iPhoneはついに「企業向け」になった

初代iPhoneには企業向けの機能はほとんどなかった。だが3代目の3GSで、ついにBlackBerryのような企業向けスマートフォンと張り合えるようになった。

» 2009年06月25日 07時30分 公開
[Don Reisinger,eWEEK]
eWEEK

 Appleがここまで来るのに3年と3世代かかったが、iPhoneはついに企業分野でResearch In Motion(RIM)と張り合う準備ができたようだ。iPhone OS 3.0は、これまでiPhoneで見てきた中で最も企業にうれしい機能を幾つか備えている。さらにデザイン、アプリケーション、フル機能のユーザー体験に焦点を当てていることから、今後、企業分野の主要プレイヤーとなるだろう。

 もちろんRIMがそれを喜ぶわけはない。同社は現在、法人市場をリードしており、他社との競争もあまりない。同社の2009年の年次報告書によると、「法人市場は依然としてRIMの事業にとって非常に重要」という。17万5000を超える組織がファイアウォール内でBlackBerry Enterprise Serverを使っていると同社はこの報告書で主張している。同社の顧客基盤が最も好調に拡大しているのは、政府、司法、医療、教育セクター。さらに過去1年間に発売したBlackBerryの新機種2種――BlackBerry BoldとBlackBerry Storm――が追い風となり、同社は他社を引き離している。

 だがそれで十分だろうか? Appleはゆっくりと、だが確実に、iPhoneを進歩させている。2007年に最初にリリースされたとき、iPhoneには企業向けの機能はほとんどなかった。昨年のiPhone 3Gでは高速ネットワークに対応し、開発者が企業向けアプリを作れるApp Storeがオープンした。だが、企業が注目するようになったのは、iPhone OS 3.0が発表されてからだった。同OSはプッシュ型の電子メール、予定表、アドレス帳、Exchangeサポート、コピー&ペースト、Spotlight検索、音声メモ、改良版の予定表を備えている。従来よりも優れたソフトウェアパッケージになった。

 AppleがiPhone 3GSをリリースすることも、RIMにとってはありがたくないだろう。同製品は、現行版のiPhone 3Gの2倍速いと言われている。それに価格も比較的手ごろ――基本的なモデルで199ドル――だ。iPhone 3GSは最も魅力的なiPhoneだと言っても言い過ぎではない。

 だが、iPhone 3GSはどれだけ魅力的なのだろうか? このモデルが企業にとってなぜ最高の選択肢なのかをもうちょっと掘り下げてみよう。

新機能

 BlackBerryと企業向けサポートがどうだろうが、新しいiPhone OSにはプッシュ型電子メール、予定表、アドレス帳が備わっており、旧バージョンよりも魅力的になっている。Exchangeサポートのおかげで、iPhoneを採用する理由を見出す企業は増えるだろう。だが、iPhoneは企業にさらに訴求する機能をやっと手に入れた。それはテザリングだ。

 テザリングは、しばらく前からほとんどのBlackBerryで一般的な機能となっていた。自分のスマートフォンをUSBでPCにつないで、PCからWebに接続できるようにする機能だ。ビジネス世界の多くの人が、仕事をするためにこの機能を必要としている。iPhoneの旧モデルではこの機能がないことが目に付いていたが、最新のiPhone OSではこれが使えるようになった。企業が注目するのは確実だ。

App Store

 RIMがBlackBerryで何年も前から提供してきたのと同じような体験を、iPhoneが提供できるようになったことに議論の余地はない。しかし、だからといって必ずしも魅力が増したというわけではない。新版iPhone OSの機能は、RIMが既に提供している機能とよく言って同等だ。それを考えると、企業が次にどのデバイスを使うかを決める前に、iPhoneの魅力を高める特徴に気付いてもらう必要がある。その魅力が最も明確に見えるのがApp Storeだ。

 RIMにはBlackBerry App Worldという比較的新しいアプリストアがある。このストアは拡大しているが、現時点では、どの水準でもApp Storeに及ばない。Appleが先にWorldWide Developer Conferenceで行った基調講演によると、同ストアには現在5万種類を超えるアプリがある。無料のものもあれば、有料のものもある。「Business」カテゴリーを見てみると、57ページにもわたってアプリが並んでいる。何らかの形で企業に訴求するiPhoneアプリは1000種類以上ある。わたしの経験では、こうしたアプリの多く(QuickOfficeなど)は企業には理想的だ。

 RIMがBlackBerry App WorldのアプリでBlackBerryを強化できる以上に、App StoreはiPhoneの機能を拡張する。これはRIMにとっては現実の問題であり、Appleにとっては真のアドバンテージだ。

価格

 RIMのBlackBerryは高価だ。BlackBerry Boldは2年契約付きでも249.99ドル。BlackBerry Stormは199.99ドル。iPhone 3Gの99ドル、iPhone 3GSの基本価格199ドルと比べてみてほしい。それにこの価格で、iPhoneを使う方がBlackBerryよりもずっと多くのものを得られることがすぐに分かるだろう。コンシューマーは既にそれを知っている。企業がそれを見出すのに、どのくらいかかるだろうか?

 きっとそう長くはかからないだろう。iPhone OS 3.0がリリースされ、iPhone 3GSが発売され、企業はようやくiPhoneに乗り替えるのに必要なソフトを手に入れた。容易ではないし、問題も起きるだろうが、iPhoneが企業の未来であることは確実だ。RIMやライバルたちは気をつけた方がいい。

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