次世代スパコン事業継続への必須条件Weekly Memo(1/2 ページ)

政府の行政刷新会議による事業仕分けで事実上の「凍結」と判定された「次世代スパコン」について、文科省が先週11日、方針変更したようだ。求められるのは一層の説明責任だ。

» 2009年12月14日 09時01分 公開
[松岡功ITmedia]

事業継続を優先する策に出た文科省

 政府の行政刷新会議による事業仕分けで事実上の「凍結」と判定された次世代スーパーコンピュータ(スパコン)技術の開発事業について、文部科学省が先週の12月11日、「計算速度世界一」などの目標を見直し、予算折衝に臨む方針を固めたようだ。

 一部報道によると、方針変更した事業計画案では、1秒間に1京回(10ペタFLOPS)という計算速度の目標は変えないものの、当初予定していた2012年の完成にはこだわらず、利便性の高いスパコンの技術開発を目指すという。

 文科省では2010年度の概算要求で268億円を計上した次世代スパコン事業費について、仕分けの結果をどのように反映させるか協議してきたが、現状のままで事業を推進するのは難しいと判断。開発スケジュールに柔軟性を持たせた上で事業を継続するという方針変更を同日、菅直人副総理・国家戦略相らに伝えたもようだ。

 その2日前の先週9日に開かれた政府の総合科学技術会議では、2010年度の科学技術予算で優先配分を求める政策が議論される中で、次世代スパコン事業については「確実に推進すべきだ」と評価。「科学技術の最も重要な研究開発分野だ」との声も上がる中で、議長の鳩山由紀夫首相は「予算に十分反映できるように努力したい」と述べた。

 ただ、行政刷新会議の事業仕分けにおいて事実上の凍結判定を受け、開発続行を疑問視する世論もあることから、総合科学技術会議は「国民の理解を得るための改善を行って推進すべきだ」と判断。省庁間や産官学の連携強化や、次世代スパコンが担う研究分野および利用者の明確化、技術や産業の観点から国際競争力のある戦略を示すことが必要だとした。

 総合科学技術会議が「確実に推進すべきだ」と評価し、鳩山首相も予算の見直しを示唆したことから、予算復活の可能性が出てきた次世代スパコン事業だが、どうやら文科省は総合的な情勢を踏まえたうえで「事業継続」を優先させるために方針変更を図ったとみられる。

 結果的に268億円という2010年度の概算要求額がどうなるかは、まもなく結論が出るが、この事業は開発総額1230億円におよぶ一大プロジェクトである。その全体計画を継続するための何らかの判断があったものと思われる。

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