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» 2010年11月01日 08時00分 UPDATE

Weekly Memo:NECのクラウドはここが違う —— 遠藤社長が力説

NECの遠藤信博社長が先週行った会見で、企業向けクラウド事業で競合するIBMやHPに対するNECの優位点を強調した。果たして勝機はあるのか。

[松岡功,ITmedia]

今のクラウドはビジネスとして初期段階

 「ITインフラやアプリケーションのサービスが注目されている今のクラウドは、ビジネスとしてはまだ初期段階。もっと大きな市場がこの先にある」

 NECの遠藤信博社長は10月28日、同社が開いた直近の四半期決算会見でこう語った。同会見では直近の決算発表とともに、今年度からスタートした中期経営計画の取り組み状況について説明が行われた。クラウド事業は同計画の重点領域の1つとあって、遠藤社長の説明にも力が入っていた。

会見に臨むNECの遠藤信博社長 会見に臨むNECの遠藤信博社長

 本コラムでは、同会見での遠藤社長のクラウド事業に関する発言に注目した。まず、中期経営計画が半年経過した現在の取り組みにおける自己分析として、遠藤社長は次の3つのポイントを挙げた。

 1つ目は「国内でのソーシャル・キャリア領域を含めたC&Cクラウド戦略の具体化」、2つ目は「国内での先行事例の獲得・導入とサービスビジネスモデルの確立」、3つ目は「グローバルなクラウド拡大に向けた体制整備、実証による顧客との関係構築と業界での地位獲得」である。

 そして、国内での2つの取り組みは着実に進んでいるものの、3つ目の海外展開は十分に進んでおらず加速が必要だ、と分析してみせた。

 NECはクラウド事業で、中期経営計画の最終年度となる2012年度に売上高1兆円を目指している。2009年度実績で約4000億円、2010年度見込みで5000億円という売り上げ規模を、あと2年で倍増させる計画だ。

 ちなみに2012年度の売上高の分野別内訳は、アウトソーシングで3900億円、テレコムキャリアやソーシャルインフラのクラウド環境整備で2500億円、ワイヤレスブロードバンドアクセスで1800億円、エンタープライズクラウドサービスで1100億円、プラットフォームおよびユビキタスデバイスによるサービス連携でそれぞれ1000億円を想定しており、合計すると1兆円を超える。

 中でも高い伸びを見込んでいるのは、ワイヤレスブロードバンドアクセス、テレコムキャリアやソーシャルインフラのクラウド環境整備、ユビキタスデバイスによるサービス連携である。この高い伸びを見込んでいる分野への同社の自信と意気込みが、遠藤社長の冒頭および後に紹介する発言につながる格好となる。

モバイル技術でIBMやHPと差別化

 NECは10月1日付けで、「クラウド戦略室」というクラウドサービスの企画・開発を行う新組織を設けた。遠藤社長はその意図についてこう語った。

 「クラウドは今注目されているサービスだけでなく、今後クラウドにアクセスするためのデバイスやそのサービス連携の市場が大きく広がっていく。そして、やがてはワイヤレスクラウドあるいはモバイルクラウドといわれる市場が主戦場になると考えている。それをにらんでどのような新しいサービスを生み出していけばよいか、新組織を中心に考えていきたい」

 この見方が、先ほど紹介した中期経営計画で高い伸びを見込んでいる分野と一致していることをお分かりいただけるだろう。ではNECに勝機はあるのか。企業向けクラウド事業で競合とどう戦っていくのか、と問われた遠藤社長は語気を強めてこう答えた。

 「よく聞かれるのは、ビッグコンペチターであるIBMやHPとどう戦っていくのかだが、ワイヤレスクラウドあるいはモバイルクラウドといわれる分野に必要な技術力という意味では、NECが大きく先行している。将来的にはそのモバイル技術が、IBMやHPとの差別化および優位性の決め手になると確信している」

 ただ、遠藤社長のこの発言を耳にした記者の間からは、こんな懸念の声も聞かれた。

 「足元のビジネスで苦労しているモバイルを、果たして将来の差別化の決め手にできるのか。しかもモバイルはモバイルで、グローバル市場に競合がひしめいている。そうした競合たちがIBMやHPと本格的に手を組めば、グローバル市場での勝ち目はなくなってしまう」

 「今後、スマートフォンやサービスモデルでコンシューマ市場に大きな影響力を持つAppleやGoogleも企業向け市場に進出してくるだろう。そうした中でNECが勝ち抜くためには、企業向けのモバイルクラウド市場を自ら切り開いて、いち早く自社のキャッチフレーズにしてしまうくらいの力強さとフットワークが必要だ」

 とはいえ、こうした懸念の声は期待の裏返しでもある。そんな雰囲気をつくり出したのは、IBMやHPへの対抗意識をあらわにした遠藤社長の心意気だったのではないか。そんな「気」を感じた会見だった。

プロフィール 松岡功(まつおか・いさお)

松岡功

ITジャーナリストとしてビジネス誌やメディアサイトなどに執筆中。1957年生まれ、大阪府出身。電波新聞社、日刊工業新聞社、コンピュータ・ニュース社(現BCN)などを経てフリーに。2003年10月より3年間、『月刊アイティセレクト』(アイティメディア発行)編集長を務める。(有)松岡編集企画 代表。主な著書は『サン・マイクロシステムズの戦略』(日刊工業新聞社、共著)、『新企業集団・NECグループ』(日本実業出版社)、『NTTドコモ リアルタイム・マネジメントへの挑戦』(日刊工業新聞社、共著)など。


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