国を挙げて中堅・中小企業の海外展開を支援年頭所感

売り上げの源泉を海外に求める中堅・中小企業。2011年、経産省や中小企業庁などは、中堅・中小企業に対して海外進出の支援、金融政策、人材育成や技術開発の支援などを行っていく。

» 2011年01月05日 15時45分 公開
[伏見学,ITmedia]

 日本経済を下支えする中堅・中小企業。今後、国内需要が低迷する中、海外市場に飛躍を期待するのは自然の流れといえよう。こうした中堅・中小企業を支援する関係団体の年頭所感をまとめる。

経済産業省 大畠章宏大臣

 日本の全企業数の99.7%、雇用の7割を占める中小企業の活性化こそ、わが国経済の活力の源泉である。中小企業の発展のため、税制改正大綱において来年度より中小軽減税率を、現行の18%から15%へと引き下げる。

 引き続き厳しい経済状況が続く中、公的金融機関による融資・保証により中小企業の資金繰りに万全を期すことに加えて、人材育成や技術開発、新事業展開に意欲がある中小企業に対して、全力で支援する。

 特に、昨年立ち上げた「中小企業海外展開支援会議」の下で、それぞれの地方経済産業局の力を借りながら関連機関と連携し、海外ミッションの派遣や海外展示会への出展などをきめ細かく支援していくほか、金融庁や財務省とも協力し、現地企業が日本語で相談などができる「Japan Desk」の設置など、地銀などがJETROやJBICと連携して中小企業の海外展開を支援するスキームを構築する。関係機関で協力し、本スキームをしっかりと実施していく。

中小企業庁 高原一郎長官

 現在の中小企業をめぐる情勢は、一部、回復の動きが見られるものの、昨今の円高の影響などにより、経営現場の感覚としては、依然として非常に厳しいとの声を耳にする。

 昨年6月、中小企業政策の理念やわが国経済社会における中小企業の位置付け、政府が取り組むべき行動指針などについて、中小企業憲章として閣議決定した。今後とも中小企業憲章の内容に則り、わが国経済を支える中小企業の活性化のため、政策を総動員して取り組んでいく。

 中でも、資金繰り支援は中小企業対策の根幹をなすものである。昨年11月に成立した補正予算には、事業規模15兆円、総額5600億円超の資金繰り対策を盛り込んだところであり、年度末に向けてニーズが高まる借換保証の推進や、セーフティーネット保証・小口零細企業保証などの100%保証の継続、日本公庫や商工中金による直接貸付の充実など、万全を期していく。

 また、中小企業が、今、共通して苦しんでいるのは「仕事がない」ということだ。地域経済を活性化させるためには、地域の中小企業に仕事が行き届く施策を進めることが重要であり、先般成立した補正予算にも、経済全体が持ち直すことにより、中小企業にも仕事が波及するよう、延長した家電エコポイント制度や住宅エコポイント制度の促進策、学校等の施設の耐震化、高規格幹線道路の社会資本整備などが盛り込まれている。官公需においても、昨年閣議決定をした過去最高の中小企業向け契約目標比率を達成するべく、中小企業の受注機会の増大を図っている。

人材育成、技術開発を支援

 中小企業の経営課題の1つとして、人材の確保・育成がある。昨今、採用意欲の高い中小企業が若手人材の採用に苦戦している一方で、若年者の雇用情勢は厳しい状況が続いており、需給のミスマッチが生じている。中小企業における長期インターンシップ制度をさらに拡大する施策などを通じて、地域経済の中で中小企業の人材をめぐる新たな社会的ルートを確立させ、ひいては中小企業自らが自律的に道筋をつけて雇用を確保できるよう取り組んでいく。

 さらに、重要な課題として、技術開発が挙げられる。わが国の産業の基盤であるものづくり中小企業の技術開発支援や、産学官連携による研究開発支援を通じ、中小企業の底力向上に取り組んでいく。

東京商工会議所 岡村正会頭

 日本経済が自律的な景気回復を果たし、持続的な成長を実現するには、政府が策定した「新成長戦略」の具体化に官民一体でスピード感を持って取り組むことが重要である。中でも、地域経済と雇用を支える中小企業の活力強化なくして、真の成長実現はあり得ないと考える。新成長戦略実現会議などの場を通じて、中小企業を「新成長戦略」実現の中核的な担い手として位置付け、中小企業が参画できるより多くのプロジェクトが具現されるよう、働きかけていく。

 東京商工会議所では今期、「中小企業国際展開推進委員会」を新たに設置し、中小企業のグローバル化に向けた具体的な支援策を検討し、実行に移す。加えて、海外の商工会議所とのネットワークをさらに生かして、最新情報の提供や国際経済交流の強化を図っていきたい。

 生産性向上への対応についても支援する。東商では「IT推進委員会」を新たに設置し、中小企業のIT化による生産性の向上に具体的に取り組んでいく。IT化により業務プロセス全般を見直し、抜本的な業務改革を図ることが重要である。情報が戦略的に活用されることで、生産性の向上にとどまらず、新製品や新サービスの開発、販路拡大など、付加価値の増大につながっていくものと考える。

中小企業基盤整備機構 前田正博理事長

 日本が厳しい経済状況から脱し、持続的な発展をしていくためには、地域経済の担い手である中小企業が自らの経営基盤を強固なものにし、さらに成長著しいアジアなどの海外市場を視野に入れた新しい事業展開によって将来を切り拓いていくことが必要である。

 中小企業基盤整備機構では、今後、中小企業の海外展開支援の強化に伴い、国際化に関するアドバイスや展示会出展などにかかわる支援体制を拡充するとともに、当機構支部間および地方公共団体や中小企業支援機関などとのネットワーク・連携を強化して、質の高い支援を展開していく。

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