VDIによるワークスタイル変革の効果はおいくら? ネットワンが社内実践で算出

ネットワンシステムズが2010年から社内実践中のワークスタイル変革における効果金額を明らかにした。ワークスタイル変革を検討する企業顧客に参考にしてもらいたいという。

» 2013年11月11日 17時31分 公開
[國谷武史,ITmedia]

 ネットワンシステムズは11月11日、同社で実践しているワークスタイル変革の取り組みに関する効果と、次世代ICT基盤を企業顧客に紹介するためのデモ施設の拡充を発表した。ワークスタイル変革に注目する企業顧客に社内事例を提案することで、支援につなげたいという。

 会見したビジネス推進グループ 第2製品技術部長の松本陽一氏によると、約2300人の全社員を対象にしたワークスタイル変革の取り組みは2010年にスタート。その主な目的は、柔軟な働き方による社員の生産性向上やセキュリティ強化、コスト削減、ビジネスへの貢献など。業務用のPC環境をVDI(仮想デスクトップ基盤)に移行し、併せてユニファイドコミュニケーションやビデオ会議システムなどを導入した。

効果を測定するためのステップとメトリック

 取り組みでは従来の業務環境を「物理オフィス(自席で業務する環境)」、VDIへの移行途上を「移行期オフィス」、VDIへの完全以降後を「仮想オフィス」と3ステップに分け、2014年3月末を仮想オフィスの移行完了時期としている。なお、同社は2013年5月に本社オフィスを移転したが、以下に紹介する効果金額ではオフィス移転に伴う金額は考慮していない。

 効果金額の算出は、VDI導入などの「設備投資コスト」、ヘルプデスク対応などの「運用コスト」、情報漏えい対応や事業継続などの「リスク低減」、モバイルワークや在宅勤務などによる「生産性向上」、顧客や社員の満足度向上と売上拡大などの「イノベーション」の5つの評価軸で行った。今回の発表では一部の効果は試算や金額以外の内容で紹介された。

効果金額の全体増

 まず、「設備投資コスト」全体では移行期オフィスまでの過程で2億250万円を投資し、仮想オフィス完了では3億5400万円の効果を得られるとした。ここではVDIへの投資や物理PCの回収コストが大きかったという。仮想オフィスへの移行後はこれらのコストを上回る効果を見込む。

 「運用コスト」全体では移行期オフィスへの過程で8871万円が発生し、仮想オフィス完了では4億6692万円の効果を見込む。しかし、ここでは“予想外”の状況が起きた。

 内訳をみると、PCやVDIの管理コストで1億2720万円が発生した。これはVDIへの移行に際して社内からヘルプ依頼や相談が多数発生し、対応工数や人件費が急増したことによるもの。当初はVDI化によって年間400〜500台に上る新規PCの導入に伴うコスト(端末代やキッティング作業費、設定費など)の削減が期待されたが、予想外の結果だったという。

VDI環境の移行では社員からの問い合わせ多くなり、一時的なコスト増を招いた

 松本氏によれば、現在は問い合わせ件数が概ね減少傾向にあり、今後はVDIへの移行と相まってヘルプデスク対応などのコストの減少が見込まれるとのこと。さらには、スマートフォンやタブレット端末の利活用の拡大も予想され、従来のままでは対応がさらに煩雑化する恐れもあり、VDI化によってその懸念を払しょくした。仮想オフィスの完了で3億4240万円の効果になるとしている。このほかに、出張などによる交通費が9623万円、会議などに使っていた紙資料などが3000万円削減された。

 「リスク低減」の効果では8億4691万円相当の効果を見込む。内訳はパンデミックや自然災害などによる業務継続で5億7600万円、PCの紛失・盗難による情報漏えいでの直接的費用(被害調査など)が8960万円相当という。この算出は、業務継続リスクでは交通マヒなどで出社できない事態が年2日程度発生すると仮定し、「年商÷365日×2日×出社できない社員の割合」で計算した。情報漏えいでの直接的費用は、過去のインシデントの経験額(1件で約4000万円)をもとに年2回程度発生していたと仮定。VDI化によってそのリスクがほぼゼロになった効果としている。

 「生産性向上」では8億8490万円相当の効果を見込む。主な内訳は残業代削減が3億7152万円、移動や出張に要する時間あたりの人件費の削減が4810万円。このほかに、社内業務に費やす時間の時間や決済承認に要する時間の短縮効果も期待する。

効果金額はコスト削減の視点でとらえられがちだが、本来のワークスタイル変革による効果も認められたという

 「イノベーション」の効果は金額の算出が難しいとしつつ、社員の満足度アンケートでは「私生活が良くなった」が80%、「仕事が良くなった」が70%に上っている。在宅勤務でも顧客への一時対応が可能になったことや、家族と過ごす時間が拡大したことなどを挙げる意見が目立ったという。

 松本氏は、「移行期に予想以上の対応コストが発生するなど、実際に経験してみないと分からないこともあった。ただ、ワークスタイル変革は最終的に多く効果を生むので、積極的に促進させることをお勧めしたい」と話す。

 同社では本社のデモ施設「ソリューション・ブリーフィング・センター」の機能を拡充し、12日からワークスタイル変革の支援サービスやICT基盤の実証サービスなどを新たに提供する予定だという。

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