ひらめきとビッグデータで未来のクルマづくりに取り組むホンダIBM Software Xcite Spring 2014 Report

IBM Software Xcite Spring 2014が開幕した。IBMソフトウェア部門でクラウドとスマーターインフラを統括するアドバニGMは「新しい時代の到来」を強調、本田技術研究所でもビッグデータを活用した、クルマの未来を創造する取り組みが始まっている。

» 2014年05月22日 08時00分 公開
[浅井英二,ITmedia]
クラウドとスマーターインフラを統括するディーパック・アドバニGM

 5月21日、都内のホテルで「IBM Software Xcite Spring 2014」カンファレンスが開幕した。22日までの2日間で5000人を超えるユーザーやパートナーの参加が見込まれている。

 日本アイ・ビー・エムではこれまでブランドごとにカンファレンスを開催してきたが、Xciteは同社のソフトウェアやパートナーのソリューションを一堂に集めた初めての試み。「ソーシャル」「モバイル」「アナリティクス」「クラウド」、さらには「センサー」といったテクノロジーは互いに結びついており、組み合わせて活用することで、より大きな価値を引き出すことができるからだ。

 ホスト役として挨拶に立ったマーティン・イエッター社長は、「データは重要な経営資源として競争優位の源泉であり、クラウドは新しいビジネスモデルを創出する。これらのテクノロジーには世界を様変わりさせる力がある。今こそビジネスを変革する時だ」と話す。

 キーノートスピーカーとして来日したクラウド&スマーターインフラストラクチャーGMのディーパック・アドバニ氏も「新しい時代の到来」を強調し、ドイツのハノーファーに本社を置く自動車部品メーカーであるContinentalの事例を紹介する。

 同社は創業150年近い老舗。タイヤメーカーとしてスタートしたが、2006年にMotorolaから、翌年にはSiemensから相次いで自動車向けの電子部品事業を譲り受け、ビジネスを拡大している。昨年秋のフランクフルト国際モーターショーでは、自動車メーカー向けにコネクテッドカーのソリューションをIBMと共同開発することを明らかにしていた。

 クルマに搭載されたセンサー群から得られる走行データだけでなく、道路、トラフィック、天候といった大量のデータをクラウドで瞬時に掛け合わせて分析し、将来を予測することで、予防保守はもちろん、自動運転にも道が開ける。

ホンダとIBMで知的探検?

本田技術研究所の横山利夫上席研究員

 特別講演に登場した本田技術研究所でもビッグデータを活用した、クルマの未来を創造する取り組みが進んでいる。ホンダの研究開発機関である同社では、「開発システムの進化」「品質向上とコスト削減」「商品性の向上」、そして「新価値の創造」といったさまざまな領域においてIBMのアナリティクス技術やスキルを導入し、可視化から現状の分析、さらには将来の予測へとビッグデータの活用を進めている。

 双方向型ナビゲーションシステム「インターナビ」による安全・安心支援もそのひとつだ。インターナビでは、ユーザーの許諾を得て走行データを収集・分析することで、より快適で安全なドライブのための情報を提供している。例えば、急減速が多発している交差点をドライバーに知らせるだけでなく、ビッグデータアナリティクスによって事故要因を発見し、危険な交差点を予測することで事故の未然防止にもつながるという。

 また、経済産業省ではハイブリッド自動車や電気自動車といった、いわゆる次世代自動車の販売比率を2020年には50%まで引き上げる目標を掲げているが、普及にはバッテリーが最大のカギを握る。電気自動車にとってバッテリーは、走行性能を最も左右する極めて重要なコンポーネント。新しい技術だけに、天候や運転の仕方がバッテリーにどのような影響を及ぼすか分からない部分も多いし、性能劣化を観測することで予防保守や中古車として見た場合の価値も評価しやすくなる。

 ホンダでは2012年8月から自治体や企業に向けに「フィットEV」をリース販売しており、その全1300台から走行データを収集、バッテリーの状態を把握するバッテリー・トレーサビリティ・システムを稼働させている。

 「喜びの創造」を原点とする本田技術研究所で上席研究員を務める横山利夫氏は、「電気自動車は全く新しい商品。どういう使い方をすればどんな可能性が広がるのか。未知の世界をIBMと探索している」と話す。

 「ビッグデータで何か面白いことができるかもしれない。人間のひらめきと、それに確からしさを与えるビッグデータ分析を融合し、顧客一人ひとりの感性に合わせてクルマづくりにチャレンジしたい」(横山氏)

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