10年後を見据えたIT基盤、大阪府済生会中津病院が構築

医療サービスの向上のために医療従事者の働き方を変革するプラットフォームと位置付ける。

» 2015年07月09日 15時40分 公開
[ITmedia]
2016年に100周年を迎えるという大阪府済生会中津病院

 大阪・梅田にほど近い、大阪府済生会の大阪府済生会中津病院でITシステム基盤の統合と仮想デスクトップシステムの構築が行われた。地域の医療サービスの向上のために医療従事者の働き方を変革するという同病院の10年先を支えるプラットフォームだ。

 この取り組みを支援したのはヴイエムウェア。同社によれば、大阪府済生会中津病院では「VMware vCloud Suite」というITインフラ構築・管理ための統合ソリューションと、仮想デスクトップ基盤製品「VMware Horizon」が採用された。これによって電子カルテシステムを含めた院内のほぼ全ての部門システムが統合され、仮想デスクトップを使って医療従事者に働きやすい環境を提供できるようになったという。

 これまで院内にある様々なシステムは、部門ごとに構築、運用されていたことで、病院全体としてはITを効率的に活用し切れていなかった。あるシステムで稼働率が高くても別のシステムでは低い状態であったり、実際に使う以上のライセンスを購入していたり、無駄があった。サーバが増え続けて設置場所も確保しづらくなっていた。

 また、部門ごとのシステム業務は医療従事者が兼任で担当していたため、本来の医療業務に集中できないといったジレンマも抱えていたという。医療サービスの向上には、医療従事者が本業に取り組めるようにすることが必要で、ITのムダを排除すべくバラバラのまま使われているシステムを整理することとなった。

 まず、システムの統合ではVMware vCloud Suiteを使って個々のシステム環境を仮想化させ、物理サーバ上で複数のシステムが効率良く稼働する仕組みに刷新。約50のシステムが16台のサーバに集約され、設置スペースに余裕が出たほか、電気代や保守費用なども節約できる見込みとなった。集約されたシステムを新たに管理するようにし、部門ごとにシステムを運用していた医療従事者の手間も大幅に解消。本来の業務に専念できるようになったという。

(VMware vCloud Suiteのイメージビデオから)

 仮想デスクトップは場所や時間を問わず、インターネット回線さえされば、業務情報を処理できる。従来は特定のデスクトップ環境でしか電子カルテを扱えなかった。医療データそのものを扱うためだったからであり、仮想デスクトップでは医療データそのものは病院内のシステムに保存され、端末ではそのデータを表示する仕組みだ。端末にデータは保存せず、仮想デスクトップを無効な状態ではそもそもデータも参照できないので、情報漏えいのような危険性を下げることができる。

 これによって、例えば、医師が自宅に居る時などに患者の容態が急変しても、仮想デスクトップから情報を確認してその場で必要な対応や判断ができ、病院のスタッフに指示もできる。また、女性が多い放射線科医などの専門職では育児などでも在宅勤務の形態で必要な仕事が可能になると期待されている。

 医療情報部 IT推進課長の西本祝福氏は、IT基盤の刷新について「医療機関に求められるセキュリティを担保しつつ、IT活用を通じた医療サービスの向上や効率化が目的。今回のインフラ基盤は10年先を見据えて検討し、院内のITの全体最適と大幅な省スペース化などをもたらした。医療従事者の働き方の変革を進めていける素地として確立できた」とコメントした。

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