世界で勝つ 強い日本企業のつくり方

世界で勝つ日本企業の中国攻略法世界で勝つ 強い日本企業のつくり方(2/3 ページ)

» 2009年11月02日 10時00分 公開
[怒賀新也,ITmedia]

ソニーチャイナの挑戦

 では、実際に中国でビジネスをしている企業はどう感じているのか。ソニーの中国法人、ソニーチャイナの永田晴康社長は、PCの「VAIO」シリーズの中国展開について「最低限の在庫を持ち、売れたら補給する」という手法で乗り切ったと話す。例えば、1つの電器店であるモデルの在庫を4台と決めたら、1台売れたらその都度1台を追加補充する。これにより、流通在庫を必要最小限に抑えることができたという。

ソニーが北京で実施したデジタルイメージング商品のアルファ購入者向け屋外撮影体験の様子。アルファ購入者が商品を世に広めてくれるという

 このやり方を1年前からテレビやカメラなどでも活用した。結果として、流通在庫が前年の半分に減った。自社在庫も半減したことで「経営的に非常に良いインパクトがあった」と話す。家電業界では、カメラなどの商品の価格が下落すると店舗や物流経路にある流通在庫の価値も下がるため、その分の補てん金をメーカーが支払うことになっているという。

 「流通在庫が少ないということは、この補てん金の負担も少なくて済む」(永田氏)

 補てん金が少なくて済むことで、すばやい意思決定ができるようになる。「在庫がたくさんあるから次の行動に移れない」といったケースは通常よくあることだという。キャッシュフロー上の効果も高く、金融危機を切り抜けられた要因になった。今後景気が良くなったとしても、この流通モデルは維持していく考えだ。

ソニーの中国ビジネスを支える永田氏

 永田氏は、最近の中国経済の状況について「リーマンショックによる金融危機以降、株価、輸出、不動産取引ともに低調になり、唯一のよりどころは中国政府が8%の経済成長を維持するとアナウンスしたことくらいだった」と振り返る。だが、「成長率が何パーセントであれ、プラスじゃないか。マイナスに陥っている他国に比べればずっとまし。中国経済は復活する」と単純化した考え方で構えた。4〜9月はだめかもしれないが、10月以降は景気が戻ってくるという予測を変えずに、10月実施の予算見直しに臨んだ。

 中国の景気について永田氏は数値を詳しく把握している。GDP(国内総生産)が2008年第4四半期で7%を切り、2009年1〜3月の第1四半期で6.2%、だが4〜6月の第2四半期は8%近くまで戻ってきているという。だが、これは中国政府による4兆元(約60兆円)の投資といった施策によるもので、輸出は戻ってきていない。米国、欧州の景気回復待ちという状況だとしている。

 消費については自動車がけん引しているが、家電については「5%くらいしか伸びていない状況だ。これも悪くない数字だが往時と比べると弱い」。一方で、製品の価格下落によって家電製品を購入する市場のパイが着実に広がっているのも現実だ。

 「テレビは台数ベースでみて対前年で4、5割も伸びている。いまどき台数で4、5割伸びる製品はない。北京や上海といった都心から、郊外の居住者に購入層が広がっている」(永田氏)

 この傾向は、テレビだけでなく、ノートPCなどにも及んでいる。台数が伸びている事実は成長分野である証明であるため、この波にいかに乗るかを常に考えているという。

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