パーソナルBI入門 第三回 ExcelのグラフでBIを極めるこれからのビジネスマンに必須のツール(2/2 ページ)

» 2009年05月26日 07時00分 公開
[米野宏明(マイクロソフト),ITmedia]
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「データマイニング」は仮説を作るための道具

 ところで、使用条件が限られるので詳細な説明はしないが、もしSQL Server 2005または2008(ともにStandard Edition以上)へアクセスできる環境にあれば、Excel 2007用の無償ダウンロードツール「データマイニング アドイン」を使って、仮説そのものを自動的に作ることができる。これはExcelのテーブルを、SQL Serverのマイニングエンジンを利用して解析し、その結果をExcelに表示してくれるツールだ。

 データマイニングとは、大量のデータの中に存在する規則性を確率的に推測する技術だ。購入履歴と属性から顧客をグループに分類したり、季節変動などを加味して将来の販売金額を予想したり、顧客が同時に購入する可能性の高い商品を発見したり、といったことができる。つまり先ほど散布図に線や丸を描いた行為を、科学的かつ自動的にやってくれるのだが、データ量が多くないと結果が粗くなるので注意が必要だ。オンラインでもお試しいただけるようになっているので、興味があればぜひ。使い方やアルゴリズムはマイクロソフトのBIブログでも紹介している。

Step 4. 何が起きているかを推測し意思決定する

 仮説を検証してみないことには意思決定できない。この層に起きている動きを掘り下げ、仮説の裏を取るのだ。分析には先のピボットテーブルを使う。

 ピボットテーブルのフィルタ項目に購入年を、行ラベルに子供の数、列ラベルに年収、値に購入金額の平均を入れ、購入年を2009年に絞り込んでみる。Excel 2007ならさらに、値を全部選択して「条件付き書式」の「カラースケール」で値の大きさの分布を視覚的に表現する。これを見ると、年収500万近辺の成績が悪く、さらにその中でも子供の数が増えるほど調子が悪そうである。

購入金額の平均の値が小さくなるほど緑→赤に色づけされる

 今度は年収をフィルタ項目に移動し、列ラベルに自動車所有台数を追加、年収500万〜1000万を複数選択して絞り込む。車の台数との関係は緩やかながらも、子供の数が多い顧客では、所有台数が1台の場合が最も数値が悪い。ほかにも影響しそうな属性があれば同様に行列に置いてみて、相関を確認してみよう。

自動車保有台数を追加。G7セル(保有1台)の成績が最も悪くなっている

 なおExcel 2007でない場合は、ピボットテーブルからピボットグラフを作る。デフォルトでは棒グラフになると思うが、おそらく面グラフのほうが見やすい。少し読み取る努力が必要ではあるが、色の代わりに高さや面積で見れば結果は同じだ。

 今回はシンプルな例だったが、もちろん顧客属性の種類が多いほうが分析パターンは増え、精度の高い分析ができる。ただしあまり多過ぎても把握しきれなくなるので、感覚的にはせいぜい20属性ぐらいが限度だろうと思う。

 これらのテーブルやグラフは、比較しやすいようにその都度、まとめ用シートに貼りつけておこう。ただし普通に貼りつけると元のテーブルと連動してしまい、いつの間にかデータやグラフの形が変わっていることにもなりかねないので、値や絵として貼り付けたほうがよい。このシートでさまざまなパターンを俯瞰し、もっともらしいものを選ぶ。例えば幾つかのテーブルやグラフを見比べてみた結果、年収500万〜1000万レンジのグループの中では、子供の数が3〜4名、かつ自動車所有台数の少ない顧客で特に平均購入金額が下がっている(これが赤い丸で囲ったグループの特徴)ようだ、と結論付けたとする。商品ごとの売上データなどを併せると、「不景気の影響で遠出の機会を減らさざるを得なくなった家庭が、アウトドアで利用する特に子供向けのスポーツ用品の購入を控えた」という姿が浮かんでくることになる。

 売上減少はたった1つの理由によるわけではないので、選択に悩むこともあろう。誰が見ても明らかな分析結果が出るとは限らないので、打ち手の効果に確信が持てないことも多い。だが多くの手を打てば当然コストがかかる。まずは、ビジネスインパクトが大きく、かつ手っ取り早く始められるところから選択し、できるだけ早くその効果測定を行って、続けるのかほかに手を出すのかを判断すべきだ。

 今回は誌面が限られているため、分析のパターンをわずかしか紹介できなかった。データを使った整合性のとれた分析ステップやテクニックに関する話は、マイクロソフトのBIブログなどでの紹介に譲りたい。分析のストーリーも正直相当強引だとは思うが、初歩的なテクニックしか使っていないので、身近なデータでも気軽にお試しいただけると思う。本稿を通じて、BIは小難しいものではないことさえ理解いただければありがたい。慣れてくるほど、どんどん知的好奇心が刺激されるはずなので、これを機会に、ぜひBI力に目覚めていただきたい。

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