いま改めて考える「日本企業のグローバル化」

グローバル戦略に取り入れるべきICTの勘所、IT系メディアが議論を交わす

企業の海外進出ではビジネス基盤を支えるICTが重要な役割を果たすと言っても過言ではない。企業はどのような点をグローバル戦略に取り入れるべきか――。IT系メディアが再び結集し、活発な議論を展開した。

» 2011年11月07日 10時00分 公開
[ITmedia]

 NTTコミュニケーションズ主催のイベント「NTT Communications Forum 2011」が10月28日、帝国ホテル東京で開催され、注目セッションの1つとしてIT系メディアが参加する「グローバルICT討論会」が行われた。企業のグローバル化とICT活用をテーマにしたセッションは公開形式で実施され、多数の企業関係者が来場。来場者はメディア各社による白熱した議論に耳を傾けていた。

 国内市場の縮小や歴史的な円高などを背景に、日本企業の間で海外市場への進出が大きな関心事になっている。海外でビジネスを成功させるには、安定した事業基盤の確立が不可欠であり、ICT(情報通信技術)が重要な役割を担う。しかし、ICTをどう活用すべきかという点で課題に直面する企業は多い。討論会ではグローバルビジネスを成功に導くためのICTの“勘所”について、4つの視点で活発な議論が交わされた。

朝日インタラクティブ CNET Japan編集長の別井貴志氏、アスキー・メディアワークス TECH.ASCII.jp編集長の大谷イビサ氏、ITR シニア・アナリストの舘野真人氏、アイティメディア ITインダストリー事業部 エグゼクティブプロデューサーの浅井英二氏、日経BP コンピュータネットワーク局 ネット事業プロデューサー 兼 日経コンピュータ編集プロデューサーの星野友彦氏(左から)

 第一の視点が「震災後のICT戦略」である。モデレーターを務めるアイ・ティ・アール(ITR)の舘野真人シニア・アナリストが、「震災によってICTインフラに関わる多くの問題が浮き彫りになったのではないか」と提起した。

 東日本大震災は、ネットワークの断絶やコンピュータの損壊といった甚大な被害を企業のICTインフラにもたらすこととなった。このために事業を中断せざるを得ないなどのケースが多発し、ICTにおける災害復旧(DR)や事業継続性計画(BCP)の強化という課題が表面化したという。これは海外で安定したICTインフラを実現することにも関わってくる。

 安定したICTインフラの実現では、自然災害ばかりではなく、政治的、社会的な情勢の変化にも目を向けねばならない。それには技術面に加えて、テレワークに代表される新たな業務形態の導入といった技術以外の環境面の整備も欠かせない。

 次に第二の視点が「グローバルICTガバナンスのあるべき姿」だ。ITRが実施した調査によれば、海外進出を検討する一番の理由が「現地市場の獲得」であり、進出先地域とIT投資の重点地域が重なる傾向もみられた。企業の海外進出には、現地に自社の拠点を構築するケースや、現地企業を買収するなどの形があるが、ICTにおいては新たに組み入れられる情報システムをどう運用していくかという課題がある。

 現状では多くの企業が本社(日本)を中心としたグローバルの情報システムの運用管理体制を構築している。しかし進出先の拡大などによって、将来的には日本を中心とした体制では通用しないと考える企業が少なくない。日本をグローバルビジネスの一部として見た場合での、情報システムのあるべき姿とは何か、それをどう実現していくか――IT部門における悩みごととなり始めた。

 第三の視点が「グローバル戦略とクラウドの価値」である。第二の視点で提起されたように、グローバルビジネスにおける理想的なICTインフラの実現には課題が山積している。仮に海外の情報システムも自社で運用するとなれば、コストも大規模になるだろう。これを抜本的に解決する手法として注目されるのがクラウドというわけだ。

 だが、その活用に当たっては世界中で利用可能な“標準”を確立しなくてはならない。これには豊富なノウハウや知識が欠かせず、特にこれからグローバル進出をしようと考える企業にとっては、大きな障壁にもなりかねない。ここで第四の視点である「グローバル・パートナー」がカギとなる。

 グローバルビジネスでの理想的なICTインフラを実現するには、世界各地の情勢を知り、企業の経営戦略と整合性の取れたIT戦略の遂行を支援できるパートナーの協力を得ることが不可欠だ。それでは自社にとって最適なパートナーはどのように選ぶべきなのだろうか――。

 討論会で示された4つの視点に対し、メディア各社は数多くの興味深い提言を行っている。その詳しい模様は追って紹介するので、ぜひ注目していただきたい。

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