「3つの領域へ投資を続ける」――米Dellのソフトウェア事業責任者Maker's Voice

Dellのソフトウェア戦略について、事業全体を統括するジョン・スウェインソン氏に聞いた。

» 2013年04月11日 12時00分 公開
[聞き手:伏見学,ITmedia]

 ハードウェアベンダーからソリューション企業へと転換を図る米Dell。その意気込みを力強く示すかのように、2012年には米CA Technologiesの元CEOであるジョン・スウェインソン氏をソフトウェア事業部門のトップに招聘。その後、矢継ぎ早にソフトウェア企業の買収を行ったことは記憶に新しいだろう。その狙いなどを当人であるスウェインソン氏に聞いた。

M&Aで事業を伸ばす

――昨年2月に現在のポジションに就きました。この1年を振り返ってみていかがですか。

米Dell ソフトウェア担当統括責任者のジョン・スウェインソン氏。IBMやCAなどでソフトウェアビジネスをけん引してきた 米Dell ソフトウェア担当統括責任者のジョン・スウェインソン氏。IBMやCAなどでソフトウェアビジネスをけん引してきた

 就任時に3つのフォーカスポイントを定めました。1つ目は、ソフトウェア事業の戦略を決めていくこと。2つ目は、その戦略を遂行するためのチーム作りをすること。最後は、ソフトウェア事業を立ち上げるに当たり、どのようなプロセスでやっていくかということです。つまり、M&A(企業の合併・買収)を通じてなのか、有機的に作り上げていくのかを検討しました。

 当時、ソフトウェア事業のスタッフは500人で、売上高規模は5億ドルでした。そうした中で戦略を策定していく上で、やはりM&Aによって事業を構築すべきだという考えに至りました。Dell自身が独自に行っていくと、時間が掛かり困難を伴う可能性があったためです。

 次に、ソフトウェア事業の戦略をどうするかという点です。マーケットの動向を観察する中で、主に3つの領域に注力しなければならないと感じました。

 1つが「システム管理」です。オープン化によって企業システムの相互接続が進んでいることに加え、モバイル化やクラウド化が加速する中、システム管理に新たなチャンスを見出しました。2つ目が「セキュリティ」です。中小規模企業のネットワークセキュリティをはじめ、この領域もまだ満たされていないマーケットニーズがあります。3つ目が「情報管理」です。これはビッグデータソリューションも含む重要な領域であり、成長機会は大きいと見ています。また、マーケットとしても立ち上がったばかりなので参入チャンスが広がっています。

 この3つの領域こそが、中長期的にもソフトウェア事業戦略の要になるのだという意思を、就任早々、役員会で伝えました。

 では、これらの領域をどのように強化していくべきか。先述したようにM&Aという決断をしたわけですから、候補となる企業を洗い出しました。最終的に我々の戦略にフィットする企業を選び買収しました。IT管理ソリューションの米Quest Software、ネットワークセキュリティの米SonicWALL、バックアップソフトウェアの米AppAssureの3社です。

 こうした取り組みをこの1年間で行った結果、現在、ソフトウェア事業のスタッフは約6000人で、今年度の売り上げは15億ドルを超える予定です。今後の成長の見通しについて、2016年度には20〜30億ドルの規模を、中期的にはDell全体で600億ドルのうち50億ドルをソフトウェア事業で売り上げることを目指します。

買収製品の統合に“魔法”はない

――買収した企業の製品やサービスをスムーズに統合していくために必要なことは何ですか。

 長らくIT業界で働いてきた中で、これまでに43件のM&Aに立ち会ってきました。その経験を基に製品統合のための秘けつをお教えしましょう。

 その秘けつとは、明確なプランを持っていること、熟考された統合プロセスを持っていること、買収先の企業や自社のスタッフなどと明確なコミュニケーションを取ることの3点です。特にコミュニケーションについては、何をやるのか、なぜやるのか、どのようにやるのか、いつまでにやるのかを事前にはっきりさせることが重要です。決して“魔法”の要素などありません。やるべきことを丁寧に遂行するだけです。

 これらに加えて、Dellにおいては、買収した製品に対しても継続的な投資を続けていくことが、統合を円滑に進めていくための戦略の1つといえるでしょう。

――Dellがソリューションプロバイダーを目指す上で、直接的な競合となる企業はどこでしょうか。また、競合に勝る強みを教えてください。

 Dellのように幅広いソリューションを提供できる企業はそもそも少ないと見ています。その中で、特にサーバ、ストレージ、ネットワーク、それらに関するソフトウェアを提供する企業として、やはり米HPが競合といえるでしょう。

 競合との差別化要因として、製品に関しては、それぞれの領域でリーダー、あるいはリーダーとなるチャンスがあるような、競争力の高いものをそろえています。また、そのために積極的な投資を続けています。

 もう1つは、中堅・中小企業から大企業まで顧客との接点が広いことです。製品やサービスの流通網では、他社を凌ぐレンジの幅を持っています。

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