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» 2014年05月08日 08時00分 UPDATE

IBM Impact 2014 Report:8万人のBYOD管理を1カ月で変更したIBM モバイルの“戦略的活用”にこだわる理由を聞く

IBMが企業顧客に提起する重要テーマの1つが「モバイル」。同社のカンファレンスではモバイル活用に取り組む顧客事例が多数登場した。IBMがモバイルにこだわる理由は明快なようだ。

[國谷武史,ITmedia]

 米IBMが4月27〜5月1日に開催した年次カンファレンス「IBM Impact 2014」では“MobileFirst”というテーマが掲げられ、モバイル活用に取り組む同社の顧客事例が数多く紹介された。同社がいま、あえてモバイルを強調する理由をIBM MobileFirstマーケティング担当ディレクターのエドワード・ブリル氏は、「第2の波が到来しているからだ」と説明する。

mobifst01.jpg MobileFirstマーケティング担当ディレクターのエドワード・ブリル氏

 モバイル活用が多くの企業の関心事であるのは間違いない。しかしブリル氏によれば、モバイル活用に取り組む企業の半数以上は、明確なモバイル戦略を持ち合わせていないという。「これは2013年のマーケティング調査で判明したことだが、社員向けでも顧客向けでも、もっと戦略的にモバイル活用できる余地が十分にある」(同氏)

 戦略的なモバイル活用とは具体的にどのようなものか――ブリル氏はモバイルビジネスを推進するIBMでの事例をまず紹介した。

 IBMは2013年末、BYOD(私物端末の業務理由)をしている約8万人の社員のモバイル端末管理(MDM)プラットフォームをFiberlink Communicationsに切り替えた。それ以前はTivoli Endpoint Managerを利用していた。FiberlinkはIBMが2013年11月に買収した企業である。

 従前のプラットフォームは、IBM顧客にも深く浸透している「Tivoli」ブランドを冠した製品だ。それにもかかわらず、買収したばかりの新しいプラットフォームへ切り替えるスピード感は、FiberlinkのプラットフォームがIBMのモバイル事業戦略にとって重要な位置付けになると判断したからだろう。Tivoli Endpoint Managerは基本的にオンプレミスで運用する製品だが、Fiberlinkはクラウドサービスであり、世界で8万人いるBYOD社員の端末管理を1カ月で変更したという“俊敏性”が同社の狙い物語っている。

 続けてブリル氏は、日本での戦略的なモバイル事例として高知大学医学部付属病院のケースを挙げた。同病院では2012年に仮想デスクトップクラウド環境を構築し、看護師がiPod touchを使って安全に電子カルテなどの情報を業務に活用する。

 このケースでIBMは、仮想デスクトップ基盤からモバイル端末管理、さらには院内ネットワークの整備までを手掛けた。電子カルテ情報は非常に機密性が高い個人情報であるだけに、外部への漏えいなどは絶対に許されない。業務端末にコンシューマ製品でもあるiPod touchを採用することで業務における利便性を確保しつつ、ネットワークを含むバックエンド側のシステムでは最大限のセキュリティ対策を実施している。

 上述の事例は、いずれも組織内に向けた戦略的なモバイル活用になる。一方、対消費者向けではグローバルテクノロジーサービス モビリティサービス担当ゼネラルマネージャーのリチャード・エスポジット氏が「プレゼンスゾーン」という新たな戦略的活用例を紹介した。

mobifst02.jpg IBM GTS モビリティサービス担当ゼネラルマネージャーのリチャード・エスポジット氏

 プレゼンスゾーンでは、例えばスーパーマーケットのある売り場の周囲にセンサネットワークを張り巡らせておく。その範囲に会員客が近づいたことをセンサで感知すると、希望客のモバイル端末に対してカスタマイズされたメッセージ(お勧め商品やキャンペーンなどの情報)をプッシュ配信し、購買意欲を高めてもらう。

 「店舗を構える小売企業にとって最大の課題はオンラインショップとの競争だ。何でもネットで購入できる時代だが、顧客が何を求めてリアルな店舗へ足を運ぶのかは分かりづらい。そこで行動履歴や購買履歴などの情報を分析し、顧客の手元にあるモバイル端末へ最適化したメッセージを送ることで差別化を図っている」(エスポジット氏)

 小売企業では顧客が同意している範囲内であれば、来店客が店内でどのような売り場を回り、商品を手に取ったのか、実際に購入したのか、検討段階でやめたのかといった情報を蓄積、分析することで「リアルな個客マーケティング」を展開できる。もちろんプライバシーに配慮して、メッセージ受け取りの有無や、メッセージ送信のために店舗側が顧客情報を利用することなどついては、顧客が可否を選択できるようになっているという。

 国内で企業のモバイル活用が注目されだしたのは、iPhoneやiPadが登場した2008年頃からだろう。当初は物珍しさも手伝って「モバイル導入」そのものが目的になるケースも見受けられたが、現在では「戦略的活用」という本質へ落ち着きつつある。ブリル氏が「第2の波が到来している」と語るように、IBMはあらゆる企業に本当の意味でのモバイル活用を推進してもらいたいという強い思惑があるようだ。

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