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» 2011年11月25日 08時00分 UPDATE

さよならWindows XP:スマートデバイスにWindows 7、そのメリットは

オフィスではデスクトップPC、外出先ではノートPC。企業で働くビジネスマンにとって、これが従来の一般的なITの使い方だった。しかし、新しいスマートデバイスの登場により、そのスタイルは変化しつつある。企業にとって安心できるのは、どんな端末なのか。

[敦賀松太郎,ITmedia]

スマートデバイスはiOS? Android?

 ここ数年、スマートフォンやタブレット端末、スレート端末など、モバイル環境に適したスマートデバイスが続々と登場し、その市場は急速に成長している。コンシューマー向けのスマートデバイス市場を俯瞰してみると、スマートフォンもタブレット端末も、AppleのiPhone、iPadで稼働するiOS、対するGoogleのAndroid陣営という構図になっている。Windows Phoneなどマイクロソフトの組込みOSであるWindows Embeddedは極めて劣勢、とりわけ国内市場では蚊帳の外とも言える状況だ。

 ところが、企業が特定用途のために大量導入する業務用スマートデバイスでは、事情が異なる。最近では、マイクロソフトが端末向け組込みOSの主流としてきたWindows CE系を差し置いて、Windows 7を採用するタブレット端末、スレート端末が急増している。

slate.jpg Windows 7を採用した富士通のスレートPC「STYLISTIC Q550/C」

 例えば、生命保険業界大手の第一生命は、外交担当の営業職員向け端末として、富士通製のスレートPCを2012年から導入することを決定した。また、損害保険業界大手の三井住友海上火災保険も、自動車保険と火災保険の契約手続きをタブレット端末上で完結できる新しいシステムを開発し、2011年11月から運用を開始している。いずれも、OSとして採用されているのはWindows 7だ。

 営業の現場だけでなく、医療現場における電子カルテ用端末、教育現場における教材用端末などでタブレット端末、スレート端末が利用されるシーンでも、Windows 7が採用される例は少なくない。

開発効率とセキュリティ対策に注目

 コンシューマー向けでは、iOSやAndroidに大きく水をあけられているWindowsが、企業向けで優勢なのには、いくつかの理由が考えられる。

 まずは、Windowsが開発効率に優れているためだ。多くの企業システムがWindowsで稼働している現在、Windows向けのシステムを開発する人的リソース、あるいは経験・実績は多くの企業にある。

Windows 7が稼働するタブレット端末、スレート端末用のシステムは、これまでクライアント上で稼働していたアプリケーションにそれほど手を加えずとも開発することが可能だ。これまで蓄積されたWindows XPのアプリケーション資産の活用も容易となる。投資コストを抑えられるし、開発期間も短縮できる。

 これがiOSやAndroidならば、そうはいかない。新たにスクラッチ開発することになり、コストも期間もかかることになる。既存のアプリケーションがWindowsで稼働していたとすれば、それに似た操作性を実現するのも、容易なことではない。もちろん、動作検証作業も十分に行う必要がある。なにより開発者の数が限られるばかりか、業務アプリケーション開発の経験者となると、微々たる数字になってしまう。つまり、iOSやAndroidを選択するのは、非常にリスクの高い「冒険」になるわけだ。

 セキュリティの面でも、Windowsに分がある。これには、Windowsのほうがマルウェアに狙われやすい、という異論もあるだろう。しかし、Windowsの場合は、豊富なセキュリティソリューションが揃っているし、脆弱性対策についてもWindows Updateによるパッチ適用の仕組みがOSの機能として用意されている。Windowsを搭載した端末ならば、それらをそっくり適用することが可能だ。

 それに対し、iOSはアップルが審査・認証してApp Store経由でインストールすることが原則になるので、セキュリティは担保されていると言える。しかし、Androidはセキュリティリスクが極めて高いと言わざるを得ない。なぜならAndroidでは、パッチ適用がOS提供者であるGoogleではなく、デバイスを開発したハードウェアベンダーや通信事業者任せになっているからだ。App Storeのように、アプリケーションを審査する仕組みもない。これでは、脆弱性が発見された場合の対応が遅れることになり、セキュリティを担保することはできない。

 2011年11月に米国のセキュリティベンダー、Bit9社が発表したレポートによると、最もセキュリティが脆弱なスマートフォンは「Samsung Galaxy Mini」だという。以下、発表された12位までにリストアップされたのは、すべてがAndroid搭載機種だった。Androidの躍進が続けば、Androidの脆弱性を狙ったマルウェアがどんどん増えていくのは間違いない。個人的にAndroid端末を利用するエンドユーザーが増えれば、「会社の業務もAndroidで」という声が上がってくるかもしれないが、セキュリティ対策の観点から情報システム部門は十分に吟味する必要があるだろう。

企業にとって重要な管理性の優劣

 さらに、管理効率についてもWindowsに一日の長がある。端末がWindows 7ならば、企業の情報システム部門がこれまでWindows XPなどで実施してきたクライアント管理と同列で、新しいスマートデバイスを管理できる。

 異なる種類のOSを新規で利用する場合には、さまざまな管理上の課題が生まれてくる。特に、自由度の高いコンシューマー向けの端末上で業務アプリケーションを実行するとなると、前述のようなセキュリティ上のリスクがさらに高まるだけでなく、不正利用や業務外利用などの対策も必要になってくる。そのために、端末を管理する新しいツール、新しいサービスを導入しなければならない。

 ハードウェアベンダーや通信事業者の中には、こうした課題解決を商機とし、新しいツールやサービスを提供し始めるところもある。一例として挙げると、KDDIが提供するAndroidスマートフォン向けの「ビジネス便利パック for Android」というサービスがある。これは、セキュリティ監視やアプリケーションも含めたデバイス管理、リモートからのデータ削除などを実行できるサービスだ。こうしたサービスを利用すれば、セキュリティ対策も管理も安心できるだろうが、管理工数は増えてしまうだろう。

 一方のWindowsは、従来の運用管理の仕組みに容易に組み込めるだけでなく、マイクロソフトが提供するクラウドベースの管理サービス「Windows Intune」などを利用することもできる。Windows Intuneは、パッチの更新管理やマルウェア対策、資産管理、稼働監視などを行えるサービスであり、企業のポリシーを基盤として展開できるものだ。

 事業継続性の向上、ワークスタイル改革、生産性向上などを目的に、これから業務にスマートデバイスを導入していこうと考えている企業は多いことだろう。スマートデバイスの選定には、購入決定権を持つ担当者の裁量が物を言う。だが、「好き、嫌い」という感情に左右されるのではなく「会社にとって何が安全で、コストもかからないか」を真剣に考え、自社に最適なデバイスを選定すべきだろう。

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