ニュース
» 2011年04月26日 08時00分 公開

真のDRをどう実現する?:ユーザー主導の基幹系クラウド、実現にまた一歩近づく

ユーザー系IT企業3社が立ち上げたクラウド同盟では、基幹系システムにも耐え得るクラウドの標準化を進めている。イージェネラの仮想化ソリューションがHPにも対応したことで、実現にまた一歩近づいた。

[浅井英二,ITmedia]

 「先の震災以降、ディザスタリカバリに対する関心が高まっているが、単に関西でバックアップすればいい、という単純な話ではない」── こう話すのは大和総研の鈴木孝一専務だ。ディザスタリカバリ(DR)は、メーカーごとにソリューションが異なるうえ、それぞれ実際に機能させるためにはOSやミドルウェアを合わせなければならないという複雑さがある。また、場所を変えただけでは解決できない「要員の確保」という人的な課題もある。こうした課題は、基幹系システムの領域でもクラウド技術を活用しようとすれば越えなければいけない障壁と同じだ。

 昨年10月、大和総研ホールディングス、新日鉄ソリューションズ、およびパナソニック電工インフォメーションシステムズのユーザー系IT企業3社が立ち上げた「アライアンスクラウド」は、基幹系システムの領域でもクラウド技術を活用すべく、共同で検証作業を進めている。本来であれば、各社ごとにサーバ、ストレージ、ネットワーク機器、OS、仮想化ソフトウェア、データベース、運用管理ツールなどを組み合わせて検証しなければならないが、3社の「クラウド同盟」ではエンジニアを出し合って、いわばユーザー主導で「標準化」を進めている。ITインフラの標準化が進めば、それぞれのインフラや保守要員を融通し合う、つまり「共有化」が実現でき、いざというときのDRソリューションも比較的低コストで整えられる。

 ミッションクリティカルな基幹系システムでは自ずと高い品質の運用保守が求められる。クラウド同盟各社が積極的に導入して実績を重ね、その手ごたえをつかんでいるのが、イージェネラの仮想化ソリューション「PAN Manager Software」だ。

 PAN(Processing Area Network)は、米Egeneraが「ストレージにおけるSAN(Storage Area Network)と同じ発想をプロセシングに持ち込めないか」と開発したユニークなアーキテクチャー。SANはストレージをコンピュータから切り離し、プールすることで、必要に応じてストレージを拡張することを容易にしたり、集約することで無駄を省ける。PANは、同じことをプロセシングでもやろうというのだ。仮想化ソフトウェアとしては、1つのCPU上に複数の仮想マシンを稼働させるXenやVMwareなどがよく知られているが、レイヤが異なる。

 イージェネラは、ミッションクリティカルな業務に向け、ハードウェアとソフトウェアと一体化させたハイエンドなブレードサーバシステム、BladeFrameを提供してきたが、2008年からは「PAN Everywhere」構想を掲げて他社製のブレードサーバでも使えるようにPAN Managerをオープン化、これまでデルと富士通のブレードサーバに移植している。

HPのI/O仮想化機構にも対応

左からHP版PAN Managerの発表会に同席した新日鉄ソリューションズの大城氏、ニッセイ情報テクノロジーの小林敦行フェロー、大和総研の鈴木氏、パナソニック電工インフォメーションシステムズの田中啓介執行役員

 4月25日に都内で記者発表されたHP向けの「PAN Manager 7 for HP c-Class 7000」は、ハードウェアベンダーのI/O仮想化機構を利用できるようにアーキテクチャーを変更した新しい世代のもの。ネットワーク、外部ストレージの接続を仮想化して柔軟なシステム構成を実現するHPのI/O仮想化機構(バーチャルコネクト技術)に対応し、PAN Managerから制御できるようになる。ハードウェアベンダーからすれば差別化できる部分があり、一方、構築するシステムインテグレーターやユーザー企業にも用途に応じて選択できる幅が広がる。

 発表会に同席した新日鉄ソリューションズの大城卓業務役員は、「クラウドの構築・運用ではI/Oが厄介だった。障壁がひとつクリアできた」と歓迎する。

 イージェネラでは、今年12月に256ブレードまでサポートする「PAN Domain Manager」をリリースするほか、2012年に入ると異なるベンダーのブレードサーバが混在する環境も管理できるようにするという。

 「ストレージの使い方など、まだまだ共通化していかなければならないところはあるが、イージェネラのソリューションは基幹系システムにも耐えられるオープンなクラウド実現に向けて着実に近づいている」と大和総研の鈴木氏は評価する。

 アライアンスクラウドでは5月中旬、横浜に共同検証センターを開設するが、イージェネラやハードウェアベンダーの協力を得て、異なるベンダーのブレードサーバが混在する環境をどのように管理していくのかも検証していく予定だ。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

注目のテーマ

マーケット解説

- PR -