クラウドサービス 進化の予兆Weekly Memo(1/2 ページ)

2010年、ITトレンドとして最も注目されるのは、やはりクラウドコンピューティングだろう。昨年末、そのさらなる進化の予兆を感じた2つの出来事があったので紹介したい。

» 2010年01月05日 09時25分 公開
[松岡功ITmedia]

クラウドをプロフィットセンターに

 まず1つは、ネットワークソリューションプロバイダー大手のネットワンシステムズが、2009年12月22日に開いた事業説明会でのクラウドに関する話である。同社の吉野孝行社長があいさつの中で、こんなエピソードを披露した。

 「つい最近、金融機関のお客様と話していて驚いたことがあった。というのは、自らの企業グループに向けたプライベートクラウドの構築に取り組んでいるそのお客様が、次のステップとして、構築したクラウド環境をベースにパブリッククラウドサービスに進出しようと真剣に考えていたからだ」

事業説明会に臨むネットワンシステムズの吉野孝行社長

 「日本でのクラウドの普及は、ITベンダーによるSaaSをはじめとしたパブリッククラウドサービスが先行し、大手企業が中心となるプライベートクラウドの実現はまだ2年ないし3年先になるだろうと見ていたが、その推測は違っているかもしれない。プライベートからパブリックへと自らのサービスを展開することによって、クラウドを早期にコストセンターからプロフィットセンターに転換させようと考えている大手企業が少なくないようだ」

 こう語った吉野社長は「そんなアグレッシブなお客様を引き続きご支援できるよう努めていきたい」と力を込めた。

 さらに、そうしたクラウドの今後の利用形態におけるインテグレーションについて、同社の荒井透取締役がこう説明した。

 「大手企業が構築するプライベートクラウドのリソースは、それまでの80%程度で済むようになる。足らなくなれば、パブリッククラウドから調達すればいいからだ。そうしたハイブリッド型のインテグレーションがまず発生する。一方で、通常使用するリソースは全体の50-60%だと考えられるので、80%からみても20-30%の余裕がある。今後はこれをパブリッククラウドやほかのプライベートクラウドに貸し出すようなインテグレーションも出てくる」

 「中小企業の場合は、個々の業務に合わせて複数のパブリッククラウドサービスを利用するケースが多くなるが、そこで必要になってくるのが異なるクラウド間のデータ融合。そのためのインテグレーションが求められるようになってくる」

 この荒井取締役の説明で興味深いのは、プライベートクラウドで余裕のあるリソースを貸し出すという発想だ。これも大手企業にとっては、クラウドをコストセンターからプロフィットセンターに転換する一手となる。こうなると、クラウドサービス市場の構図は大きく変わってくるだろう。

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