IT用語はウチュウ語?――新人研修に思う悲しき女子ヘルプデスク物語(1/4 ページ)

4月からの数カ月は、企業にとって新人研修シーズンです。今回はそこで起こる「コトバの行き違いあれこれ」のお話――。

» 2009年06月09日 08時00分 公開
[鐙貴絵,ITmedia]

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 「何でわたしが新人教育しなきゃいけないのよお〜!」

 ここは間違いなくわたしの部屋なのだが、この言葉はわたしの口から出たものじゃない。わたしの友人、K子が「吐いた」……もとい、K子が「漏らした」ものだ。当のK子は、さっきまでは間違いなく理知的なことで通っている人物だったが、いまは野生の大トラに変身してしまっている。いや、飲ませたわたしも悪かったのかもしれない。でもY子といい、わたしの友人はどうしてこう、酒を飲むとタチの悪いヤツが多いんだ!?

それを教えるのがアンタの役目!

 K子は、大手メーカーの情報系子会社に勤務しているSEだ。そういえば、去年も新人研修の延長でOJTの担当をしていた。その時も「新人指導って、なんだか新人にパワーを取られるう!」と叫んでいたっけ……。しかも今年は、外部講師を使った新人研修をすべてキャンセルし、社内の人間だけで行なうことになったらしいのだ。不景気のイマドキには珍しい話ではない。しかし技術職人に新人の研修を担当させるのって大変だと思うんだけどな。だって普段、自分たちが当たり前のようにやっていることを何も知らない人たちに教えるのは、とても骨の折れることなのだから。サポートの仕事をしているわたしには、痛いほどよく分かる。

わたし で、いつから担当するの?

K子 先週から始まっているんだけど……。日本語が通じないったらありゃしないよのよお。今時の若いもんったら。

 K子、お前いくつだよ……。そう思いながらも、彼女がカラになったグラスを差し出すものだから、ついうっかりビールを注いでしまった。すっかりオヤジになってしまっているK子を、これ以上酔わせてどうする。悪酔いする前に(もう遅いか?)しゃべらせることにしよう。

わたし 日本語が通じないって、どういうこと?

K子 そうねえ。例えばさ、「“プロパティ”画面を出して」って言ったのに、指示通りにしない新人が多かったのよー。聞いたら「プロパティなんて知らないし、どこから出すのかも分かりません」だって! プロパティを知らない上に、質問もしやがらないのよね……。ああ、それに、「“オブジェクト”が分からない」とか言い出すしさ。あと、「URLを入れろ」って指示しても、きょとんとしているし!

 おいおい。日本語をしゃべってないのは、あんたのほうだよ。

わたし その新人ってさ、理系の学部卒とか、情報処理系の専門学校を出た人とかが多いの?

K子 んー、そういうところの出身学生も少しはいるけど、ほとんどが文系の学生だったみたい。だから話が通じないのかも。プリンタ設定もこっちでやるのが面倒だから、研修と称してやらせちまえって思ったんだけど、「IPアドレス入力して」って言っても通じないし!

 K子よ、それを教えるのがあんたの役目だろうが。「もたつく」とか言っている場合じゃないと思うぞ。しかし、酔っ払いのK子に説教しても仕方がない。ここはすっきりと全部吐き出していただくことにした。K子は話したいだけ話すと、わたしの部屋だということも忘れて寝てしまった。やれやれ。

 こうして、わたしの「花の金曜日(って死語ですね)」の夜は、静かに? 過ぎて行ったのである……。

イラスト:本橋ゆうこ イラスト:本橋ゆうこ
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