クラウド時代のデータベース新潮流

クラウド時代のデータベースを考えるクラウド時代のデータベース新潮流(1/3 ページ)

クラウドコンピューティングがバズワードの域を超え、IT業界の新しい潮流として認知されはじめている。このキーワードを企業はどうとらえればいいのか。技術の観点から考えてみる。

» 2009年10月27日 08時00分 公開
[生熊清司(ITR),ITmedia]

クラウドコンピューティングとは

 クラウドコンピューティングは、現在IT業界において最も注目されているキーワードといえる。Googleで「cloud computing」を検索してみると2870万件ヒットがあり、「RDBMS」の380万件を大きくしのぐ結果となっている。既に多くの方はクラウドコンピューティングに関する情報を得ているとは思われるが、ここで、クラウドコンピューティングに関する現状を簡単におさらいをしておく。

 クラウドコンピューティングは、XaaSつまり、SaaS、PaaS(Platform as a Service)、HaaS(Hardware as a Service)といった最新のITサービスを包括的に表現した言葉であるが、バズワードであるという意見もあれば、「ユーティリティコンピューティング」の焼き直しにすぎないとの意見もある。しかし、関連企業であるSalesforce.comの2009年度の売上高(2009年1月31日締め)が10億ドルに達したというビジネス状況を見ると、もはや単なるバズワードとはいえないだろう。

 さらに小売業であるAmazon.comではAmazon Webサービスを立ち上げてHaaSビジネスに参入し、GoogleやSalesforce.comもPaaSビジネスを開始するといった動きにより、新たな収益源にしようとしている。国内でも大手ベンダーが相次ぎPaaSに乗り出した。4月にNECが「クラウド指向サービスプラットフォームソリューション」を発表し、富士通も「Trusted-Service Platform」を発表した。6月には、日立製作所が「Harmonious Cloud」を発表した。

 IT業界の主要なソフトウェアベンダーであるMicrosoftやOracleも急速にクラウドコンピューティングに対する準備を開始したことにある。

 これまでITソフトウェア・ベンダーはクラウドコンピューティングへの対応にどちらかといえば消極的であった。現在のITベンダーは、企業や個人に対してハードウェアやソフトウェアを個別に販売することで売り上げを得ており、顧客がクラウドコンピューティングによって必要なときに必要な量だけのITリソースを調達することが可能になると、これまでに比べて販売量が低下し、売り上げの減少を招く可能性があるからである。

 しかし、GoogleSalesforce.comのビジネスの拡大によって、クラウドコンピューティングは無視できないものとなり、売上減少のリスクを冒しても、クラウドコンピューティングに対応したビジネスを始めるという企業は多い。このような市況から、クラウドは単なるバズワードでなくIT業界の新たな潮流といえる。

 では、クラウドコンピューティングは全く新しい試みなのであろうか。クラウドコンピューティングと既存の技術との関係を見てみると、クラウドコンピューティングはこれまでのユーティリティコンピューティングやグリッドコンピューティングまたはWebサービスの延長線上にあるものであることが分かる。

 Webアプリケーション開発で注目されているRIA(Rich Internet Application)やマッシュアップといったWeb 2.0技術が、WebベースサービスやApp-Components as a Serviceに貢献している。AjaxなどのRIA技術は、ユーザーに操作性や対話性に優れた「リッチな」ユーザー・インタフェースを提供するものである。

 マッシュアップ用のAPIを利用すれば、Webアプリケーション同士を連携させ、新しいサービスを作ることができる。一方、SOAはクラウドとは別の技術であるが、堅牢で柔軟性の高いアプリケーション基盤を構築するという点で、関連する技術といえるだろう。また、下位レイヤに位置するHaaSやPhysical Infrastructure as a Serviceを支えているのは、ユーティリティコンピューティングの中核技術であるグリッドや仮想化である。つまりクラウドコンピューティングは現在の企業システムで利用されている技術の上に成り立っているのである。

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