2010年のトレンドはスマートフォンと回線の効率化――TMTの業界予測

Deloitte Touche TohmatsuのTMTグループは2010年の通信業界予測リポートを公開。スマートフォンや通信回線の効率的な利用がトレンドになると分析している。

» 2010年03月02日 16時43分 公開
[ITmedia]

 有限責任監査法人トーマツが提携するDeloitte Touche TohmatsuのTechnology, Media & Telecommunications(TMT)グループは、このほど通信業界の2010年の動向予測をまとめたリポート「Telecommunications Predictions 2010」を公開した。スマートフォンや通信回線の効率的な利用がトレンドになると分析している。


「検索フォン」に変わりゆくスマートフォン

 2010年末までに検索機能がスマートフォンの最重要アプリケーションの一つになり、将来のモバイルプラットフォームの中心的な役割を担うという潮流がある。2010年のモバイル検索広告市場は10〜20億ドル程度にとどまる見通しだが、モバイル検索プロバイダー間の競争が激しくなり、収益の数倍の投資を行うとみられる。

 開発会社は、音声認識やタッチ方式などの多様なユーザーインタフェースを提供するとともに、地下鉄の移動時など電波が届きにくい環境で検索をした場合でも、電波が届く場所に出たとき検索結果を返すなど利用者の行動パターンに沿った検索のあり方を模索するべきだろう。また、複数のアプリケーションストア間で、目的とするアプリケーションやコンテンツが見つかるような技術も開発していく必要がある。

モバイル・ネットワークの混雑を緩和する方法

 世界のモバイルブロードバンド接続件数が約6億件に達し、ワイヤレス網は“交通渋滞”に悩まされるだろう。このため既存の無線通信網の性能を向上させる通信技術の市場が、IT市場全体の成長率よりも高い30〜40%の伸びとなり、通信事業者同士でネットワークやアクセス網を共有する動きも加速するだろう。また、通話やデータ通信がWiFi経由になればセルラー網の混雑も緩和されることから、WiFi対応機やWiFiのホットスポットの普及促進も検討される。こうした世界的なトレンドは日本も例外ではないが、スマートフォンの普及がモバイルネットワークの負担を重くし、デバイスのWiFi対応の圧力を強めることになる。

通信回線の効率化がもたらすコスト削減と環境問題への効果

 世界の通信セクターはCO2排出量の削減に向けて大きく舵を切る。その大きな理由は、成熟産業である通信市場にとって、通信回線の効率化を進めることがCO2排出量の削減につながり、結果として回線あたりのコスト削減にも効果が高い。例えば大手事業者にとって、CO2排出量の10%削減は経常的に数千万ドルの節減につながるとの試算もある。

 固定通信事業者も携帯通信事業者も、ブロードバンドの従量制課金への移行により過度のネットワーク利用がどの程度抑えられるかを検討するだろう。また、例えば航空会社のコードシェアと同様に、事業者同士でネットワークの共有化を進め、どの程度コスト負担を軽減するかCO2削減に絡めて議論が進むと思われる。

 通信機器メーカーは、携帯電話の電力効率に採用した最新技術をネットワーク設備に活用する一方、引き続きネットワーク自身の効率改善に努める必要がある。またデバイスメーカーとモバイル業界は、充電が完了すれば電源がオフになる充電器の開発や充電器の基準統一などでイニシアチブを発揮し、CO2排出量の削減に引き続き積極的に取り組むことが求められる。

 固定電話事業者は、ネットワークの省エネ戦略として次世代光ファイバ網の導入を検討するだろう。次世代光ファイバ網は現在の銅線網と共存させるより、30〜40%の省エネにつながる見通しで、その事業コストを大幅に低減できる。日本でも光アクセス網の促進が再び話題になり、通信事業者のCO2削減の観点が再編問題の公的な場所での議論も前倒しされ、また通信事業者とCATV事業者などの関係を新しい段階へと進めるだろう。


 このリポートは、Deloitteグループのクライアントや業界専門パートナーおよびマネジャーによる情報提供、業界アナリストとの討論、世界の主要なTMTの企業幹部へのインタビューなどを元に作成したという。

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