現場で効くデータ活用と業務カイゼン

「スター・ウォーズ」「トロン」を手掛けた日本のCGスタジオが“システム大刷新”に踏み切った理由有名CGアニメの舞台裏(2/4 ページ)

» 2014年09月29日 07時30分 公開
[本宮学,ITmedia]

ディズニー作品の制作受注で専用ツールを用意 汎用システムへの足がかりに

photo 飯山さん

 そんな同社の転機になったのが、2008年にディズニーから制作を請け負ったTVアニメ作品『プーさんといっしょ』。人気キャラクター「くまのプーさん」をフルCGで描く同作品はポリゴン・ピクチュアズにとって初の海外大型TVシリーズの受注となり、これを機に初めて本格的なパイプラインシステムの開発に取り組んだという。

 同作品は成功を収めたものの、システム面ではまだ課題があったという。「この時のパイプラインシステムは1つのプロジェクトに特化したシステムだったため、その後のプロジェクトでも応用して使える汎用性を持っていなかった」と山森さんは振り返る

 今後こうした海外大型案件の増加が見込まれる中、汎用的に使えるパイプラインシステムを構築したい――そこで同社が注目したのが、海外のCGスタジオでも導入実績があったカスタムデータベース作成ソフト「FileMaker Pro」である。

進ちょく管理を完全自動化 『シドニアの騎士』制作でも活躍

 ポリゴン・ピクチュアズがFileMaker Proで構築したパイプラインDB・通称「Pizmo」(ピズモ)を使い始めたのは2010年のこと。『トランスフォーマー プライム』『トロン:ライジング』などの海外有名作品で使用し、Webシステムならではのリアルタイムな情報共有などのメリットを実感したという。

 ただし当時のシステムも(1)外部の制作会社との連携を想定していない、(2)CG制作ツールとの連携機能がなく、業務の進ちょく状況をいちいち手入力しないといけない――といった課題があったと山森さんは振り返る。そこで2013年春にはそれまでのシステムを抜本的に見直し、バージョンアップした「Pizmo 2.0」を構築することにした。

photo Pizmo 2.0の仕組み

 新システムの仕組みはこうだ。同社が使用している各種CG制作ツールと連携しており、アーティストごとの作業開始/終了のサインをシステム側で自動入力する。プロダクションマネジャーはそれに基づき、作品の制作進ちょく状況をリアルタイムで管理できる――といった具合だ。

 さらにユニークなのが、外部スタジオとの連携を支援する「汎用性の高さ」だ。ポリゴン・ピクチュアズでは従来、海外のCGスタジオなどと共同作業をする際、制作に用いるツール群を共有/最適化するために2カ月程度かかることもあったという。新システムでは作品を問わずに使える汎用性を持たせ、「最短1日」で共同作業をスタートできるようにした。

photo TVアニメ『シドニアの騎士』制作時の進ちょく管理イメージ(クリックで拡大)

 「Pizmo 2.0の構築を始めた2013年春当時、13年8月にマレーシアで立ち上げる海外スタジオと連携して14年春公開のTVアニメシリーズ『シドニアの騎士』を制作する必要があった」と山森さんは振り返る。新システムの構築作業はわずか3カ月程度で完了し、シドニアの騎士の制作にも大きく役立ったという。

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