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» 2013年05月28日 08時00分 UPDATE

田中克己の「ニッポンのIT企業」:期待以上の成果を出す! CMO代行業を志すギックス

戦略コンサルティングにITを掛け合わせて、企業のマーケティング活動を支援するITベンチャーが誕生。IBM出身者たちが立ち上げた。

[田中克己(IT産業ウオッチャー),ITmedia]

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 「CMO(最高マーケティング責任者)を支援したり、代行したりする」。戦略コンサルティングにIT技術を掛け合わせて、商品販売など企業のマーケティング活動を支援するITベンチャーが登場した。2013年1月に営業活動を開始したギックスだ。JR東日本グループのクレジットカード会社、ビューカードなどが顧客となる。

戦略コンサルとデータ分析を組み合わせる

 「アナリティクスによる科学的、定量的な見える化と、戦略コンサルティングの肝であるシンセシス(総合)のケイパビリティをベースに、再現性のある効果創出を実行支援するサービスを提供する」。ギックスの網野知博代表取締役CEOは、同社の目指す事業をこう説明する。

 分かりやすく言えば、立てた仮説を成功に導く効果的な戦略を作成、実行すること。例えば、新商品の販売を伸ばす、サービスを利用する顧客を増やす、といった計画の立案と実行、さらに効果を検証する。その役割を担うマーケティングの統括責任者であるCMOを支援する。いない場合は、役割を代行する。

 そこに求められるのは、戦略コンサルタントにデータサイエンティスト、データアナリストの能力を兼ね備えた人材になる。実は、網野CEOら3人の役員は、戦略コンサルティングとデータ分析のスキルを持つ。前職時代の経験を生かして、分析した結果を解釈するデータアナリストの力も磨き上げてきたという。

 中小IT企業のギックスにCMO支援事業の立ち上げを可能にしたのは、スキル以外の理由もある。データ分析に必要なITインフラ環境を安価に調達できるようになったことだ。「数年前に数千万円したマシンの性能を、今なら市販の100万円以下のサーバで実現できる。加えて、1000万円するような統計解析ソフトを事実上、無償で利用できる」(網野CEO)。現在、Rと呼ぶOSS(オープンソース・ソフトウエア)の統計解析ソフトを利用し、「遜色のないシステムを構築した」(同)。パブリッククラウドを利用することもある。

 ギックスは、顧客企業と顧問弁護士に近いような契約を交わし、CMOを支援する。契約期間は1年程度で、マーケティングなどの戦略立案から実行フェーズまでのプロジェクトに深くかかわる。効果を上げるために、社内の人材のように行動するが、報酬は期待した以上の効果があったとしても、プラスアルファはない。逆に効果を上げられなかったら、次年度の契約更新はないということになる。目下のところ、メインの顧客はビューカードとBtoBtoCメーカーの2社だという。

投資効果を明確にし、経営者を納得させる

 ギックスを創業する前に、日本IBMの BAO(ビジネス・アナリティクス)という部署でデータ分析を担当していた網野CEOは、CRM(顧客関係管理)などを使ったマーケティングにおけるデータ活用の不十分さを感じていたという。確かに、情報系への投資を後回しにする企業は少なくない。基幹系への投資とは異なり、情報系への投資効果が見えにくいこともあるだろう。基幹系のように今絶対に必要なものでもない。

 支援するIT企業のアプローチにも問題がある。まずはユーザー企業にハードやソフトという箱を売り込む。次に、「社内にバラバラにあるデータを統合し、分析しましょう」とデータ活用を提案する。ユーザー企業の経営者も「顧客視点が重要だ」となり、IT部門が顧客データ統合プロジェクトを立ち上げる。だが、その効果が出るのは1年後、2年後になり、投資額は数億円に上る。

 そんなシナリオでは、経営者の投資を躊躇させるだろう。そもそも、構築する顧客データ統合システムに、どんな価値があるのか。顧客データを束ねることが目的になり、使い方を考えずに構築したシステムは無駄な投資になる恐れがある。

 そこで、ギックスはソーシャルメディアなどから商機を見出そうとする企業、つまり顧客や消費者などのデータを分析し、売り上げや利益を伸ばそうとする企業にアプローチする。当然、投資リターンを強く求められるので、実行した結果の効果を検証する。例えば、クレジットカード会社の会員データ(個人情報の分からないデータ)を預かり、統計解析する。まずは現状を把握し、どんな会員を獲得すべきか導き出す。データアナリストが獲得したい優良顧客の仮説を立てて、データサイエンティストがデータ分析し、「実際に獲得できたのか」検証する。その効果を一日も早く出す。

 問題は、CMOを支援する能力を持つ人材が少ないことだ。だからこそ、ニーズがあるのだが、網野CEOは「今のビジネスモデルは、50人程度が限界だろう」と認識している。そのために、戦略コンサルタント、データサイエンティスト、データアナリストとしての仕事を通じて得られた、効果のあったプロジェクトの経験をテンプレート化する。世の中にある道具(ハードやソフト、システム)をどう使えば、どんな効果を出せるのかというものだ。1年後の商品化を目指し、次のステップに進む考えだ。


一期一会

 慶應義塾大学理工学部を卒業後した網野CEOは、CSK(現SCSK)に入社し、営業企画などを担当した。その後、アクセンチュアに移り、戦略コンサルティングに携わる。「顧客データを分析し、業績を伸ばすというマーケティングのプロジェクトが多かった」。その経験からデータ分析の将来性を感じて、データ分析事業を立ち上げる日本IBMに転職したという。そこで、ギックス取締役の田中耕比古氏と花谷慎太郎氏の2人と知り合った。

 網野CEOが考えたビジネスは、戦略実行に踏み込む経営コンサルタントといえる。一般的には、経営コンサルタントに上流工程を頼み、顧客企業が実行する。すべてをコンサルタントに依頼するとコストが高いからだ。そこで、「テクノロジーを使って、再現性のあるマーケティング」を考えた。ひらめきではなく、技術を駆使したマーケティングを実現することだ。「成果に対する責任を半分持つような感じで取り組んでいる」。

 「必ず計画を達成する」。網野CEOからそんな強い思いを感じた。

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