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» 2013年06月18日 08時00分 UPDATE

田中克己の「ニッポンのIT企業」:ベンチャー魂を再び! ERPコンサルへと事業強化を図るテクノス

2年後に売り上げを70億円に伸ばす経営計画を発表したテクノスジャパンは、これまでのERP構築ビジネスにとどまらない新たな領域へ挑戦する。

[田中克己(IT産業ウオッチャー),ITmedia]

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 SAPやオラクルなどのERPソフトを担いで急成長しているIT企業がある。1994年設立のテクノスジャパンだ。日本企業のグローバル化に対応するERPの周辺ビジネスなどを拡充し、売上高を2012年度の42億円から2015年度に70億円に伸ばす中期経営計画を策定した。

ERPテンプレートの拡充で成功

 受託ソフト開発を中心に事業展開するIT企業の多くが経常利益率5%前後なのに対して、テクノスは10%前後で推移する。高収益の理由はいくつかある。城谷直彦社長は、SAPのERP製品をいち早く手掛けたことと、ERPのテンプレートを開発してきたことを挙げる。

 テクノスがSAPを扱い始めたのは、創業の1994年。その後、オラクルの「E-Business Suite(EBS)」や「JD Edwards EnterpriseOne(JDE)」、東洋ビジネスエンジニアリングの「MCFrame」など、ERP商品を増やしていった。加えて、BI(ビジネスインテリジェンス)ツールやクラウド関連商品といったERPの周辺ソリューションを揃える一方、戦略立案から業務改善支援、システム開発、運用保守まで担える体制を築いてきた。

 こうした取り扱い商品の充実により、顧客層が当初の半導体などプロセス系製造業から、組み立て系製造業、卸売・小売業へと広がり、顧客数は累計100社を超えた。特に売り上げ構成の約25%を占める卸売・小売などの産業については、2012年度からテンプレートの拡充など力を入れてきたところだ。ビックカメラや靴下専門店のタビオなどをユーザーとして獲得し、2012年度に売り上げを約7割に伸ばした。

 そうした中で策定した中期経営計画は、意欲的な数字を掲げている。2012年度の売上高41億9700万円、経常利益4億4100万円を、2015年度にそれぞれ70億円、7億6100万円にする。城谷社長は100億円を視野に入れた事業展開に果敢に取り組むという。だが、ERP中心の事業に、大きく成長する余地があるのか。そんな疑問を抱く業界関係者もいるだろう。

 城谷社長は「確かにERPを導入済みのユーザーは多い。だが、会計だけ、販売だけといった一部の機能しか使っておらず、ERP本来の機能をうまく導入したユーザーは少ない」と反論する。クラウドやモバイル、ビックデータへとITトレンドは広がりを見せ始めており、「ERPという基幹を抑えたIT企業の事業機会が拡大する」(同)と読む。

 事実、ある調査会社のデータによると、ERP市場(ライセンス販売)は年率10%程度で成長している。しかも、ERPに関連するコンサルティングや開発、運用保守などの導入経費は、ライセンス売り上げの1.7倍になるという。それに対応する技術者を育成するとともに、経営課題の解決にERPを生かせているかといった診断サービスを用意し、新規市場の開拓にも取り組む。

新卒採用への投資を続ける

 城谷社長は「当社は、大手IT企業に匹敵する技術力、プロジェクトマネジメント力がある」と自信を見せる。そんな体制作りに向けて、人材の採用と教育に積極的な投資をしてきた。例えば、SAP認定コンサルタント数は業界8位、1000人未満のIT企業ではトップだという。「採用しなければ、成長もできない」(同)とし、創業の翌年、社員10人の時代から新卒を採用し続けている。今年4月も約30人が入社し、単体で262人、連結で314人(2013年4月)の社員規模になった。

 日本企業のグローバル展開に対応した人材も育成する。結果、化学系大手の北米販社、半導体大手の欧米・アジア拠点、光機メーカーのメキシコ工場、大手電機メーカーの中国拠点などでの開発実績も増えている。2007年に設立した開発・保守子会社の沖縄テクノスが、中国やインド、ミャンマーなどオフショア開発のハブ拠点へと進化もしている。

 この6月には、米国シリコンバレーにも拠点を設置する。先端ソリューションやツールなどを探し出し、日本に持ち込むためで、合弁会社の設立も視野にある。実は、社名に「ジャパン」と付けたのは、海外法人を設立した折、例えば米国なら「テクノスUSA」、中国なら「テクノスチャイナ」とするためだった。ちなみに、海外売上高は11年度の約2億円から12年度の約3億円となり、13年度は5億1200万円を見込んでいる。

 城谷社長は同社を現在のシステムインテグレーターから、3年後にERPビジネスコンサルティングカンパニーにすると話す。さらに10年後には、トップクラスのICTコンサルティングカンパニーへと成長を遂げるのだとする。中期経営計画は、その実現に向けた施策でもある。


一期一会

 城谷社長は1976年、ソフト開発会社の老舗、旧日本電子開発に入社した。数年後、6年半近く米国に勤務した。「戻ってきて感じたのが、日本企業はぬるま湯状態ということ。このままでは日本のIT企業は駄目になる」と思って、7人で飛び出した。技術者を数多く抱えた労働集約型ではなく、社員数十人程度の小数精鋭の設計事務所を目指す。自分たちで企画、提案するコンサルティングから手掛けるIT企業だ。

 だが、最近、不安を少し感じ始めている。「優秀な学生がこなくっている。学生から面白そうな会社と思われなくなってきた」。2012年12月にジャスダックに上場し、無借金経営など安定した企業になったものの、学生には新しいことに挑戦するベンチャー的な要素を感じられなくなったからだろう。「上場前に懸念したことだった」。

 そこで、原点に立ち戻ることを模索する。例えば、ビックデータのデータ分析やロボットソフトなど新しい領域への挑戦だ。データ分析に関しては、データサイエンティストを10人程度採用し、専門会社を設立する構想を練る。60歳になる城谷社長は、新規事業に挑戦する姿勢を持ち続ける。

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