奈良先端科学技術大学院大学が、急増する研究データの長期保存を目的としたクラウドストレージ環境を整備した。そこでのポイントは、テープ媒体を活用を通じ、消費電力を大幅減を達成したことである。
奈良先端科学技術大学院大学(以下、奈良先端大)は、情報科学、バイオサイエンス、物質創成科学の3つの研究科からなる国立大学法人である。同大学は国家戦略「科学技術立国」を目的に、大学院に特化した研究教育機関、国立理工系大学院大学として設置され、最先端の研究支援のための極めて高度な情報処理環境の整備を推進している。その一環として、今後爆発的に増加する研究データを、低コストかつ低消費電力で保管できるクラウドストレージ環境を構築した。
日本オラクル主催「Oracle Cloud World」のセッションに登壇し、奈良先端大で情報基盤技術サービスグループ長・助手を務める辻井高浩氏にその具体的な内容を聞いた。
奈良先端大の全学システムは、
の3つに大別される。新・クラウドストレージの導入を検討した発端は、全学情報環境システムのストレージがリプレース時期を迎えたためだ。奈良先端大では最先端の追求から、それらのシステムを2〜4年の周期で更新している。
その総容量は2.7ペタバイト。単純に考えれば、従来からの延長で、より大容量のストレージ環境を追加して用意すれば済む話とも考えがちである。しかし、その選択を阻む外部要因が存在した。東日本大震災の由来する電力問題がそれだ。
「とりわけ西日本では、依然として電力問題が深刻です。そのためストレージの更新にあたっては、HDDを追加する以外の何らかの策が必要とされていたのです」(奈良先端大の辻井氏)
そこで着目したのが、昔ながらのテープ媒体である。当時、研究用に利用されていたストレージは計413Tバイト分あった。そのうち、5カ月以内にアクセスのあったデータは73.6Tバイトほどしかなかった。「8割以上がコールドデータならぬコールドディスクであったわけです」と辻井氏。このことをふまえ、ストレージの階層化を通じ、アクセス頻度が低いデータをテープで管理すれば、消費電力を削減できると見込んだのである。
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