マネジメントの発想が求められるビッグデータ活用松岡功のThink Manegement

企業に関わる膨大なデータを的確に分析し、経営革新やビジネスの拡大に役立てようという動きが活発化している。そのアプローチにはマネジメントの発想が求められる。

» 2013年09月26日 08時00分 公開
[松岡功,ITmedia]

アビームが提供するBIサービスの狙い

会見に臨むアビームコンサルティングの中本雅也 執行役員 プリンシパル プロセス&テクノロジー第4事業部長兼ビジネスインテリジェンス統括事業部長

「ビッグデータの活用が注目される中、私どもマネジメントコンサルティングファームにも、どうすれば経営革新やビジネスの拡大に役立てることができるかという企業経営者からのご相談が急増している」

 こう語るのは、アビームコンサルティングで執行役員 プリンシパル プロセス&テクノロジー第4事業部長兼ビジネスインテリジェンス統括事業部長を務める中本雅也氏だ。

 同社ではそうしたニーズに対応し、2年半前から展開しているビジネスインテリジェンス(BI)コンサルティングサービス「ABeam BI」を強化した。冒頭の中本氏の発言は、同社が9月18日に開いたその発表会見でのコメントである。

 中本氏によると、同社はABeam BIによって、統計解析・データマイニングなどの豊富な経験と知見に加え、最新のデータ分析技術を駆使したビッグデータ時代の先端的なサービス/ソリューションを提供することで、「BI経営の強力な参謀役」として顧客企業の収益性の維持・拡大と永続的な成長の実現に貢献したいとしている。

 また、ABeam BIのテクノロジーソリューションとしては、データ収集/統合から見えない関係性・法則の発見、将来予測までのデータ活用において、オンプレミス型、オフプレミス/クラウド型の両環境の最適なテクノロジーソリューションを組み合わせ、「企業BI力の向上を強力に支援していきたい」という。

 今回発表のサービス強化策としては、分析・解析に関わるBIソリューションの開発や先端技術の検証を行う拠点として「ABeam BIソリューションセンター」を本社内に開設。また、SASやSAPなど分析ツールで実績のある企業との戦略的提携関係に加えて、次世代型多次元解析ツール「HyperCube」を展開するフランスのHyperCube Researchとライセンス使用契約を締結し、日本およびアジア市場において付加価値の高いBIコンサルティングサービスを展開していく構えだ。

 さらに、このサービスの人材の要となるデータサイエンティストの陣容を、今後2年以内に、国内で現在の30人から200人、海外で同20人から50人に増強し、売り上げとしても現在の50億円から100億円に倍増させたいとしている。

マネジメント発想の「BIサイクル・アプローチ」

 こうした強化策もさることながら、会見での中本氏の説明で本コラムの観点から最も興味深かったのは、ABeam BIのフレームワークである。

ABeam BIのフレームワーク

 図にあるように、ABeam BIのフレームワークは、戦略・施策立案を行う「BI Strategy」、BIシステムを構築・導入する「BI Implementation」、データ分析を行う「BI Analysis」といった3つの領域を継続的に回す形となっている。同社ではこれを「BIサイクル・アプローチ」と呼んでいる。

 図では少々読み取りづらいかもしれないので、それぞれの領域の内容をあらためて記しておくと、BI Strategyは「分析結果から得られる知見をもとに戦略に関わる提言や意思決定の支援、経営の仕組みの高度化を行う」、BI Implementationは「戦略の実行に伴う業務基盤の強化と、データ分析によるPDCAサイクルの構築を支えるIT基盤の構築・整備・高度化を行う」、BI Analysisは「分析対象となるデータを収集・分析して価値のある情報へ変換し、業務機能強化のための示唆・提言を行う」といったものだ。

 そして中本氏によると、この3つの領域それぞれにエキスパートが求められるという。具体的には、BI Strategyに「BIストラテジスト」、BI Implementationに「BIアーキテクト」、BI Analysisに「データサイエンティスト」と呼ばれる人材だ。

 その上で、同氏はこう強調した。

「BIあるいはビッグデータ活用のニーズが高まる中で、ともすればBI Analysisおよびそれを遂行するデータサイエンティストばかりに注目が集まっているが、データを分析して本当に経営革新やビジネスの拡大に役立てるためには、BIサイクル・アプローチとそれぞれの領域のエキスパートが不可欠になる」

 こうしたフレームワークからなるABeam BIは、まさにマネジメントコンサルティングファームならではのサービスといえよう。同社が提唱するBIサイクル・アプローチは、まさしくマネジメントの発想に基づくものである。

 そこで本コラムのメッセージとしたいのは、企業におけるビッグデータ活用には、テクノロジーだけでなくマネジメントの発想が求められるということだ。その意味では、ABeam BIでいうところのBI Strategyに一層着目する必要がありそうだ。

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