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» 2011年04月11日 07時52分 UPDATE

Weekly Memo:震災から学ぶ事業継続の勘所

企業が事業継続を図っていくうえで、今回の震災から学ぶべきことは何か。先週、記者説明会を行ったPwC Japanの話をもとに考えてみたい。

[松岡功,ITmedia]

PwC Japanが語る震災とBCP/BCM

 ここ数年、企業の間ではリスクマネジメントの一環として、BCP(事業継続計画)およびBCM(事業継続管理)に取り組む気運が高まっている。

 最初に言葉の説明をしておくと、BCPとは不測の事態発生時にも、組織の重要な事業を必要な時間内に再開・継続するために必要とされる、発生時の行動や必要な事前対策の内容を定めた計画のことである。

 またBCMとは、BCPにおいて定められた対策や教育訓練を確実に実行、および評価し、BCPを継続的に改善し維持管理するための経営管理プロセスのことだ。つまり、事業継続に関するPDCAサイクルを通した継続的な活動そのものである。

 いずれも富士通の関連ソリューションの資料に記載されていた説明が分かりやすかったので、引用させてもらった。調べてみると、同社をはじめとして有力なITベンダーや経営コンサティング会社は、どこもBCP/BCMに関するコンサルティングや支援サービスを提供しているようだ。

 なかには、大塚商会のように、アンケート形式でBCMへの取り組みを評価・診断する簡易診断サービスもある。同社は中小規模の企業顧客を数多く抱えていることから、こうした簡易版のニーズも少なくないと見ているようだ。

 そうした折、あらた監査法人やプライスウォーターハウスクーパースなどからなるPwC Japanが4月7日、震災から1カ月を振り返って「BCMを再考する」と題した記者説明会を行った。PwC Japanからは、あらた監査法人あらた基礎研究所の安井肇所長をはじめ、7人のコンサルタントがそれぞれの見解を披露した。フリートークによる進行だったので、ここでは安井所長を除いて発言者の名前は省略させていただく。

 記者説明会に臨むあらた監査法人あらた基礎研究所の安井肇所長(中央)をはじめとしたPwC Japanのメンバー 記者説明会に臨むあらた監査法人あらた基礎研究所の安井肇所長(中央)をはじめとしたPwC Japanのメンバー

 PwC Japanがまず強調したのは、今回の震災は被災範囲、電力供給、サプライチェーン、通信手段、放射能に起因する広範囲の影響などさまざまな観点から、従来の一般的なBCMで検討されるレベルを超えていたことだ。

 「想定外という表現が何度となく使われてきたが、厳密に言うと正確ではない。BCMの観点からすると、数百年に一度と言われるほどの大地震だったので、発生確率から見てリスクは相当低いと結論づけられる範ちゅうの出来事だった。ただし、発生したときの影響度は非常に大きいことも分かっていた」

 では、そうしたリスクが発生した場合にどうすればよいのか。

「自助・共助・公助」への取り組みが肝要

 PwC Japanによると、まず「影響範囲はどこまでか」「どこまで自力でできるか」「どこに協力を仰ぐか」といった3つの視点を持ったうえで、「自助・共助・公助」に取り組むことが肝要だという。

 自助とは「自分の身は自分で守る」。つまり、自分自身、家族の安全や自宅、金融資産などの保全を自らの手で確実にすることだ。

 共助とは「自分たちの町は自分たちで守る」。自分だけでなく、近隣の住民や商店街などが互いに助け合って地域全体を守ることだ。それには日頃から交流を図ることが肝心という。

 公助とは「公的機関が市民を守る」。自治体、警察、消防、ライフライン事業者、交通機関、金融機関、燃料供給者などの組織が適切に機能し、市民の生活を維持することである。

 では、具体的にどうすればよいのか。そのキーワードが「インシデントマネジメント」である。インシデントマネジメントとは、BCP/BCMにおける取り組みの中でも、とくにリスクが発生した後の対策のプロセス管理を事前にきちんと考えておくことをいう。

 このインシデントマネジメントの内容をこれまでにも増して緻密に考え、しっかりと実践していくことが、最も重要なポイントになると強調していた。

 実はこれ以上の具体的な対処法は、PwC Japanも回答を持ち合わせていなかったようだ。ただ、安井所長からこんな発言があった。

「今回の震災から教訓とすべきなのは、BCP/BCMにおけるリスクを発生確率だけで設定してはいけないということだ。BCP/BCMをさらに万全なものにするためには、発生確率の低いリスクも別立ての項目として対策を考えておく必要がある」

 さらに安井所長は、東北在住の津波の研究者から聞いたという話を代弁してこう語った。

「今回の大津波は、事前の避難訓練で安全とされていたいくつかの避難場所も押し流した。その意味では今後、津波に対する避難訓練は、避難場所の設定も含めて、とにかく高いところへ逃げることを大前提にしないといけない」

 ある想定のもとで決められた場所ではなく、とにかく高いところへ避難する —— この大津波の教訓を、企業のBCP/BCMに置き換えて、新たな発想ができないものか。BCP/BCMソリューションを展開しているIT業界の知恵の出しどころともいえそうだ。

プロフィール 松岡功(まつおか・いさお)

松岡功

ITジャーナリストとしてビジネス誌やメディアサイトなどに執筆中。1957年生まれ、大阪府出身。電波新聞社、日刊工業新聞社、コンピュータ・ニュース社(現BCN)などを経てフリーに。2003年10月より3年間、『月刊アイティセレクト』(アイティメディア発行)編集長を務める。(有)松岡編集企画 代表。主な著書は『サン・マイクロシステムズの戦略』(日刊工業新聞社、共著)、『新企業集団・NECグループ』(日本実業出版社)、『NTTドコモ リアルタイム・マネジメントへの挑戦』(日刊工業新聞社、共著)など。


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