コラム
» 2009年09月27日 00時30分 UPDATE

日曜日の歴史探検:エネファームは鳩山首相の秘蔵っ子になるか?

鳩山首相が気候変動サミットで、2020年までに1990年比で25%削減という日本の温暖化ガス削減目標を表明し、世界の注目を集めましたが、果たして本当に実現可能なのでしょうか? 家庭部門ではエネファームが鍵を握りますが、産業界との調整難航は必至です。

[前島梓,ITmedia]

 鳩山由紀夫首相が先日開催された国連気候変動首脳会合(気候変動サミット)で、2020年までに1990年比で25%削減という日本の温暖化ガス削減目標を表明し、温暖化ガスの国際的な議論を主導する姿勢をみせました。一国の首相がこうして明言したわけですが、なぜここまで注目されているのでしょうか。

 2008年、京都議定書の第一約束期間が始まり、日本国内でも温暖化ガス削減の取り組みが本格化しているのはこれまで述べてきたとおりです。環境省が2009年4月に発表した2007年度の温室効果ガスの総排出量は13億7400万トン(二酸化炭素換算)で、前年度比で2.4%増え、過去最大の値となっています。これは京都議定書の基準年である1990年の総排出量(12億6100万トン)を9%上回る値です。仮に議定書の6%削減を達成しようとして、森林吸収源対策で3.8%、京都メカニズムで1.6%確保したとしても、9.6%の排出削減が必要になるわけです。いわんや25%削減となると相当難しい課題であり、産業界との調整が難航することは必至でしょう。

 鳩山首相は、「(25%削減は)日本の科学技術力なら決して不可能ではない。十分自信はある」と言明しているようですが、ここでいう科学技術力の根拠となるものをわたしたちは吟味しなければなりません。2008年3月に経済産業省が策定した「Cool Earthエネルギー革新技術計画」によると、「重点的に取り組みエネルギー革新技術 技術革新ロードマップ」として21技術が制定されていますが、その1つがエネファームであり、家庭部門からの温暖化ガス削減の要として注目されています。

 同じく2008年7月に開催された北海道洞爺湖サミットでは、「ゼロエミッションハウス」の中で、家庭用FCが実機運転され、その技術力と存在感をアピールしてきました。そして、2009年に入り、エネファームとして販売が開始されたわけです。

余剰電力の扱いが鍵か

 すでにエネファームについては数多くのテレビCMなどを目にするようになってきましたが、今後、家庭部門での温暖化ガス削減に向けてエネファームはますます存在感をアピールするでしょう。しかし、現段階では、エネファームを設置したユーザーがその投資を回収することは困難というのが共通認識です。2012年ごろには登場するであろう第2次実用機は、量産効果によるコストダウンも進みますので、温暖化ガス削減と家計の両面から検討するに値するものになるでしょうが、それでも50万円前後の負担で購入できるようになるには技術的なブレイクスルーが必要でしょう。

 こうして考えると、現時点でのエネファームの普及には太陽光発電(PV)とのダブル発電が欠かせないシステムとなるでしょう。国は太陽光発電の余剰電力購入メニューの倍額での買い取りは2010年から実施する予定ですが、エネファームなどの自家発電設備を設置することでPVからの発電が押し上げられる効果について、その余剰電力の範囲や策定法などが話し合われています。

 大阪ガスによると、ダブル発電による年間の二酸化炭素排出量は、PVでのオール電化と比べ70%の削減に、一次エネルギーは45%削減につながるとしています。ダブル発電では、ベース電源となるFCで自家発によるPVの押し上げ効果を余剰電力の定義の中でどう位置づけるかが課題です。現時点ではFCからの発電は電力会社による系統電力への逆潮流を認めておらず、自家発での利用としてPVでの押し上げ分を電力会社がいくらで買い取るのかが注目されます。

 ダブル発電に対し、電力会社の立場を考えると、余剰電力を自主的に購入し、しかも(余剰電力購入メニューの)倍額での購入を認めるとして、さらに押し上げ効果まで承認するとなると火力発電などの設備維持にもかかわってくるため、認めたくないのが本音ではないかと思います。しかし、分散型の高効率電源となるFCを自家発だけに限定してしまうと、家庭から排出される二酸化炭素の排出削減効果と発電の高効率化から考えるに、いかにも場当たり的であり、かえってFCの普及を阻害することになってしまいます。

 一方、発電効率がPEFCより高いSOFC(『エネファーム、覚えておきたい3大勢力』参照)が家庭用や集合住宅用向けに2011年以降から実用化のフェーズに入る可能性も十分あります。先行する京セラはトヨタ自動車や大阪ガスらと共同で実用化時期をにらんだSOFCの開発に入っています。もし仮にSOFCが家庭に入ってくると、ダブル発電どころか、SOFCだけで家庭で利用する電気のほとんどをカバーでき、それこそ押し上げ効果などといった議論ではなくなってしまいます。

 つまり、エネファーム普及の鍵は、その価格ももちろんですが、余剰電力の範囲や算定方法をどう扱うかによって大きく変わることになります。鳩山首相の発言を受けて、産業界がどういった答えを出してくるのかが注目されます。

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