、画像フィルタを用いて認識できない画像の破棄を行うことで、認識可能な画像の処理時間を高速化した。

 処理できる画像を得られるまでに5回の撮影を行った場合、従来は復号に30秒程度かかっていたが、今回の技術を利用すれば6秒程度で済むという。携帯電話以外にも、200dpi程度の解像度を持つ画像認識装置であればこの技術を応用でき、例えばUSB型カメラをPCに接続して使うこともできるという。

復号化を高速に行う仕組み

 これにより、暗号化した機密書類を外出先で安全に閲覧したり、スキャナやPCのない場所や相手に暗号化した機密書類を提供するといった利用ができる。証明書の改ざんを検知する手段や、QRコードのように紙に印刷して携帯電話で情報を読み取るといった使い方も可能になる。

 なお、実用化には復号できる権限をユーザー単位で管理する仕組みやソフトウェアの配布方法といった課題もある。主席研究員の伊藤隆氏は、「パスワードなどを使って、ユーザーごとに復号できる領域を制限するなどの仕組みも必要」と話す。

 同研究所では今後、処理時間の高速化や画像品質の向上などを図り、今年度内の実用化と2010年度の製品化を計画。当初はNTTドコモ向けに供給する携帯電話への搭載を予定している。

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