貸し出し行列の解消、蔵書の管理の効率化――。人手不足の町田図書館が抱える課題を解決したのは、“ちょっとアナログ風な”IT技術だった。
本が売れない、といわれる中、図書館が元気だ。2014年の日本図書館協会の調査によると、図書館数は増加傾向にあり、貸し出し数も微減にとどまっている。
東京の町田市立図書館(以下、町田図書館)も、地元に人気の図書館だ。イベントを開催したり、館内サービスを充実させたりといった工夫で利用者を増やしており、年間貸出冊数は、同じ規模の自治体の中で2位という実績を誇っている。
しかし一方で、“人気があるがゆえ“の問題も抱えていた。利用者が増える週末には貸し出しカウンターが混み合い、待ち時間が長くなってしまうのだ。ほかにも、膨大な蔵書の管理に手間が掛かるという問題が浮上していたことから、改善策を検討していた。
「『スタッフを増員すればいい』と思う方もいるかもしれないが、そうもいかなかった」――。こう話すのは、図書館のサービス担当課長を務める吉岡一憲氏。その理由は、町田市全体で職員の採用を減らしているにもかかわらず、2015年に図書館をもう1館開設する計画があり、スタッフが足りなかったためだ。
職員を増やさずに業務を効率化するための策として町田図書館が選んだのが、ITを使った業務改善だった。ちょうど図書館システムのサポートが切れるタイミングだったことや、機器のリース期限が迫っていたことからシステムの刷新に乗り出した。
前述のように、町田図書館が抱える課題は大きく2つあった。1つは貸し出しカウンターの混雑解消と手順の効率化。もう1つは蔵書点検にかかる手間の軽減だ。
同じような悩みを抱える図書館は多く、セルフサービスの貸し出しコーナーを設置したり、蔵書管理を手作業からICタグを使った形に切り替える図書館が増えている。
多摩地域の図書館がICタグを使った管理システムを採用しており、一定の成果が上がっていたことから、町田図書館も採用に踏み切ったが、導入を進める中でいくつかの課題も見えてきた。
1つは、蔵書を管理する際、読み込んだICタグのデータ確認に手間が掛かることだ。ICタグリーダーを使うと、棚にある書籍のICタグ情報を一括で読み込み、書籍番号の一覧が表示される。しかし、読み込み漏れで数が合わないときには、書籍と一覧を1つひとつ突き合わせて確認しなければならなかった。
もう1つは機器のコストだ。町田図書館では、ICタグの導入に合わせて、予約した書籍の受け取りから貸し出し処理までを利用者自身が行う「セルフ予約棚」の導入を検討していた。
このシステムは、入り口の予約照会機に利用者カードをかざすと、予約した本の棚がある場所をレシートに印字するもので、利用者はそれを見て本を探し、セルフ貸出機で貸し出し処理を行う。
このセルフ予約棚をICタグで実現しようとすると、全ての書架にアンテナ埋め込み型のRFIDスキャナを設置し、本のありかを確認する必要がある。しかし、このスキャナは高価で導入しにくい。
こうした課題の解決策を探る中で見つかったのが、カラーバーコードの仕組みを使った「カメレオンコード」だった。
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