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» 2012年07月19日 08時00分 UPDATE

松岡功のThink Management:日本オラクル社長が語るIT経営の極意

日本オラクルの遠藤隆雄社長が会見で、イノベーションに向けたIT経営について語った。興味深い発言を取り上げながら、その極意に迫ってみたい。

[松岡功,ITmedia]

会見で飛び出した遠藤社長の過激な発言

 「現場の声をいくら聞いても、イノベーションは起こせない」

 日本オラクルの遠藤隆雄社長は7月11日、同社が開いた2013年度の事業戦略説明会で、企業がIT環境を構築する際の注意点についてこう語った。

会見に臨む日本オラクルの遠藤隆雄社長 会見に臨む日本オラクルの遠藤隆雄社長

 この発言は、これまでの常識を覆すものである。従来、企業がIT環境を構築する際には、どれだけ現場のニーズを反映できるかがIT部門の務めであり、企業全体としての取り組みそのものだった。しかし、そのアプローチではイノベーションは起こせない、というのが遠藤氏の主張だ。

 ただ、冒頭の言葉だけだと過激に聞こえるかもしれないので、この前後の発言も付け加えておこう。

 「企業がIT環境を構築するうえで、現場の声をつぶさに聞きながらシステムをつくり込んでいては時間がかかるばかりで、スピードの速さが要求されるイノベーションは起こせない」

 「システムはグローバルのベストプラクティスを取り入れて最低限の改良だけで使うようにすれば、開発および保守のコストを抑えながら相当のパフォーマンスを享受できる。それによって、スピーディーでダイナミックなイノベーションを起こすことができるようになる」

 前後の発言を付け加えると、遠藤氏の意図はお分かりいただけただろう。筆者も同感である。ただ、補足するならば、イノベーター役を担うIT部門が対象となる業務のプロセスをしっかりと把握する必要がある。そのためには、予め業務部門から業務プロセスをじっくりと聞き込んでおくことが肝要となる。

 そこでIT部門に求められるのは、この作業の目的は業務プロセスを見える化することで、IT化に向けて業務部門の要望を聞くことではないとの立場を明確に示しておくことだ。さらにそうした業務プロセスを見える化した段階で、IT化するところとしないところを明確に判断することが大事だ。

 ここで強調しておきたいのは、IT部門が担う作業を全面的に後押しし、業務プロセスにおけるIT化の可否も合わせて、経営者が強力なリーダーシップを発揮することの重要性である。やはり最後は、経営者に行き着くのである。

 補足と言いながら、かなり筆者の主張を盛り込んでしまった。ともすれば、遠藤氏の主張と食い違うところがあるかもしれないが、冒頭の言葉に対する意図は同じである。

IT経営におけるイノベーションとは何か

 実は、今回の遠藤氏の発言にまつわる話が、マネジメントの考察をテーマとした本連載の内容として適当かどうか、少々悩んだ。ちなみに、会見で披露された日本オラクルの事業戦略については、すでに報道されているので関連記事等をご覧いただくとして、ここでは遠藤氏が会見で語ったイノベーションに向けたIT経営についての話に焦点を当てることで、マネジメントの考察における1つの切り口にしたい。

 正直なところを言うと、冒頭に紹介した発言を聞いたとき、ぜひ本連載で取り上げたいと思った。それほど強いインパクトを感じた言葉である。遠藤氏の興味深い発言はほかにもある。日本企業のIT投資について、米国企業を引き合いに出しながら語ったものである。

 「日本企業のIT投資は、米国企業に比べて総じて少ない。しかしその分、ベンダーサイドの私たちとしては、日本のIT市場にまだまだポテンシャルを感じている。ただ気になるのは、日本企業の多くがIT投資についてハイコストだと感じていることだ」

 「なぜ、そう感じるか。それは、ITが経営の役に立っているという実感がないからではないか。経営にとってはコスト削減も大事だが、それにも増してビジネスが拡大して売り上げが伸びることが肝要だ」

 「ところが、ITはまだそこに寄与している割合が小さく、企業にとっては税金のようなコストに映っている。こうした状況を変えるには、とにもかくにも売り上げ増に直結するソリューションをどんどん提案していくことが重要だ。そうしてITのビジネス価値が高まってくれば、日本企業のIT投資も活発化していくと確信している」

 遠藤氏の話はオラクルに限らず、多くのベンダー、そしてユーザーにとって臨場感のある内容だろう。同氏の発言を受けて、筆者も改めて主張しておきたい。

 ITの本質的な特性は「スピードの速さ」と「透明性」にある。究極のスピードの速さはリアルタイムに、また究極の透明性はすべてを見える化するところに行き着く。まずは経営者がそうしたITの特性を自らの経営にどう生かすか、ということにもっとセンシティブになるべきである。

 一方、ベンダーは遠藤氏が指摘するような顧客のビジネス拡大に直結するソリューションを、もっと前面に出すべきである。そして、ユーザーが参考にできるさまざまな導入事例を広く紹介していく必要がある。

 最後に、遠藤氏の興味深い発言をもう1つ。企業がIT環境を構築する際のコンサルティングのアプローチについて語ったものである。

 「お客様がやりたいことをそのまま聞くようなコンサルティングならば必要ない。お客様が知らないことや気付いていないことを提案することからイノベーションが始まる。これからは、それが分かっているコンサルティングしか通用しない」

 意図は冒頭の発言と同じだが、コンサルタントでなくてもグサッと来る言葉である。

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