米国デジタルサイネージ事情――トレンドを追うデジタルサイネージ最前線(3/4 ページ)

» 2009年07月19日 08時00分 公開
[榎本瑞樹,ITmedia]

スタートアップ企業から学ぶトレンド

 本格化するデジタルサイネージの今年のトレンドとして、(1)デジタルサイネージとモバイルによるインタラクティブ(双方向)化、(2)デジタルサイネージ、モバイル、インターネットを連携したクロスチャネル化、(3)顔認識、行動分析などの視聴者・効果測定――の3つが出てくる。ここでは海外でデジタルサイネージ事業を展開する3社のスタートアップ企業の取り組みを取り上げ、どう流行するかを見ていこう。

デジタルサイネージとモバイルによるインタラクティブ化

 トロントに本社を置くiSign Mediaは、インタラクティブ・モバイル広告をリテール中心に展開している。店内に配備したタッチパネルの側を通ると、Bluetooth技術によってモバイル端末IDを映し出す。画面上のOKボタンをタッチすると、クーポンや動画広告を配信する仕組みだ。

 家電量販店の場合、テレビ、冷蔵庫、PCなどの広告を順番に配信する。自分が探しているカテゴリーのみクーポンを受け取り、それ以外を断ることも可能だ。ユーザーごとの趣味や嗜好をBluetooth IDで識別し、データベースに情報を蓄積しているので、次の来店時にはより効率のいいパーミッション・マーケティングを展開できる。

 CEO(最高経営責任者)のアレックス・ロマノフ(Alex Romanov)氏は「ベスト電器シンガポール店では、3カ月間で来場者の15%、150万人からのレスポンスがあり、売り上げは2倍に伸びた」と話す。紙媒体の広告では1%程度、テレマーケティングでも3%程度のレスポンスがあればいいところ。15%は驚異的な数字である。

デジタルサイネージ、モバイル、インターネットへのクロスチャネル化

 ボストンに本社を構えるLocaModaは、インタラクティブ・デジタル・メディアに特化したDOOH配信のプラットフォームを展開している。同社の「Jumbli」と呼ぶ言葉遊びのゲームは、ニューヨークのタイムズ・スクウェアやレッドソックス本拠地であるフェンウェイ・パークの巨大スクリーンなど、全米各地のレストランやバーに設置した1200台以上のディスプレイで楽しむことができる。

 ユーザーは、携帯電話からスクリーンに向かってテキストメッセージ(SMS)を送信すると、ゲームに参加できる。ディスプレイを見るユーザーに、企業のブランド広告やキャンペーン告知を流す仕組みだ。さらに2億人超のユーザー登録数を誇るSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)の「Facebook」からも参加できる。

 CEOのステファン・ランダル(Stephen Randall)氏はコンテンツの魅力を「ルールが分かりやすく、少し頭を使うようなゲームを考える必要がある」と語る。デジタルサイネージと携帯電話、そしてインターネットを融合し、クロスチャネル化することで、数多くの視聴者にリーチできる媒体が生まれる。

LocaModaのデジタルサイネージ LocaModaのデジタルサイネージ

顔認識、行動分析技術による効果測定

 トロントに本社を置くCognoVision社は、顔認識技術による視聴者測定と行動分析のサービスを提供している。LCDに埋め込まれたカメラの映像から、視聴者数や視聴時間、年代などの情報をリアルタイムに測定する。各設置場所から集めたデータは、前述のOVABが策定したガイドラインに即して分析。視覚的に表示できるという。

 ビジネス・ディベロップメント・ディレクターのハルーン・ミルザ(Haroon Mirza)氏によると「高級スーパーのWhole Foodsでの実証実験ではいい効果が出た」と話す。テレビ視聴のニールセン、WebのGoogle Analyticsと並んで、この分野の一人者を狙っている。

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