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» 2010年08月06日 08時00分 UPDATE

IBMに聞いてみた:「eX5」――独自技術がキラリと光るサーバアーキテクチャ

コモディティ化が進むx86サーバ市場だが、IBMはキラリと光る独自技術で差別化を図る。そのサーバアーキテクチャで実現する機能も、仮想化環境の実運用を見据えたものだという。

[石森将文,ITmedia]

 いわゆる“サーバ”と呼ばれる製品分野は、数十年にわたる歴史とともに、コモディティ化が進んできた。特にx86サーバやIAサーバと括られるジャンルについては、その性格上“ヘテロジニアス”な環境でも同様に使えることが求められ、製品ごとの差別化がいっそう難しくなっている。各ハードウェアベンダーは、自社のサーバ製品を世代ごとに区分し、それぞれに特徴を訴求しようとしているが、導入を検討するユーザーからすると“必要な性能要件さえ満たしていればあとは価格で決める”という場合も多いのではないか。

 だが2010年の春、日本IBMが特徴的なサーバアーキテクチャをリリースした。「eX5」いうその名称は“2001年の第1世代から数えて5世代となるEnterprise X-Architecture”を意味するものだ。同社がこれまで4Uラック型にのみ搭載してきたこのEnterprise X-Architectureも、この第5世代から、ブレードや2Uラックマウントといったフォームファクタへの展開が進んでいる。

 日本IBMでSystem x事業部長を務める小林泰子氏は、eX5発表の場で「コモディティといえるx86サーバ市場においても、IBMの技術でしっかりと差別化していく」と述べた。では具体的に、どのような点でユーザーに特徴を示すのか――日本IBMに話を聞いた。


x3690 X5におけるメモリ接続の仕組み x3690 X5におけるメモリ接続の仕組み(画像クリックで拡大)

 「eX5の特徴は3つの視点から説明できる」と日本IBM システムx事業部の亀本英幸氏は話す。具体的には、メモリスロット拡張ユニットと位置付けられる「MAX5」や、HDDと比べ圧倒的なI/Oを叩き出すフラッシュ型記憶装置「eXFlash」への対応、そして複数のノードで構成されたサーバを、再ケーブリングなどをしなくとも、ノード単位で切り離し運用可能にする「FlexNode」だ。

 中でも、ユーザーがすぐにメリットを見出しやすいのは、MAX5であろう。IT基盤を仮想化し、クラウド環境として運用することが注目される昨今、VMを多く稼働するには“総合的なパフォーマンスが高い物理サーバ”が求められる。反面「プロセッサの性能向上に比べ、サーバのメモリ搭載量はさほど伸びていない」と亀本氏は指摘する。MAX5は、仮想化環境を構築する上でボトルネックとなっていたこの問題を、抜本的に解決し得る可能性を持つ。

 例えば、2010年7月に発表された2ソケットタイプのx86ラックマウントサーバ「IBM System x3690 X5(以下、x3690 X5)」の場合、単体で32のDIMMスロットを備える。こちらにMAX5を接続すれば、さらに32スロットを追加でき、2ノードを連結することもできるため、最大で2テラバイトのメモリを搭載できる。MAX5は専用のポートを通じx3690 X5に接続されるが、ユーザーにとってはサーバとMAX5間の通信遅延も気になるところだろう。だが亀本氏は「新開発のメモリコントローラ(コードネームは“Firehawk”)により十分なメモリ帯域が確保されており、性能劣化は皆無」と言い切る。

 MAX5は、ユーザーにどのようなメリットをもたらすだろうか? 単純に考えると、1台の物理サーバ上で稼働できるVMが増加する。見方を変えれば、これまで余っていたCPUパフォーマンスを十分に利用できる、ということになる。仮想サーバの高集積化も進み、コスト効率の改善にもつながる。

 またユーザー環境によっては、物理コアあたりの稼働VMを増やすことで、コアライセンス方式をとるエンタープライズ分野のアプリケーションについて、その調達やランニングコストを低減できるだろう。また“メモリスロットが多い”という点を生かし、ギガバイト単価の安いメモリモジュールを大量に積む、という選択肢も出てくる。この場合、メモリ搭載量を増やすためにCPUやサーバ台数を増やす必要は無く、メモリ搭載量のみを増強したり「サーバ+MAX5」を連結したりと、用途に合わせて追加できる。結果として、ユーザーが仮想化環境を構築する上での選択肢が増えることになる。

 IT基盤構築の選択肢拡大という点については、FlexNodeも寄与すると考えられる。FlexNodeでは、複数のノードで構成されたサーバを、低負荷時には分割したり、またピーク時には統合したりして運用できる。例えば2ソケットのサーバが2台ある場合、それを1ノード(4ソケット)として使うことや、分割して2ノード(各2ソケット)にすることも可能だ。これらはIBMの標準的なサーバ管理ソフトウェアであるIBM System Directorからオペレーションできる。

 FlexNodeによるパーティショニングは、ハイパーバイザーなどでロジカルに分割されるのではなく、あくまでもフィジカルに分割/統合(Physical Partitioning:PPAR)されるため、障害時に他方を引きずってダウンするリスクもない。また(MAX5と同様に)コアライセンスのアプリケーションを使う場合、CPUに余力があるのならノードを物理分割することで、ライセンスコストも最適化できる。ソフトウェアまで含めたIT基盤のサイジング時に、柔軟性が増すことになるだろう。

HDD800台相当ものI/O性能を1サーバで提供

ibmex5.jpg 日本IBM システムx事業部の亀本氏(写真=左)と櫻井氏(写真=右)

 eX5の特徴として本稿最後に挙げるeXFlashは、間もなく出荷予定の第1世代の製品が最大1.2テラバイト、年内出荷予定となる第2世代のものは最大1.6テラバイトの容量を持つフラッシュ型ストレージだ。もちろん、x3690 X5などeX5世代のサーバに内蔵でき、第1世代のもので最大4万8000IOPS、従来のHDDのI/Oに換算すると160台分という性能を有する。

 日本IBM システムx事業部の櫻井義士氏は「2010年内のリリースを予定する第2世代の製品では、さらに数倍の性能を予定する」と話す。具体的には「最大で“24万IOPS”という、HDDに換算すると約800台分ものパフォーマンス」(櫻井氏)だという。サーバ内蔵型のフラッシュストレージとしては、Fusion-IOの製品をベースにしたものなども挙げられるが、それよりも高いパフォーマンスが期待できる。

 eXFlash は、そのRead性能の高さから、ハイトランザクションな参照系データベースでの利用に向くと考えられる。例えば(Google Mapsのような)、世界中から大量のユーザーが利用する地図といったWebサービスは、同じデータベースを並列で立てトラフィックを分散しつつサービスを提供するのが一般的だ。だがこの場合、I/O性能を確保するため大規模なディスクストレージを用いるよりも、1サーバに収まるeXFlashを選択したほうが、IT基盤を最適化できると考えられる。

 パフォーマンスもさることながら、データセンターファシリティへの寄与も大きい。例えばHDD800台を収納すると、3ラックと8U分に相当する(2Uに12個収納できるタイプの場合)。櫻井氏は「ユーザーはスペースの削減、保守コストの低減、電力消費の劇的な低下などを享受できる」と話す。


 これまで“サーバ仮想化”というキーワードについては、プロセッサの仮想化や、ハイパーバイザー同士の比較といった観点で語られることが多かったかもしれない。だが実運用においては、メモリ空間の確保や仮想化環境に適したストレージ運用といった課題を解決する必要がある。「eX5は、使う側の視点に立ったサーバアーキテクチャだと言える」(亀本氏)

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