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» 2012年08月24日 12時00分 UPDATE

ビジネスとビッグデータの橋渡し:達人によるビッグデータ活用指南――日立の取り組み「イノベイティブ・アナリティクス」

大量のデータの中から価値ある情報を探し出し、ビジネスにつなげていくには従来とは異なるアプローチが必要になる。そこで注目されるのが、蓄えたデータから得られる知見と実際の業務との橋渡しをする専門家の存在だ。日立の取り組みを聞いた。

[白井和夫,ITmedia]

(このコンテンツは日立「Open Middleware Report vol.59」をもとに構成しています)

ノイズの山から宝を見つけるには

01_yamaguchi.jpg 日立製作所 情報・通信システム社 ITプラットフォーム事業本部 PFビジネス本部 ビッグデータビジネス推進部 担当部長 山口俊朗氏

 ビジネスの現場や日々の生活の中から時々刻々と生成・発信される多種多様なデータ。これらを分析することで、今後のビジネスに新たな価値を創造していこうという取り組みが進展している。このような膨大なアクセスログやセンサーデータ、SNSへの書き込みなど、いわゆる「ビッグデータ」を分析し、新たな価値に裏打ちされた製品やサービスにつなげていくことは「今後の企業イノベーションに不可欠な要素となっていく」と、日立製作所 ビッグデータビジネス推進部 担当部長の山口 俊朗氏は指摘する。

 「これまでITは、業務効率の向上やコスト低減に多大な貢献を果たしてきました。しかし、顧客ニーズの多様化や製品・サービスのコモディティ化が進み、それだけでは他社への競争優位性を保てなくなってきたのも事実です。そこでITの進化によってあらゆるデータの収集・蓄積が可能となり始めた今、膨大な情報の中から利益を生み出す源泉を探し出し、他社との差別化や新事業の創出といったイノベーションにつなげていきたいと考える経営層が増えているのです」(山口氏)

 もちろんデータを溜め込むだけで、すぐに価値が生み出せるわけではない。データ量の増大は新たな価値創造のチャンスであると同時に、情報密度の低下によるノイズや無駄の増加といったジレンマも引き起こす。大量のデータの中から価値ある情報を見つけ出すには新たなソリューションが必要になる。

 「インターネットは普及が始まった当初、“ノイズの山”と言われていました。ところが、Googleが提供するページランク機能をはじめとするさまざまな技術によって、見つけたい情報へのアクセスが少しずつ容易になってきました。ノイズの山が“宝の山”に変化したのです」(山口氏)

 一方、企業内の情報は、データ構造の多様さやアクセスコントロールの複雑さ、部門間のサイロ化などにより「ノイズが多い」状態となっている。ここから宝を取り出すのは困難だが、まずはデータを集めておくことが必要となる。これまで“価値を生まない”として捨ててしまった情報に対しても、コストパフォーマンスが向上しているストレージなどITの力を利用して、蓄積していくのだ。

 「そこで重要になるのは企業自身が、どのようなデータを集め、それをどう使うかという明確な目的とビジョンを持つことです。その次のステップでは各企業が自ら設定した目的とビジョンをもとに、新たな価値を生むであろうデータ利活用の方法を策定することになります。こうした段階的なアプローチによって、ビッグデータは企業の価値創造や競争力の源泉となるのです」(山口氏)

人間による価値創造、それを支えるIT

01_yoshida.jpg 日立製作所 情報・通信システム社 スマート情報システム統括本部 ビジネスイノベーション本部 先端ビジネス開発センタ 主任技師 吉田 順氏

 莫大なデータを蓄え、変換し、高速に処理していくのはITの得意分野だ。その上で、データから導き出される人やモノの動き、市場の変化などを個々の業務課題と関連付けながら、新たなアイデアや方向性を生み出していくのは「人間」が持つ勘やセンス、つまりは経験に裏付けられた創造性に頼るしかない。

 「業務や分析手法を熟知した人間による価値創造、それを支えるツールとしてのIT。この両者が有機的に連携して初めて、戦略的なビッグデータの利活用を推進することができます。そしてこれらの要素を一企業として兼ね備えているのが日立の強みなのです」と語るのは、ビジネスイノベーション本部 先端ビジネス開発センタ 主任技師の吉田 順氏である。

 「日立は企業のITシステムだけでなく、エネルギー、交通、水道などの社会インフラもグローバルに展開してきた実績があります。運行情報にかかわるシステム、産業機械や大型設備からデータを収集し、遠隔監視や予防保守を実現するシステムなど、複数の分野でビッグデータ利活用に不可欠なシステムを構築・運用してきました」(吉田氏)

 日立では大量の実業データとITリソースから抽出した知識を付加価値サービスとして提供する「KaaS(Knowledge as a Service)」を提唱し、研究所の人材と一体となったデータ分析技術とノウハウを2008年から蓄積しているという。

 また、ストレージシステムをはじめ、データの収集・蓄積・検索・処理・分析を支えるITプラットフォームの技術・製品群も保有していることも強みである、と吉田氏は説明する。

 日立はその強みを生かしてビッグデータから新たなビジネス価値を生み出していく取り組みを「イノベイティブ・アナリティクス」と称し、推進している。

031-1.jpg 日立によるイノベイティブ・アナリティクスの位置付け

 これを進めていくために日立は2012年4月、情報・通信システム社内にビッグデータ活用に関する専門家「データ・アナリティクス・マイスター」を結集した専任組織「スマート・ビジネス・イノベーション・ラボ」を設立した。約40人のマイスターを中心に、データ分析に関する技術者・研究者、BIや大量データ処理などのシステム構築・運営に携わるコンサルタントおよびSEなどを含め、200人超の事業体制を整備している。

顧客の目的・課題・目標を共有

 イノベイティブ・アナリティクスは、顧客の業務を理解して、そもそもどのような観点でビッグデータを利用したいのか、その目的・課題・目標を顧客とともに発見していく活動だという。膨大なデータから、顧客の業務課題の特性に合ったデータを発見し、的確な分析シナリオを適用し、その情報化と有効活用のサイクルを確立させていくには、さまざまな業務への理解と熟知が必要となる。そこで、顧客業務に関する専門知識とビッグデータの利活用に関する幅広い知見を併せ持つ技術者がデータ・アナリティクス・マイスターとして、顧客と日立の技術者・研究者とのコミュニケーションを円滑化しながら分析・評価を進めていく。

 「イノベイティブ・アナリティクスは、分析アルゴリズムとお客さまの業務との関係づけを、ITによる数理分析と人間による有効性判断の共同作業で実行していきます。全ての過程で日立の豊富なノウハウを適用し、分析業務の専門家がサポートしていくため、社内にデータ活用や分析のスキルを持った人間がいないというお客さまでも、ビッグデータの利活用を安心して始めていただけます」と吉田氏は自信を示す。実は彼も現在複数のビッグデータ案件を担当しているマイスターの1人だ。

 「ビッグデータの活用に期待を寄せるお客さまは国内だけではありません。これからはアジア圏、インドなどでも需要は確実に伸びてくるでしょう。今後は海外拠点でも、その地域の企業文化や商習慣に合わせたマイスターの育成を進めていきます」(吉田氏)

ビッグデータ利活用の実用化

 ビッグデータを扱う案件の多くは当然ながら、顧客が他社との差別化を図るためのコアな経営戦略に直結している。そのためオープンに語れる事例は少ないが、すでに日立グループ内で実運用が開始されたもの、顧客と実験的に取り組んでいる事例からは、その活用のヒントや適用の可能性が見えてくる。

 「日立内の事例の1つにガスタービン保全システムがあります。日立が火力発電所に納めているガスタービンには1機あたり数百個のセンサーが設置されています。新たに開発した保全システムでは、そのセンサーから稼働状況データを一括収集し、ストリームデータ処理による高速分析と時系列データストアによる高効率な保管で、ストレージ容量を削減しながら高精度な故障検知と稼働率の向上を実現しています」(吉田氏)

 またユニークな例では、人の移動を検知するセンサーデータや3D空間データを組み合わせ、施設改善や防災計画、都市計画などの効果予測・評価を行う「人流シミュレーション」、監視システムから収集した画像や音声と、一般社会にある多様なデータを組み合わせ、付加価値の高いデータ分析を実現する「画像・動画ソリューション」なども実用化に向けた動きが進んでいるという。

 「ビッグデータの利活用を考えるとき、そこにはまだ多くの課題が横たわっています。例えば、データと業務をどのように関連づければいいのか、異なる種類のデータをどう一元管理するか、分析結果を早く見たいがデータ容量が大きすぎるなど、お客さまの悩みはさまざまです。日立では、こうした課題に対応した解決技術をお客さまに提供し、最適なITプラットフォームの導入を支援していきます」(山口氏)

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