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» 2009年11月18日 08時00分 UPDATE

導入事例:基幹システムを自作してみる――中堅メーカー、東新油脂の場合 (1/2)

一人ひとりが作ったDBが、ボトムアップで全社共有DBへと発展していく――FileMakerのユーザーには、そんなケースも少なくない。東新油脂では、FileMakerを使いこなした社員たちが、最終的に基幹系システムを自らの手で構築するまでに至った。その陰には、社長や工場長といったトップからの支援もあったという。

[岡田靖,ITmedia]

 1950年に設立され、間もなく60周年を迎える東新油脂。同社は印刷インキや塗料の原料となるワニス、印刷インキ用補助剤などの専門メーカーで、特にオーダーメイドのワニス生産を得意としている。例えば試験的生産や、現在では利用頻度の少なくなったレシピなどにも対応、顧客の要望に応じて多彩なワニスを提供しているのだ。印刷インキや塗料だけでなく、電子分野や化粧品分野など、これまでにない特殊な用途でも、同社の製品が使われることがあるという。

 また、同社は品質管理にも力を入れており、2003年にはISO9001の取得も果たした。事業拠点は足立区梅田の本社と、八潮工場および筑波工場の3カ所で、従業員約100名という規模ながら、オーダーメイド生産に対応する体制や高度な品質管理体制によって“ワニスのスペシャリスト”としての地位を確立、大手メーカーにない強みを発揮して、着実に成長を続けている。

検査台帳から利用を開始したFileMakerが、全社共通DBへ

東新油脂 製造部 品質管理課 川村忠弘係長 東新油脂 製造部 品質管理課 川村忠弘係長

 東新油脂は現在、ほぼ全社的にFileMakerを活用しているが、その先駆となったのは、“スペシャリスト”としての役割を果たす上で重要となる「品質管理業務」だった。同社製造部 品質管理課 川村忠弘係長は、FileMakerを使い始めた当初の経緯を、次のように話す。

 「わたしが入社した1992年当時、社内ではまだPCが導入されていませんでした。一方、わたし自身は“白黒時代”からMacに触れていて、自分でもColor Classicなどを買って使っており、当時のほかのPCより使い勝手の点で優れていると考え、周囲にそのことを広めつつ、Macに付属していたClarisWorksで、事務作業をしていたのです。そしてMacWorld ExpoでFileMakerの存在を知り、まずはメモ帳的に使い始めました。最初に作ったDBは検査台帳。製造した製品ごとに物性値を検査し、その結果を管理するためのものです」

 そこから徐々に、ほかの社員もFileMakerを使うようになっていった。技術系の別の社員が、今度はワニスのレシピの管理を始めた。さらに、このレシピDBと川村氏の検査台帳DBとが、品名をキーとしてリレーションし、どんどん連携も広がっていく。

 「それぞれが個々の業務で扱うデータを管理するためにDBを作っていったのですが、ひも付けすることで、元の目的より利用範囲が広がりました。こうなってくると、個々のPCにDBを入れておいたのでは効率が悪く、サーバを設置して全員が共通して使えるDBへと発展させることとしました」(川村氏)

 続いて、ほかの部署でもFileMakerを使うようになった。営業部ではOfficeアプリケーションを使うためWindowsが主流となっていったが、顧客管理や販売管理のDBを作り、やはり皆で共有して業務に役立てていく。こうしたDBをサーバで共有するようにした結果、ほかの工場からも利用されるようになっていった。

 「当時、利用できたのはフレームリレーの128Kbpsといった遅い回線でしたが、それでもFileMakerは、さほどのストレスを感じさせず使えます。こうして、全社共通DBとして、どこからでも同じ帳票で出力できるようにしていきました」(川村氏)

社長や工場長の後押しで、業務を知り尽くした社員たちが基幹系開発に

 そこからの展開が、興味深い。FileMakerを使いこなした社員たちが集まって、独自の基幹系システムを開発するようになっていったのだ。その背景には、既存システムに対する不満があったと川村氏は話す。

 「当社の業務内容は、ちょっと特殊な分野。パッケージソフトが適合しにくい業務なのです。これまでは基幹系システムの開発を外部に委託していたのですが、パッケージが使えず、ほぼオーダーメイドとなるので、数千万円ものコストが掛かっていました。しかも、わたしたちの業務をきちんと伝えているつもりでも、なかなか業者に伝わっておらず、カネと時間がかかる割には良いものができてきません。出来上がったシステムが気に入らないといっても、修正するにはさらに追加のカネと時間が掛かってしまいます。しかし、業務を知り尽くしたわたしたちが作れば、そういった問題は生じません」

 一方で不安もあった。何人もの社員がFileMakerを使いこなしているとはいえ、システムの専門家は1人もいない。数千万円を払っていたほどのシステムを、果たして自分たちの手で作り上げることができるのか。それでも東新油脂は、あえて取り組むことにした。

 「幸運だったのは、社長や工場長がFileMakerを理解していることでしょうか。社長はヘルプなどを見ながら自分でDBを作って財務や人事データを管理しており、『とっつきやすいが、奥が深いソフト』だと評価しています。工場長も、叩き上げの人物ですが、私たち部下が作ったDBを認め、評価してくれています」(川村氏)

 社長が、FileMakerで販売管理システムを作れないか? と直々に相談をしてきたことで、プロジェクトがスタートすることになった。基幹系システム開発プロジェクトには、川村氏を筆頭に、FileMakerを使いこなした社員たちが各部署から集まってきた。中心となったのは6名ほどだという。

 「好奇心のある人が立ち上げメンバーになった、という流れです。それぞれの担当業務は製造、販売から財務などに至るまで多様で、結果として社内の業務を網羅する人員が集いました」(川村氏)

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