富士通、UNIXサーバの「SPARC M10」シリーズを発表

5年ぶりのUNIXサーバ新モデルとなるSPARC M10は、スパコンやメインフレームベースの高性能化や信頼性向上のための技術を取り入れたという。同社の豊木常務はIBM追撃を表明した。

» 2013年01月18日 15時20分 公開
[國谷武史,ITmedia]
「SPARC M10」シリーズ(写真はM10-4S)を発表した豊木常務

 富士通は1月18日、ミッションクリティカル向けUNIXサーバの新製品となる「SPARC M10」シリーズを発表した。同社のスーパーコンピュータやメインフレームシステムで培った高性能化や信頼性向上のための技術を多数取り入れ、UNIX市場でのシェア拡大を狙うとしている。

 SPARC M10シリーズは、3.0GHzの新プロセッサの「SPARC64 X(テン)」を搭載する。これまでソフトウェアベースで行っていた暗号化などの処理をプロセッサでアシストする「ソフトウェア・オン・チップ」や、既存のSolaris資産を継続使用するための多様な仮想化機能を採用しているほか、エラー検出や自己修復などデータを保護するための機能も大幅に強化した。

 製品ラインアップは、最大16コア・1CPU(512Gバイトメモリ)の「M10-1」、同64コア・4CPU(2テラバイトメモリ)の「M10-4」、M10-4を1〜16筐体で利用できる同1024コア・64CPU(32テラバイトメモリ)の「M10-4S」の3モデルとなる。同社では従来の基幹業務のワークロードに加え、データウェアハウスやリアルタイムビジネス分析、ビッグデータ活用といった新たな用途にも対応可能な次世代のミッションクリティカルシステムと位置付けている。

 記者会見したシステムプロダクトビジネス部門長 執行役員常務の豊木則行氏は、「近年のUNIX市場の規模は一定の水準で推移しているが、性能や信頼の向上と新たな用途への対応によって既存顧客を守りつつ、シェア拡大も目指す。新製品は5年ぶりで、この間にIBM(のPowerシリーズ)が先行したが、当社とOracleの連携でこれを打破したい」と表明した。

 製品価格はM10-1が220万円から、M10-4が570万1000円からで既に出荷を開始している。M10-4Sは1516万3000円からで1月末から出荷を開始する予定。今後2年間に国内で2万台の出荷を見込むほか、海外向けにはOracleと連携して販売拡大を推進していくという。

M10-4(右)とM10-1

大幅な高性能化と信頼性強化

 SPARC M10シリーズが搭載するSPARC64 Xプロセッサは、28nmプロセスで製造される最新CPUとなる。従来のSPARC64 VII+に比べてコア性能で1.9倍、CPU性能で7.5倍(SPECint_2006でのベンチマーク)に向上したという。ソフトウェア・オン・チップは、スーパーコンピュータシステム「京」などで採用する高速演算機構を企業向けに展開したもので、ソフトウェアベースに比べて10進数演算では430倍、暗号化で163倍、コピーで12倍といった高速化を実現したとしている。

 また、SPARC M10シリーズではCPUコアを2コア単位で段階的にアクティベーションできる仕組みも採用し、利用規模に応じて2〜1024コアと柔軟に拡張していける。仮想化では物理区画とOracle VM、Solaris Zonesの利用により、同一サーバ内でSolaris 8〜11の4世代の環境をそのまま利用できるという。

 信頼面ではエラー検出回路を約5万3000カ所に増強したほか、特に演算器ではパリティプレディクト/レジデューという方式で2回の演算によるデータ保護を行うようにした。

 SPARC M10シリーズは、2012年10月のOracle OpenWorldでコードネーム「Athena」として開発が明らかにされていたもの。統合製品戦略本部 本部長代理の佐々木一名氏によれば、既に100件以上の商談が進んでいるといい、トヨタ自動車とみずほ銀行が採用意向を明らかにしている。

βマシンによる顧客先でのDWHの検証結果

 エンタプライズサーバ事業本部長 執行役員の野田敬人氏は、今後のSPARC 64プロセッサのロードマップとして2014年度に28ナノプロセスでの強化版、2015年度以降に20ナノプロセスでの新版を投入すると説明。動作クロックについてはSPARC64 Xでは従前のSPARC64 VIIと同等だったが、「今後に期待してほしい」(豊木氏)と含みを持たせた。

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